千里同"桜"

千里同風という禅語があるそうで…

「千里離れた場所にも同じ風が吹いている」
つまり、世の中が良く収まっていて平和・天下泰平であること
また逆に世の中や国全体が混乱していてまとまりがない様子という意味があるそうです。

私がその言葉を知ったのは、伊集院光さんのラジオにゲストで茶道家の小堀宗翔さんが出ていた時。

「(日頃交わることのない)千里離れた私たち(伊集院さんと小堀さん)が
お茶・ラジオを通じて出逢い、同じ風を感じる。
ラジオは千里離れた場所に声を届け、同じ音・風を感じる。
『千里同風』だなぁと思いました。」

と小堀さんがおっしゃっていて、ラジオ好きな私はそれ以来大事にしている言葉です。

娘もラジオが好きで、いまも引っ越してきた千葉でradikoで山梨のラジオを聴いていては
「○○ちゃん、いまもこの番組聴いているかな…」と
山梨のラジオ友達のことを想っています。まさに千里同風だな、と。

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先日、娘の通う小学校で6年生を送る会があって
その前日に、「送る会」で披露する合唱を保護者の方に向けて発表する場がありました。

娘たち4年生が歌うのは、森山直太朗さんの「さくら(独唱)」。

「さくら(独唱)」はもう本当に長く歌い継がれて広く愛されている曲です。
私も楽譜制作会社に勤めていた時に何冊も何パターンも楽譜作りを担当しました。

練習期間が短いから大変なんだよ、と言っていた娘。
合唱はちゃんと仕上がったのかな…


発表が始まる前に、先生から。↓

今回の合唱に『さくら(独唱)』を選んだのにはいくつか理由があります。
もちろん「曲が素晴らしいから」というのも1つですが
歌詞に、僕たち教員から子供たちに伝えたい意味が込められているからです。

歌詞の中に3回、〽さくら さくら… で始まるサビの部分が出てきます。
でも3回それぞれ さくらの様子・状態が異なります。

1回目は「さくら さくら 今咲き誇る」

時間軸で言うと、今現在のことを謳っています。
いずれ散るとわかっていても、今この瞬間、一生懸命
誇らしく咲いている桜…

2回目は「さくら さくら ただ舞い落ちる」

咲いていた桜が舞い落ちる…。別れは必ず来てしまいます。
ずっとこのままで居たかったけど出会いもあれば別れも必ず来てしまう
「今」が「過去」になってしまう
それはだれにも止められなくて、受け入れられない気持ちがあるけど
どうしようもないこと。どうにもならないこと。

3回目は「さくら さくら いざ舞い上がれ」

亡くなった人間が生き返ることはないし
一度落ちてしまった桜の花びらが舞い上がることも
本来はありえないのだけど
そうなって欲しい、軌跡を起こして風を起こして
もう一度舞い上がって欲しいという切ない希望は
別れてしまったけど やっぱりどうしても会いたい
押さえられない、もう一度会いたいという気持ち

いつかまたきっと会え日がくることを信じる

今ではないけど「未来」で会いたい・会えることを願って…


子どもたちは、これからたくさんの出会いと別れを経験します。
実際、昨年は転校生(娘)が来てくれて
この3月にも転校してしまうお友達(娘の親友)が居ます。

この1年間、大変なこともいろいろあったけど
いつも子供たちの元気な笑顔に本当に救われました。
いまこのメンバーじゃないと歌えない合唱を
保護者のみなさんにもぜひ聴いていただきたくて
この機会を設けました。

そして、これから遠く離れても、みんな必ずどこかで同じ桜を見ているから
1人じゃなくて みんな居て、あなたのことを想っているよ、って言う
そのことを忘れないで居てほしい…  です。

そういう先生の目からあふれ出る涙は止まらず。

その姿を見て、その話をきいて、保護者も涙を止められず。
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合唱が始まりました。

最初の1フレーズは、前に出てきた選抜メンバーによるアカペラで。
緊張感のある声にしんと聴き入る…

2コーラスめから、伴奏が入り合唱になり厚みを増した豊かな響き。

「音楽でお腹はいっぱいにならないけど、胸はいっぱいになれる。
音楽は、ぺしゃんこになった心にもムーブを起こして
『生きている』という感覚を蘇らせてくれる」

といったのは、指揮者の下野竜也先生でしたでしょうか。

まさにその通りでした。

歌い終わって、心が温かく強くなり
先生方から少し学年のまとめのお話があって

最後の最後に
保護者のみなさんも一緒に「さくら(独唱)」を歌いませんか?と。

ピアノを体育館の真ん中にゴロゴロ…と移動して
先生の弾くピアノを子供たちが手をつないで丸く囲む。

子ども後ろに立って囲む保護者たち。

子どもと大人の歌声で包まれる体育館。

生きているという感覚が、みるみる甦る。
そんな暖かい冬の日のことでした。

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