『タカラ!』と群集心理~リョウマツモト氏の断言と反覆と感染~
リョウマツモト氏の動画『【ザ・ノンフィクション】タカラを救いたい』を拝見し、ギュスターヴ・ル・ボンの『群集心理』における「断言と反覆と感染」の概念を思い出しました。
リョウマツモト氏の動画には、まるで群衆を扇動するような要素が散りばめられています。
ひと際 耳を奪われるのは、「タカラ!」 の連呼です。これは単なる呼びかけにとどまらず、視聴者の心に強い影響を与える力を持っているように思われます。
ギュスターヴ・ル・ボンによれば、群衆を動かすためには ①断言 ②反覆 ③感染の三つのプロセスが不可欠であるとされています。
リョウマツモト氏の発言をこの視点から分析すると、彼の言葉がどのように視聴者へ影響を与えているのかが浮かび上がってきます。
群衆の精神に、思想や信念——例えば、近代の社会理論のような——を沁みこませる場合、指導者たちの用いる方法は、種々様々である。指導者たちは、主として、次の三つの手段にたよる。すなわち、断言と反覆と感染である。これらの作用は、かなり緩慢ではあるが、その効果には、永続性がある。
① 断言:「未来はすでに決まっている」
「タカラ!」の連呼は、一見すると単なる呼びかけのように思えます。
しかし、リョウマツモト氏の語り口を聞いていると、それはまるで「これは決定事項だ!」 と言わんばかりの迫力を持っています。
実際、彼は 「お前の救済措置を教えてやる。これを実行すれば、俺の言う通りにすれば、お前はここから不死鳥のごとく復活することができる」 と断言し、まるで復活は約束された未来であるかのように語っています。
この言葉は、「選択肢があるのではなく、成功への道はすでに示されている」 という形で対象の思考を方向付けるものです。
論理的に説得するのではなく、確信に満ちた言葉の力で人を動かす手法と通じるものがあります。
② 反覆:「タカラ!」が刷り込まれる
次に 「反覆」 です。動画内で何度も「タカラ!」と発することで、視聴者の脳内にこの言葉が刷り込まれます。
これは広告や政治のプロパガンダでも用いられる基本的な技術であり、繰り返されることで、最初は単なる呼びかけだったものが、次第に「特別な意味」を持つ言葉へと変わっていくのです。
何度も繰り返されることで、「タカラ!」という言葉は、単なる音ではなく、脳に刻み込まれるメッセージとなります。
最初は単なる名前の呼びかけに過ぎなかったものが、「タカラ!」=「何か重要な存在」 という認識に変化していくのです。
③ 感染:「タカラ!」は広がる
最後に 「感染」 です。リョウマツモト氏の熱量は、まるで炎が広がるように視聴者へと伝播していきます。
人は、強い感情を持つ者に影響されやすく、熱狂に巻き込まれることで、自らも同じ感情を抱くようになります。
動画を見終えた後、気づけば私たち自身も「タカラ!」と叫びたくなっているのではないでしょうか。
これは偶然ではなく、ル・ボンが指摘する「感染」の心理が働いている証拠です。
熱狂を設計する戦略
リョウマツモト氏の発言は、単なるアドバイスを超え、「熱狂を設計する戦略」そのものとなっているのかもしれません。
冷静に考えれば、彼の語る内容は極めて合理的です。
しかも、それを単なる経営論にとどめず、「タカラ!」という力強い呼びかけのもと、視聴者の心を揺さぶるメッセージへと変換することで、圧倒的なインパクトを生み出している のではないでしょうか。
リョウマツモト氏の的確なアドバイス
1. 動画の趣旨
YouTuberリョウマツモト氏は、下北沢の古着屋「MIMIC」のオーナー兼バイヤーの渡辺宝(タカラ)氏に対し、経営難を脱却するための具体的なアドバイスを熱く語っています。
2. リョウマツモト氏が指摘する問題点
タカラ氏の現状について、リョウマツモト氏は以下の点を問題視しています。
2店舗目の経営判断の誤り
1店舗目の経営が軌道に乗る前に2店舗目をオープンしてしまい、結果的に経費が膨らんでいる。マーケティング不足
古着に関する深い知識や熱意はあるが、それを広く伝える手段がない。古着ブームの終焉
一時の古着ブームが落ち着き、市場全体の競争が激しくなっている。現状維持の危険性
『ザ・ノンフィクション』出演後の注目度を活かしきれておらず、このチャンスを逃せば再浮上の機会を失う。
3. リョウマツモト氏が提案する解決策
タカラ氏が経営を立て直すために、以下の行動を取るべきだと提言しています。
「2店舗目を閉める」
現在の経済状況では、2店舗を維持するのは困難。
家賃や人件費を削減し、まずは1店舗目を成功させることが最優先。
「YouTubeを始める」
「ザ・ノンフィクション」で得た知名度を活用するべき。
「お宝発掘チャンネル」のような形で、古着の魅力を発信。
例:フェンディ倉庫のリベンジなど、話題性のある企画を実施。YouTubeは初期投資がほぼ不要で、成功すれば広告収益・集客効果も見込める。
「リョウマツモト氏とコラボする」
自身のチャンネルを活用し、タカラ氏を「料理してやる」と発言。
他の「ノンフィクション」出演者ともコラボし、話題を継続させる。
頭を下げてデザートスノーの社長と対談し、経営ノウハウを学ぶ。
「ザ・ノンフィクションの話題を利用する」
「実はあの番組の裏ではこんなことがあった」といった暴露系コンテンツで関心を惹く。
「銀行の預金残高公開」といったエンタメ要素を加え、注目度を維持。
「ファンを作る」
まずは視聴者を惹きつけ、その後に古着販売につなげる流れを作る。
単なる古着販売だけではなく、メディアとしての価値を構築。
「プライドを捨て、まずは注目を集める」
「かっこつけた古着屋をやってる場合じゃない」と断言し、プライドを捨て、まずは人々の注目を集めることを優先すべきだと強調。
「ノンフィクションを見ました」という来店客が増えている状況に満足せず、さらに攻めの姿勢を持ち、積極的に発信することの重要性を指摘。
「鉄は熱いうちに打て」 とし、ザ・ノンフィクションの放送直後の話題性を活かし、早急にYouTubeを始めるべきだと訴える。
「タカラ!」は届くのか
リョウマツモト氏の提案は、単なる経営アドバイスではなく、タカラ氏のビジネスを大きく変える可能性を持つ戦略的なものです。
特に、YouTubeやSNSを活用することで、今の「ノンフィクション効果」を最大限に生かし、「話題があるうちに動け!」 というメッセージが一貫して貫かれています。
この動画を見た視聴者もまた、「タカラ!」という叫びが頭から離れなくなり、気づけば自分も「YouTubeを始めた方がいいのでは…?」と錯覚するほどの熱量を浴びることになります。
ビジネスでは、時に理屈よりも「勢い」と「決断力」がものを言います。
この熱狂の流れに乗るのか、それとも見送るのか。
果たして、「タカラ!」という叫びは、群衆を巻き込み、熱狂の渦を生み出すのか⁉