どうやって決める?『構造形式』 これからの意匠設計者に向けて
構造形式の選定
ボリューム計画が順調に進み、次のステップに移る時、構造形式をどうするか判断することになりますね。
まず、木造か、鉄骨造か、鉄筋コンクリート造か、最初から決まっている場合もありますし、構造設計者に相談することもあると思います。
構造形式を決定する要因として、建物用途・計画によるものの他、コスト、居住性、耐久性、施工性、工期などがあり、全てに優位な構造形式はありませんので、各々比較検討することになりますね。
ただ、この判断要因はかなり広範囲になり、比較検討も難しいので、経験値(感?)によることになります。
なので、最も重要な要因に着目することで、適切な構造形式を見出していきましょう。
RC造共同住宅の構造形式
RC造の共同住宅の場合は、柱割はどうしようか?壁式構造にする方がよいのか?悩む場合があります。
前述の「構造形式を決定する要因」の中で、RC造の共同住宅であればコストが変動する可能性がありますので、比較検討する必要があります。
低層共同住宅であれば、コストウェイトが高くなる地業に着目してみてください。
計画敷地の地盤状況により、直接基礎か杭基礎かが想定できます。
どちらでも可能となる地盤では、一般的に直接基礎が割安と思われていますが、杭基礎の方が割安になることもあります。
大雑把な経験値ですが、ベタ基礎とPHC杭を比較した場合、杭長が10m以下であれば杭の方がコスト的に割安になることが多いですね。
杭基礎の場合、壁式構造では、杭を全体にバランスよく配分することになり、基礎の工事費が割高になることが多いので、低層の杭基礎の場合は、ラーメン構造のほうがコストメリットがありそうですね。
同じ直接基礎であれば、一般的に壁式構造のほうがコストメリットがあるとされていますが、私の経験ではラーメン構造の方がコストメリットがあると思っています。
コストについては、物価状況や施工者の得手不得手もあり断言するのが難しくて申し訳ないのですが、過去のデータを分析し自分なりの根拠を見出すことが重要ですね。
少し話がそれましたが、本題の構造形式の特徴について説明したいと思います。
RC造の共同住宅で代表的な構造形式には、ラーメン構造・壁式構造・壁式ラーメン構造がありますが、どのような特徴があるのでしょうか?
ラーメン構造
ラーメン構造とは、柱と梁を剛接合した立方体の架構形式のことで、内部のRC壁は、応力を負担する耐力壁(耐震壁)と応力を負担しない非耐力壁(雑壁)に分かれます。
耐力壁は柱・梁と一体となり、地震力に対抗しますので、設計変更や改修などで、耐力壁に開口を設けるなどの場合は耐震補強が必要となります。
非耐力壁は、一般的になくしてしまっても問題ありません。
図面上では、耐力壁をEW、非耐力壁をWの記号を使うことが多いですね。
設計上は、柱・梁が出っ張りますが、柱スパンがある程度大きくできますし、柱付の界壁(住戸間の壁)以外の内壁はほぼ乾式壁なので間取りの自由度が高いですね。1階を駐車場やピロティにする場合や、各階で間取りが変わる場合は、ラーメン構造でないと計画が難しくなりますね。
壁式構造
壁式構造は、柱・梁の代わりに耐力壁で応力に対抗する構造です。
基本的に柱・梁がないので、内部の出っ張りがなくスッキリしますが、大きな空間を確保することが難しく、各階の壁の位置や長さにも制約があり、躯体の設計変更や改修が難しいですね。
構造規模は、告示で地上5階以下かつ軒高20m以下、階高は3.5m以下と規定されています。
壁式構造は、いろいろ制約が多い架構形式ですが、構造的にバランスがよいので耐震性に優れていますし、階高を低くできますので、日影規制などで高さが厳しい場合にはメリットがありますね。
壁式ラーメン構造
壁式ラーメン構造は、桁行方向(開口が多い方向)は壁柱と壁梁でラーメンを構成し、梁間方向(開口が少ない方向)は耐力壁とした架構形式です。
柱・梁の出っ張りは少ないですが、形態規定が厳しいので、比較的シンプルな形状に用いられています。
構造規模は、地上15階以下、軒高45m以下となっていますが、6~11階程度が経済的といわれています。