#へも日記 特別編 ウイルス日記①
一日につき一日ずつお読みください。
一日(日) 元旦 うっすら曇り
除夜の鐘もならさず、真夜中の初詣にも行かず、真矢さんも起きてこず、いつもの朝である。
真矢さんは雑煮はすまし派だと知りつつも、だからこれまで毎年すましを作っていたけれども、今年はなんとなく実家同様白味噌で作る。真矢、お椀を持った瞬間無言でものすごく嫌そうな顔をする。腹立つ腹立つ腹立つ、と言うとさらにむすっとする。機嫌がよかろが悪かろが新しい年を迎えようが迎えまいが私たちは会話のない夫婦であり、白味噌の雑煮と母が届けてくれたお節にごめんねと思う。お節は重箱一段分にに海老、里芋、手綱こんにゃく、筑前煮、筍、黒豆と、ビニル袋に高い、自分では絶対に買わないマルサの蒲鉾赤と白、ご丁寧に祝い箸も入っていた。子どもができたら和歌山産のいい重箱を買って、お節を作ろうと決めていた私は、一生お節を作ることはないのだろうか。
昼過ぎにたくちゃんと純ちゃんがわざわざ挨拶に来てくれる。
「今年もよろしくお願いいたします」、とパン工房カワで買ったかりんとう饅頭を渡す。
二時すぎようやっと初詣へ。宮司と奥さんふたりだけがいた。ちょうど片付けようとしていたらしく滑り込みセーフ。こんな遅がけにきた私たちにもバッサバッサとしてくれ、お神酒とうさぎの形の茶菓子までくれた。無料のおみくじは引かず。年々減っていく年賀状は輪ゴムで束ねられたまま。
晩御飯はお節の残りと蕎麦。
二日(月) 晴れ
朝のはよから母の誕生日ケーキを焼く。友だちにお菓子を作る時は環境や身体に優しいものを作ることが多いが、我が血縁家族に作るケーキは卵もバターもたっぷり使う贅沢タイプにしている。身体に良さそうなものは食べてくれない。グルテンフリーなんてもってのほか。
昼からは日高町のみちしおの湯へ。真矢さん、道を間違いえらく遠回りをする。いつもこう。彼は、道を間違えても間違えたことを認めず突き進む。以前、真夜中真っ暗闇の山奥に突き進み、電波届かず、道標も見当たらず、道があるのかないのかもわからず、とんでもなく恐ろしい思いをした。このことは、突き進んだ交差点を通る度に思い出している(まあまあ頻繁)。そんなわけで陽の沈んでゆく海を眺めながら湯に浸かれるはずだったのに、窓の外はまっくらけで何も見えなかった。
母がアイスクリームを食べたいというので御坊のシャトレーゼに寄る。生まれて初めてのシャトレーゼ。商品の種類が多くて驚く。アイスだけでも百種類くらいありそう。和菓子にパンまである。アイスクリームをどっさりと、真矢さんエクレア、私野菜ジュースを買う。エクレアの中のクリームがチョコクリーム?モカクリーム?だったらしく、普通でええねん、と言っている。激しく同意。
実家で蟹鍋。父も母も正月くらいは贅沢せな、といつもの台詞。私が子どもの頃自営業をしていた父母はふたりで必死に働き、私たち三姉妹を育ててくれた。おかげで何不自由なく大きくなり(ほんまに大きい)、贅沢させてもらい、今や三姉妹どころか婿に孫にと合計4男5女、贅沢させてもらっている。すんません。どうかまだまだ元気でいてください。母は相変わらずろくに食べず、皆の分の蟹を剥いている。
三女(三十八歳)は不調とのことでしばらく部屋にこもっていたが、何か食べたいと抗体検査キットでコロナ陰性を確かめ、席につき、皆と蟹鍋をつつく。 子どもたちはおでん。私も子どもたちとさっさと食べ終わり、隣りの建物で縄跳びなどをして遊ぶ。
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