「だまし討ち」
昭和16年12月8日午前7時の臨時ニュースです。それから幾星霜、昨7日(2022年12月)のわが心のない爱読紙の夕刊コラム「素粒子」は、
と書きました。ご承知の通り、臨時ニュースにあるように、日本時間で8日の午前3時前後に帝国海軍はハワイ・オアフ島パールハーバーの米太平洋艦隊基地を奇襲しました。現地時間で7日朝7時半ごろ。日曜日でした。また、帝国陸海軍は日本時間8日午前2時前、当時はイギリス領だったマレー半島東海岸のコタバルに奇襲上陸しました。日本より1時間遅れの時差である現地時間では7日から8日に日付が変わってまもない真夜中でした。
いずれにしても、真珠湾よりコタバル作戦のほうが数時間ほど先に始まっています。というわけで、臨時ニュース、というか大本営の発表も「西太平洋上で」としたのかもしれません。南シナ海は一応、太平洋を構成していますからね。しかし、実はコタバル作戦のための船団が海南島を出撃してから上陸作戦開始までの数日間に、敵(英国)の偵察機との遭遇戦などいくつかの小競り合いがありました。
当時、日本は独伊と軍事同盟を結んだ枢軸国であり、英仏支の連合国とはすでに法的に戦争状態でした。アメリカはまだ中立国でした。ですから、真珠湾のほうは別として、コタバル作戦を「無通告のだまし討ち」とするのは、今風に言うと「フェイク」ですね。
真珠湾攻撃による日米開戦の真相についても、いろいろ言われています。ハルノートを日本に突き付けたアメリカが無防備で呑気に構えていたわけがありません。しかも、日本と戦闘継続中である中華民国に対して、米軍から割愛する形で義勇軍AVG(アメリカン・ボランティア・グループ)を編成する大統領令に署名したのは、半年以上も前の春先のことでした。
もちろん、表面上・外見上だけ言うと、日本の対米宣戦布告は真珠湾奇襲開始に遅れてしまったわけです。が、これはまあ事故で間に合わなかったもので、「無通告」ではなく、手はずとしては戦闘開始前に手交する計画でした。そうだとしても、真珠湾の結果は変わらなかったでしょう。というか、結果が変わらないようにギリギリを見計らっての手交を計画していたわけですから、まさに、表面上・外見上の取り繕いというのが実態です。それが「法」というものです。「こんなギリギリに言われても、準備する時間がないじゃないか。もっと早く言ってよ」とは相手も言いません。その代わり、アメリカ政府は国民の戦意発揚のために、「リメンバー・パールハーバー」をスローガンにしました。日本と戦争をするということは、日本の同盟国であるドイツを相手にした戦争もできるということです。
だれがだれをだましたんでしょうかね。
それでも爱読紙が「だまし討ち」と強弁したいなら、どうぞ「未通告」とするといいかな。このマガジンの「未許可」もご参考ください。
ところで、「素粒子」というコラムは現在、執筆者は坪井ゆづる、渡辺雅昭の両論説委員で、文と文の間が「 × × 」なら前者、「 ◎ 」なら後者だそうだ。ちなみに、冒頭のは◎。その4日前(12月3日付)、××はこんなことを書いていました。
わかっているのか、わかっていないのか。だれがだれをだましているんでしょうね。
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