神津島の軌跡(前編)
この旅はいろんな意味で忘れられない旅になった。
とにかく、無事に家に帰ってこれたことに安堵するともに、じわじわと頭に湧いてくる道中に起こった種種雑多なできごとを、いつも通りにここに書き留めておくことにする。
初めは友人の一言で今回の旅行が計画されることになった。
「遠くまでバイク旅したい。」
よし来たと、2か月後の予定を合わせて、伊豆大島をバイクで一周することにした。
バイク旅は楽しいが、そこまで体力がない我々でも可能な範囲での小旅行のつもりだった。伊豆大島は一周60km程度なので、2日間かけて回ったら、そこそこ達成感もあるだろうという算段だ。
その後、予定表にぽっかりと空いた2日間に目を背けたまま、詳細を何も決めずにいつの間にか旅行2週間前になっていた。(フィリピン出張もあったしね…)
なんだかんだのやり取りを省略しつつ、結局我々は当日、神津島に向かうフェリーに乗っていた。(雑)
神津島は想像通り小さくて海がきれいな島だった。
島を走るバスが1時間に1度島の西側を半周する。東側は山であり道路がないため、余程せっかちじゃない限り移動には困らない。
もうすでにバイク旅という目的を忘れている我々である。
神津島において、夏であれば一番惹かれる場所は、島の北西に位置する赤崎遊歩道だと思う。
ここには、海に橋が架かっており、飛び込みが自由となっている。
子供のころの夢である、高台からのダイブが公認されているのだ。
しかし、ごつごつする岩がたくさんあるのに自己責任とはすごい。
後で分かることだが、この島はあらゆることに関して自由であった。
自己責任が島民のモットーに違いない。
めちゃくちゃ怖かったが何度か飛び込んだ。小さい子は怖がる様子もなくどんどん飛び込む。島の男の子は強い。
2人のかわいい子供と仲良くなった。
その後、前浜海岸でビーチバレーをする。
風が強くて、一瞬でボールを失う我々。(開始10分くらい)
波のスピードが速くて、一度海に落ちたボールは一瞬で沖まで流されてしまう。
恐ろしい光景である。私たが沖に流されなかっただけよかったのだと思う。
この後このボールは信じられない場所で見つかることになるのだけど。
日が沈み、近くの居酒屋で島の食材を楽しんだ私たちは、また前浜で花火をしにいく。
前浜はごみさえ片づければ花火をしてもよいとのこと。
たぶん、誰も見たことがないだろうから黙っていたが、自分の好きなロシア映画の「Leto」の1シーンみたいだと思った。
永遠のようで刹那的な瞬間である。
こんな楽しい、何も考えなくてよい夏の夜が一夜あると、その他の忙しい日々の記憶の中の逃げ場となってくれる。
島の焼酎と花火で私たちは楽しい夜を過ごした。
後半へ続く。