2年前に頓挫した小説「魔人アルレガ」
1
なんでも、アルレガさんのところの娘の様子がおかしいらしい。いや昔からおかしかったんじゃないかと彼女を知る人なら誰もが思うだろう。それがどうにも最近は特にとげとげしいんだと。思春期特有のアレだか、二○歳も越えてそろそろ体臭が出てきたからだとか、みんなして適当なこと言っているうちはよかった。ある日を境に、うわさは本当だったんだと誰もが知ることになる。
2
「う、そ……」
出会い系アプリでマッチングした相手が実は四○歳年上なのだとカミングアウトしてきた。この半年間ずっとチャットでじりじりと距離を確かめてきた相手だった。それが今朝、実は六○歳なんだと告げてきた。うそだろ。騙されたにしても笑ってカメラに収めるタイプのドッキリくらいの飛距離じゃないか。私は激怒した。そして壁を殴った。そしたら爆音と共に家が破壊された。
この腕で……私は腕を見た。肘から拳にかけて煙が立ち上っている。マンガのようだ。
「アリス……お前なんてこと……」
「お……お父さん」
そのとき、父は庭にいて、愕然とする私を壊れた壁の大穴の下から見ていた。勢いで家を破壊するのはこれで4回目。父は何かを確信したらしい。大穴の向こうから姿を消すと、庭を大回りして玄関から階段をのぼり、部屋のドアから静かに現れて、私に目を合わせた。
「アリス……お前は魔人になった」
「え?」
彼がそう言い放った瞬間、私は激しい脈動が、心臓のあたりからむくむくと膨れ上がってくるのを感じた。私が、魔人?
いや、それはそうだろう。そうでもなきゃ説明がつかないんじゃないか。脈動はひっこんだ。第一、父が認めた瞬間から魔人になるのもおかしい話だ。
「実は俺も魔人だったんだ」
「……ええええ!? いや心当たりがあってなんで黙っていた? 勢いあまって家が壊れるのもう4回目なんだよ? 1回目で言ってくれてもよかったんじゃないの」
「すまない」
「う、うん……まあ謝られても……」
私は今日から魔人になった。
3
私が気になることは、あの年を実年齢の半分以上もごまかしていた老人が今どんな気持ちでいるかではなく、魔人になった私になにができるのかだった。
もちろん、人はいつから魔人なのか気になるが。
―――
文章はここで途切れている。
ここまで書いて頓挫していたようだ(頼むから書ききってくれ)