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第2回感染症勉強会スペース(尿路感染症編)

新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
内科専攻医3年目(サブスペは血液、腫瘍)のへまとろじ医と申します。

2025年になってしまった…
本来であれば昨年に投稿する予定であった
2024年10月末にあった第2回感染症勉強会スペースのまとめとなります。
言い訳がましくなってしまいますが、2024年10月以降がとても忙しく…でした。
それでは早速やっていきましょう。


尿路感染症(診断編)

尿路感染症の診断は難しい!?

へまとろ
「問診や身体所見、腹部超音波検査、画像検査(CTなど)、尿検査および尿のグラム染色などがありますが、それらを駆使して総合的に考えないと尿路感染症の診断は難しいですよね」

Dr.L先生
「実際にそうだと思います。思っているより尿路感染症の診断を下すのは本当に難しいことです。身体症状でもはっきりしたものはなく、あっても膀胱炎を繰り返しているというエピソードは役に立つぐらいですかね。尿検査の結果をもって診断はできないんですよ。本来であれば尿のグラム染色を行っての診断が望ましいですが、施設ごとの事情もありますからね」
(当時のDr.L先生のアンケートによればグラム染色が救急外来などでできると答えた割合が30%程度であった…)

尿路感染症を疑ったときの尿検査に対する向き合い方

Dr.L先生
「おおまかに尿検査は尿定性と尿沈渣に分けられますが、尿定性は検査紙で結果がわかりますが、尿沈渣は尿を鏡検する必要があるので、どうしても夜間休日では確認することができないという弱点があります。もし尿定性だけの場合でみるべき項目は白血球や亜硝酸となってくるかなと思います」

他にもグラム染色をするにしても「染色の出来が技術量に依存してくるので、一概に自分の染色したものが診断するに足り得る検体か」という意見がありました。
実際、グラム染色の初心者あるあるではありますが、下記のポストのようなクリスタル紫液(1番液=青色に細菌の細胞壁を染める液体)が脱色不良となってしまうケースもあったりします。

また尿グラム染色をもってそのGNR(グラム陰性桿菌)の形態から腸内細菌目細菌やブドウ糖非発酵菌(緑膿菌に代表される)の菌なのかをどこまで手がかりにするのか?という質問があり
Dr.L先生
「一般的には腸内細菌目細菌は太くて、短くて、濃くてということで、逆にブドウ糖非発酵菌であればと細くて、長くて、薄くて目安にはなりますかね。ただしここも先ほどの染色スキルと同じく、自分が見た所見に対するフィードバックに関しては必要になってくるものと思われますね」

それ以外のツールで尿路感染症に迫れるか?

へまとろ
「先ほど有意な身体症状などは尿路感染症はあまりないとおっしゃいましたが、何度か経験ありますが、嘔気や嘔吐を伴う発熱で…ということで診断すると尿路感染症であったケースがありましたが、Dr.L先生的にはどうでしょうか」

Dr.L先生
「やっぱり腹部感染症、とくに胆嚢炎および胆管炎などの胆道感染症でも出てしまいますし、また腎双手診やCVA叩打痛があれば疑うきっかけにはなりますが、確診につながりにくいと思います」

へまとろ
「あとは画像検査の方に関して質問が寄せられていて、『CTでの腎臓の毛羽立ちや腎周囲の脂肪織混濁などの所見が尿路感染症、いわゆるここでは腎盂腎炎を疑う所見となり得るか』というところです。いかがでしょうか」

Dr.L先生
「自分はこの所見で腎盂腎炎だと言い切れる感度は7割、特異度は6割程度であり、研修医がこれをもって腎盂腎炎だと言ってきたら色々確認してしまうかもしれません。それぐらいそこまで信頼のある所見とは思えないです」

診断部分のまとめ


尿路感染症の診断に関しては病歴・身体所見、画像所見、尿所見のいずれかで決めうちしての判断というのが難しく、それぞれの所見などを総合して判断すること。また尿路感染症を診断するときには解剖(Ex. 腎臓、前立腺、精巣上体など)を意識する必要がある

尿路感染症(治療編)

尿路感染症に対する総論的な部分について

へまとろ
「総論部分的な話になりますが、治療を行うときの抗菌薬に関してはグラム染色の結果や培養結果での検出された細菌に応じて抗菌薬の選択を行えば良いと思います。ただ問題となるのはその際の抗菌薬投与期間になります。先生は尿路感染症における抗菌薬投与期間に関してはどうお考えでしょうか」

Dr.L先生
「おおかたは2週間ということが多いですが、世界的にこの期間を短くして1週間というのが多いと思います。ただしそこは患者さんの病態(免疫不全)や耐性菌やブドウ糖非発酵菌であれば従来であれば2週間程度にすることが多いかと思います」

確かにいわゆる単純性尿路感染症に関しては2017年にvan Nieuwkoopらより腎盂腎炎となった成人200人の患者(透析、腎移植後、多発性嚢胞腎、妊婦など)における半数以上はβラクタム系抗菌薬を使用しての治療で7日間もしくは14日間の抗菌薬投与で臨床的改善では非劣性であった(ただし男性では劣性であった)というRCTが出ている。

またSanfordのガイドラインでも7日間での推奨となっていると。
実際、治療期間に関しては長くし過ぎても耐性菌のリスクがある。
とはいえ目の前の患者像が臨床試験に組み入れられているような患者像になっているかどうかは確認が必要であろう。
単純性や複雑性、そして患者状態で相互的に判断で良いかと思われる。

尿培養からGPCが検出されたら?

へまとろ
「質問があり『尿培養などからGPCが検出されたらエンピリックセラピーをどうするか』ということでした。やはりその場合に考えられるのはEnterococcus属、いわゆる腸球菌になるかと思います。その場合は一般的な尿路感染症で使うセフェム系は腸球菌には使用できないため、ペニシリン系などが望ましいと思います。ただしこれが難しいところがあって、さっきのグラム染色などでの所見でGPCが見えたらペニシリン系抗菌薬を使うのか、それとも培養結果が一通り揃ってどの菌種かってのがわかってから使うのかについてはどうでしょうか」

Dr.L先生
「患者さんのバイタルなどが崩れている場合ならやっぱりすぐにでもカバーしておく意味でも腸球菌カバーは良いんじゃないかなあと思います。ちなみにGPCのみで落ち着いているような状況であればペニシリン系抗菌薬でもビクシリンなどを選択するかなと思います」
「ただしそのGPCが黄色ブドウ球菌が検出された場合にはどうするのかが大事ですよね。黄色ブドウ球菌の尿路感染症で終わるんじゃなく、そこから黄色ブドウ球菌による血流感染症を考える必要があります」

前立腺炎の治療について

へまとろ
「抗菌薬選択として教科書的には前立腺への移行を考えて第3世代セフェム系抗菌薬やニューキノロン系抗菌薬を使用する方が良いと言われていますが、そのあたりについてはどうでしょうか」

Dr.L先生
「その話については繰り返し前立腺炎を起こしているいわゆる慢性前立腺炎の話になってくるかなと思います。急性であれば基本的には移行していくと思います。」
「あとは前立腺炎を疑って、男性の尿路感染症にきちんと直聴診をするのかどうか…」

へまとろ「自分は確実にやりますね」

Dr.L先生「やらないのは穴がないか、やる医者の指がないか…」

へまとろ「それはよく言われて育ちました笑」

Dr.L先生「実際の的中率はどうでしょうか」

へまとろ「数十件やって1人いるかどうかでしたね笑」

予防について

やっぱり排尿ケアや前立腺肥大によるものが起因するのであればやっぱり予防に関して泌尿器科への相談は必要になってくるかなと。

最後に今回のスペースをやる前に再度一周して読んでみた本を紹介して締めようと思います。


おわりに

ということで、尿路感染症の診療のまとめとなります。
繰り返しなりますが、やはりこの感染症は診断が難しいです。治療していくとよく他の疾患が隠れていてということがあります。
(筆者も尿路感染症疑いからの結核やANCA関連血管炎をみたことがあります)

さて今後となりますが、第3回は肺炎編をお届けしたいのですが、
残念なことに一緒に勉強会を主催していたDr.L先生がご不在となっているため、
今後の運営方針をどうするか、検討中です。また改めてアナウンスしたいと思います。

最後になりますが、このまとめが遅れてしまったこと大変申し訳ない限りです。
2025はそういったタスクを円滑に進めれるようにもなりたいですね。
それでは。

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