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IN THE COURT OF THE CRIMSON KING

1969年はロックの年と言われている。ビートルズは集大成アルバム「アビイ・ロード」を完成させ、ローリング・ストーンズは「レット・イット・ブリード」を発表して黄金期の到来を予感させた。ウッドストックは大成功を収め、ロックにおける最盛期だった。

それと同時に黎明期とも言える。レッド・ツェッペリンが衝撃のデビューを果たし、ザ・フーは「トミー」でオペラ・ロックという新たなロックの可能性を示した。ブライアン・ジョーンズの死やオルタモントの悲劇から、ロックは新たな境地へ踏み出そうとしていた。

そんな1969年に発表されたのが、キング・クリムゾンの「クリムゾン・キングの宮殿」である。「アビイ・ロードを抜いてトップに立った驚異のアルバム」という紹介が頻繁にされる。(実際には、全英オフィシャルチャートは最高5位。)それほど衝撃的なアルバムだ。プログレッシブ・ロックを確立させ、後のロックに多大な影響を与えた。

このアルバムの良さとはなにか。それは、古典的な音楽と前衛的な音楽の融合にあると感じる。管楽器を取り入れることで、ジャズやクラシックの要素が散りばめられた深みのあるロックを感じることができる。それに加えて、メロディや詩からプログレッシブ・ロック特有の独創的な浮遊感を得られる。古き良さを感じることができるが、目新しさも感じることができるのがこのアルバムだ。

キング・クリムゾンは詩が難解で抽象的でありながら、音楽によってそれらがクリアに表現されている。陰鬱でありながら心地いい、キング・クリムゾンでしか味わうことができない世界に聴き手は引きずり込まれる。アルバムジャケットも実に見事に「クリムゾン・キングの宮殿」を表現している。

2020年のいまだからこそ、このアルバムを聴く価値があると感じる。前述したように、いま聴いても目新しさを感じることができるだろう。「21世紀の精神異常者」や「エピタフ」は現代社会と重なる部分があるのではないか。コロナによって社会は暗く、ひとは苦しいときを迎えている。キング・クリムゾンの音楽の世界に身を委ね、改めて社会と自分について深く考えてほしい。そして、純粋な音楽の楽しさを堪能してほしい。


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