北欧スタートアップイベント攻略ガイド
はじめに
北欧のスタートアップイベントへの参加を検討していますか?多くのスタートアップイベントに参加してきた専門家による洞察とアドバイスをこの記事を通してお届けします。
今回記事作成にご協力いただいた今井真奈美氏は、福岡地域戦略推進協議会で事務局長補佐として海外連携とスタートアップの支援を担当されています。北欧を含む世界各地のスタートアップイベント、特に、フィンランドのSlushやエストニアのLatitude 59など、大きなイベントへの参加経験を持ち、日本国内外のスタートアップイベントでのコーディネーターとしての経験も豊富です。日本の自治体としては初めてSlushに出展した際のコーディネートも手がけました。本記事を通して、北欧のスタートアップイベントへの参加の価値を最大限に引き出すための実践的なアドバイスを提供いただいています。
ガイドの完読時間は約7分です。
北欧の主要なスタートアップイベントをみてみよう!
北欧はスタートアップエコシステムが整っていることで知られており、注目されるイベントも毎年行われます。参加を検討している方は是非チェックしてください。
Slush: ヘルシンキで開催される世界的に有名なスタートアップイベント。Slush公式サイト (開催予定日:2024年11月20−21日)
Arctic15: スタートアップ投資を中心に扱うヘルシンキのイベント。Arctic15公式サイト (開催予定日:2025年6月4-5日)
Latidude 59: エストニア、タリンで開催されるスタートアップイベントです。世界中の起業家や投資家が参加します。Latitude 59 公式サイト (開催予定日:2025年5月21-23日)
Nordic Business Forum: ヘルシンキで開催されるヨーロッパ最大のビジネス&リーダーシップイベント Nordic Business Forum 公式サイト (開催予定日:2025年9月24-25日)
Oslo Innovation Week: オスロで開催されるイノベーションに焦点を当てたイベント。Oslo Innovation Week公式サイト(開催予定日:2025年9月22-26日)
TechBBQ: デンマーク、コペンハーゲンで行われる技術とイノベーションに注目したイベント。TechBBQ公式サイト(開催月:2025年9月、日時未定)
北欧スタートアップエコシステムの基礎
北欧のスタートアップエコシステムは、その革新的な文化と政府支援で知られています。特にフィンランドは、比較的低い法人税率と高い研究開発への投資が魅力的なビジネス環境を提供しており、ユニコーン企業の創出に成功しています。オープンイノベーションが盛んで、サスティナビリティ領域の技術への強い関心があります。今井氏は、「北欧では産学官を越えて社会全体で『社会をより良くする』という考えが根付いており、イベントでは必ず企業の環境への取り組みや持続可能性に関する議論が行われます。自社の社会的取り組みを説明できるように準備しておくことが重要です」と話されました。
北欧のスタートアップエコシステムについては以下の点を押さえておくとよいでしょう。
オープンイノベーション: 持続可能な技術と社会的責任に焦点を当てています。
政府の支援: 技術革新向けの補助金や助成金が充実しており、政府レベルでの支援が手厚いです。
法人税率と研究開発: 特にフィンランドは優遇された法人税率と高い研究開発投資でビジネスをサポートしています。
デジタル化: デジタル化が進んでおり、スタートアップにとって理想的な環境が整っています。
オープンイノベーションを通して持続可能な技術と社会的責任を重んじる北欧のアプローチは、今後のビジネス展開に大きなヒントを提供します。今井氏は「特にサスティナビリティ、SDGs、Well-being は日本でも注目されていますが、それらをどのように自社で活用し、社会と自社の双方にメリットをもたらすか具体的な活動を実行することが重要です」と述べています。
文化と価値観:北欧のスタートアップイベントで成功を導くために
北欧のスタートアップイベントで成果を出すには、地域特有の文化や価値観への理解と適応が鍵です。今井氏は北欧のビジネス文化について、「北欧は上下関係が少なく、非常にカジュアルで効率的なので、一度の会議で多くの決定が下されることが多いです。そのため、迅速な意思決定を心がけ、CEOやC-suiteといった上層部へも積極的にアプローチをすることが効果的です」と述べています。
以下は、北欧で活動する際に知っておくべき文化的要素になります。
コミュニケーションのスタイル:北欧では、上下関係があまりなく、フラットなコミュニケーションが一般的です。立場に関わらず自由に意見交換が可能で、相手の意見を尊重し、オープンな態度が重視されます。
透明性と平等性:北欧のビジネスミーティングでは、言葉を遠回しにする必要がなく、思ったことをストレートに伝えることができるため、信頼性が築かれやすくなります。
ワークライフバランス:北欧ではプライベートと仕事のバランスを大切にする文化があります。ビジネス交渉時もこのバランスを意識したスケジューリングが求められ、生産性と創造性を高める要因となっています。
ビジネス言語:英語は北欧のビジネスシーンで広く使われています。非英語圏からの参加者でもコミュニケーションを取る上で問題は少ないですが、基本的な英語能力は必要です。
文化や習慣の違いを理解し、適応することは容易ではありませんが、今井氏は「日本の方々の参加は近年増えており、どうしても日本人同士で固まってしまいがちですが、北欧のスタートアップイベントに参加する際は、せっかくの機会なので言語の壁を乗り越えて現地の方々とコミュニケーションをこちらから積極的に取る姿勢が大事だと思います。その際に、現地とコネクトしてくれるヘルシンキパートナーズは非常に力になります」とアドバイスしていただきました。
ネットワーキング戦略
北欧のスタートアップイベントで成果を出すには、効果的なネットワーキング戦略が必要です。今井氏は「北欧では、特にスラッシュ(Slush)のようなイベントでは、階層にとらわれずにどんな立場の人でもアプローチしやすい環境があります。そこで積極的に多様な人々と交流し、イベント後はLinkedInなどのSNSを利用してカジュアルにフォローアップすることが重要だと思います」と語っています。このセクションでは、北欧でのビジネスネットワーキングを円滑にし、長期的な関係を築くための具体的なアドバイスをご紹介していきます。
積極的なアプローチ:北欧のスタートアップイベントはさまざまな企業の意思決定者に直接アプローチしやすい環境が整備されており、基本的には経営幹部層へのアプローチにも真摯に答えてくれます。
イベント専用アプリの活用: Slushなどのイベントで提供されるアプリのマッチング機能を活用し、事前に関心のある人物や企業との接触を計画します。
アフターパーティーへの積極的な参加:アフターパーティーは、経営幹部層や専門家と会う絶好の機会です。
ネットワークのフォローアップと維持: コネクションを維持したい人と出会えたらフォローアップが重要になります。得にスタートアップイベントの後などはメールよりもLinkedInなどのプラットフォームを活用することが一般的です。会った後に、簡単な挨拶を送ることをお勧めします。
今井氏はご自分の経験からアフターパーティーやサイドイベントへの参加をとくに推奨しており、参加の重要性について次のように述べています、「アフターパーティーはカジュアルにお酒を飲みながら現地の様々な方々と交流できる場です。そこでSlackのCTOやRovioのCMOといった人物とも気軽に乾杯をした経験が私にもあります。このような非公式な環境は新たなビジネスのチャンスを生み出しやすく、ネットワークを構築するには最適な場所です。」
実用的なアドバイス
こちらのセクションでは、Slushのような冬に開催されるイベントに参加する際の具体的な装備とスタートアップイベントを円滑に網羅するためのスケジュール管理について見ていきます。実践的なアドバイスについて今井氏には次のように答えていただきました、「特に室内は暖かいため、厚手のダウンジャケットとヒートテックを重ね着するのがおすすめです。また、靴下も重ねて、足の裏にカイロを持参し、ブーツを履くと良いでしょう。スケジュール管理については、イベント専用アプリの活用やサイドイベントの確認等をお勧めしますが、それ以前になんのために参加するのか、誰に会いたいのか、どのような情報を得たいのか等、具体的な目標を設定し、且つ、どのようなプログラムがあるのかなど事前準備を徹底してから参加することが重要です。」
冬季イベントの服装と寒さ対策
北欧の冬: Slushは11月にヘルシンキ市で開催されます。日中の平均気温はおよそ2度、そして夜の平均気温は-3度です。雪が降っている可能性もあり、靴と服装は冬用のものが必要になります。また、イベント会場や会議室など室内は温かいため、温度調整ができるように何枚か重ね着をすることをお勧めします。
持ち物リスト: 適切な防寒対策としてぜひ以下のアイテムをご検討ください。
カイロ(足用)
ヒートテックなど重ね着できるもの
厚手のダウンコート/ジャケット
ブーツ
ニット帽など
スケジュール管理のアドバイス
目的の設定:視察でイベントへの参加が終わりになってしまわないように、取得したい情報、会いたい人、マッチングやコラボレーションしたい企業など具体的なミッションを掲げて参加することをお勧めします。
事前準備の徹底: 事前にイベントの詳細を調査し、ビジネスに役立つセッションを把握し、計画的に参加しましょう。特に日本関連のイベントやアフターパーティーには積極的に参加して、重要なネットワーキングの機会を活用します。
イベントアプリの利用:イベント専用のアプリをインストールし、スケジュール管理、現地企業とのマッチング、または会場案内に利用します。
サイドイベントの確認:メインイベントの他に様々なサイドイベントが存在します。自社の目的やミッションに合わせてどのイベントに参加すると良いかを準備します。
北欧スタートアップイベントへ参加する価値
北欧のスタートアップイベントに参加する価値は、多方面にわたります。まず、最先端の技術やビジネスモデルに触れることができます。今井氏は次のようにも述べています、「このようなイベントは新しいサービスやテクノロジーの発見の場でもあります。Slushのような北欧のスタートアップイベントでは、日本で3,4年後に流行る先進的なテクノロジー、サービスや技術の話を聞いたり、実際に触れたりすることができます。」さらに、国際的なネットワーキングの場としても優れており、世界各国の投資家や企業と直接交流できる機会があります。
グローバルな視点の獲得: 世界各国からの参加者と交流することで、多角的なビジネスの洞察を得ることができます。
最新のイノベーションとトレンドへのアクセス: 最先端の技術や新しいビジネスモデルに直接触れることができ、自社のイノベーションにもつながります。
国際的ネットワーキング: 世界中から集まる投資家や他のスタートアップとの直接的な交流が可能で、新たなビジネスの機会を見つけることができます。
これらのイベントは、ただ情報を得る場にとどまらず、参加すること自体が大きな価値をもたらし、企業の国際化を促進する重要なステップとなることがあります。
個人への影響
北欧のスタートアップイベントに参加することは、ビジネスパーソンにとって次のような個人的な成長や気づきもあたえてくれます。今井氏は、次のような気づきがあったと語ってくれました、「フィンランドでの経験を通じて、社会全体で持続可能な社会を目指すビジネス文化の重要性を深く感じました。オープンな協力文化が私の価値観にも大きく影響を与え、北欧の効率性やオープンさ重視する働き方を取り入れるようになりました。」
コミュニケーションと意思決定力の進化: 北欧のコミュニケーションスタイルを体験することで、より効果的かつ直接的な意思決定力を身につけることができます。
価値観の変化:技術開発とビジネス活動を通して社会全体を豊かにするという視点に触れることができます。
最後に
この記事では、「北欧スタートアップイベント攻略ガイド」として、福岡地域戦略推進協議会の今井真奈美氏の貴重な経験と洞察を通じて、文化的適応、ネットワーキング戦略、実用的なイベント参加準備のアドバイスを提供しました。この記事が皆様の手助けになることを願っています。
福岡地域戦略協議会とヘルシンキパートナーズ
この記事は、福岡地域戦略推進協議会とヘルシンキパートナーズとのコラボレーションにより制作されたものです。両組織は2018年から連携し、二つの都市間でのイノベーションとビジネスチャンスの交換を促進しています。
関連リンク集
今回福岡地域戦略推進協議会 Fukuoka D.C.
今回福岡地域戦略推進協議会にこの記事の作成にご協力いただきました。福岡地域戦略推進協議会の活動に興味がある方は、ぜひこちらのウェブサイトをチェックしてみてください。
ヘルシンキパートナーズ
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ヘルシンキ・パートナーズについてもっとお知りになりたい場合は是非ヘルシンキ・パートナーズのウェブサイトをご覧ください。リンクはこちらです。
参考記事:
北欧流ユニコーン創出工場の作り方- Noteリンク
How did Helsinki become Unicorn Hub - 原文リンク
DEIとイノベーションの関連性: フィンランドと日本から得た洞察 - Note リンク
The Link Between DEI and Innovation -原文リンク
ヘルシンキ市とのコラボレーション:持続可能なスマート・エネルギーソリューションへの道を開拓 - Noteリンク
Collaborative opportunities with Helsinki: paving the way for sustainable smart energy solutions - 原文リンク