新入生。オンライン世界に転生気分。
まずひとつ謝らなくてはいけない。題名についてだ。何ら考えてなかった。
ネット小説らしくオンライン世界に転生と書いた。が、転生物というのは転生前の世界あってのことだ。その違いが面白い。私は前世の大学は知らない。何せ今から大学に通うところだ!ってタイミングで転生してしまったから。ということで普通の大学と転生後のオンライン大学との比較なんて大層なことは出来ない。
つらつらとオンライン大学での経験でも書き連ねて行こうと思う。
世界が変わる前と後
寝て覚めたら世界が変わってた。
そんな漫画やネット小説のような劇的なことは起こるはずがなくて。
代わりに世界にはウイルスが徐々に蔓延する。
ウイルスたちは人類の生活を、心を、蝕むのには十分な存在だ。
そいつらは大学受験を終えて今から希望いっぱいの生活を送るなんて意気込んでる私たちにも平等にやって来て、不安だらけに変えてしまう。
だから「期待と不安に胸を膨らませ」なんていう新入生への文言を見る度に何だか腹が立って嘲笑するしかない。私の胸が風船のように膨らんだりするものだったなら、きっとそれは不安で膨らみ過ぎて破裂してもうぺちゃんこになってるに違い無いから。
桜は来年も咲くのか
卒業式中止。自分がウイルスから受けた影響を話すならばここからだろう。卒業式が無くなった。私は同級生の顔を見ることも無く、高校に行かなくなった。名古屋、宮城、沖縄、北海道。方方に散る友人たちをInstagram越しに知る。かく言う私も地方大学への進学予定だ。
その頃テレビでは某政治家の「桜はきっと来年にも咲きます」という言葉が賞賛されていた。ふざけんな、こいつらと見れる桜は今年だけだ。花見禁止を理性で理解することは出来ても、感情でこの言葉を許すことは到底出来ないのは、私の心が狭いからだろうか。
オンラインになるまで
合格発表がオンライン。入学前説明会中止、かと思ったら入学式中止、というかやっぱり授業開始延期。ていうか、大学の近くに来ないで。あなた達は感染源。そんな連絡が3月から4月にかけて日々更新される。
とは言ってもまだ正式に生徒になっていないので、大学から直接の連絡手段はない。毎日毎日、ホームページからひとつひとつ掲示を確認する。その度に感情がひとつづつ無くなっていく。
そして私は今までとは全く違う世界に転生した。
大学がオンラインでの授業展開を発表したのだ。
オンラインでの授業はそれはそれは味気ないものだった。一限、教科書の指定範囲を読む。二限、90分の動画を見る。三限、PDFを読む。こんな感じで朝から晩まで拘束される。残った課題は土日にやって気がついたら1ヶ月が過ぎる。オンラインでは授業ごとに課題を出さなくてはならないらしく、気がついたらフォルダには30以上の課題が溜まっていて爆笑した。面白かったのでSNSに上げたら、大体みんな同じくらい溜まっていた。で、また爆笑。多分、学生がこなせる量じゃなかった。あくまで私は大学受験の何倍か課題提出に体力を使っている。
教授だってオンラインのプロじゃない。現代ではありえないくらいにラグや無駄の多い動画をずっと見続ける。時には教授がオンラインのシステムに切れてる。その様を見続ける私。一体全体これはなんの授業なのか。私は何を学んでるのか。ああそうか、人の怖さか何かを「学びに来ている」のだな。あ、大学に通ってないから「学んでいる」の間違いだな。そんなことをぼんやり考え続ける日々だ。
私が悪い?教授が悪い?いや、多分オンラインのせい。
それに加えて色んな授業の教授から、それはもう多様なメールが学生に届く。唯一、教授たちの人間味を感じてほっこりする。一方でこれには疲れたり、色々思うことがあったりしたから、ここで三つほど紹介したいと思う。
まず紹介したいのが、30分ごとにメールが届く教授。「授業の動画は見ましたか」「まだ閲覧数が少ないのですが」「皆さんの履歴はこちらで確認出来ます」「課題提出はまだですか」「課題提出はまだですか」「僕の授業はつまらないですか」「単位落としてもいいですか、早く取り組んでください」とまぁ要約するとこんな感じのメールが酷い時には深夜2時に届く。メンヘラだ。メンヘラと付き合ったことがないから分からないけど、世の中ではこう言うのをメンヘラというのだろう。本気でそう感じた。「私の事みてよ」「殺しちゃうよ」と同じ類のものを感じる。声だけの授業で、顔も知らない教授だが、私の中ではもうすっかりメンヘラの印象がついている。きっとピンクでキラキラのアイシャドウを目の周りにつけて所謂「地雷メイク」でもしているに違いない。おじさんの声だったけど。
次に「アカデミックライティングなどには慣れていないし、初めて扱う単元なので友人などと見せ合っても構いません」これだけだと優しい教授だと感じる方も多いだろう。私たちには初期のガイダンスの授業もなかったために課題提出の方法すら分からない生徒もいた。次に送られてきたメールは「あ、皆さん大学の友人なんて居ないんでした」みたいな内容だ。喧嘩でも売られているのかと思った。まあホントに居ないんだけど。というか早く課題とかのフォローアップしてよ、気がついてるなら。
最後に「皆さんは『高校生気分』が抜けてない」との趣旨だ。他の学年に比べて課題の提出状況が良くなかったりしたらしい。まあ前二人と比べたらかなり正しいことを話してはいる。嫌味たっぷりな文章で送られてきたけど。でも、それでもだ。私ってホントに大学生になったんだろうか。入学式どころか卒業すらしてないんだけど。最後に大学に行ったのはいつかって?受験の時ですけど何か。人は突然変わるものではなく、環境で徐々に変容していくものである。私は自分が大学生と名乗るのにまだ抵抗がある。流石に高校生とは名乗らないが…。言うなればそう、ニート。ニートだ。
彼らは極端な例だが、深夜に授業公開や小テストの成績発表の連絡なんてのはザラにあった。オンラインの世界では夜の12時基準の更新や締め切りが多い。シンデレラのようだと言ったら聞こえはいいけど。ずっと大学のことに縛られる。どちらかと言うと社畜のような気分だ。ニートになったり社畜になったり、やれやれこの世界は忙しい。
オンライン授業に慣れてきて
そんなこんなで前期が終わった。
比べる友人なんてものがいないので、どこまで手を抜いていいのか分からなかった課題提出はそれなりの高評価を得てAとかSばかりとった。そんなのは今までの学校生活で経験がないものだから少し動揺すると同時に、苦しまずにもっと手を抜けば良かったなと思った。
そして後期もオンラインと公表された。
授業を受けるのは苦しくて理解するのを諦めた。評定はCばかり。かろうじてBが見つかる程度。
詳しいことを書こうと思ったが、もう何も覚えていなかった。授業は作業になった。
これからの話だったり
来年度もオンラインらしい。
新しいこと?強いて言うなら、高校の仲の良かった後輩から連絡があったことくらいだろうか。
同じ大学に進学してくるらしい。
大学のこと色々教えてくださいね、と言われた。
私が教えて欲しい。
キャンパスライフが楽しみです。なんて希望いっぱいにLINEをくれて、苦しい受験を乗り越えたのも知ってるから希望の風船に穴を開ける訳にもいかなくて、私の知る限りで1番明るい表情のスタンプを送って会話を終わらせた。
だって彼女は卒業式を済ませているし、入学式もある。
私には眩しすぎた。
私たちの代もやってよ。とか大学に我儘を言うような期待はこの1年でもうしなくなった。
とりあえず、
彼氏の前に友達をください。