20年ぶりに紅白歌合戦2023を最初から最後まで見た感想
2023年年末の紅白歌合戦は過去最低の視聴率を更新したらしい。
この報道を受けて、「紅白は年々見る人が減って、人気無くなって前年よりダメでクオリティが低かったんだ。」と思う人は個人的にマスコミに洗脳されやすい人なんじゃないかと思う。
そう言い切れる理由としては、視聴率を集計している「ビデオリサーチ」という会社が統計のためにどのようなサンプルを抽出しているのか謎であるし、自家用TVの推計台数(世帯)によって視聴率が算出されている数字が元になっているからである。
今の時代、テレビの台数の推計によって統計を出しているというのは、どうなんだろうか?ネットであれば、何歳のどこに住んでいる誰がいつどこで見始めて、どこで離脱したかまでわかる。
有吉さんのラジオ、サンドリが生きる糧である無職を生業としている人達は、確実に有吉さんが司会を務めた紅白をミュートで見ながら、ラジオを聞いているだろうし、明らかにここ数年で伝統的な紅白から様相が変わっている。
おそらく北島三郎さんが紅白引退して、「紅白といえばこの人」的な小林幸子さんや美川憲一さん、その他のベテランの人達がいなくなり、そこを目当てに見ていた高齢者層はごっそりいなくなったように思われる。天童よしみさん、石川さゆりさんや坂本冬美さんは今年も歌っていたが、ほとんどが出場回数一桁台で、13組が初出場となった。
NHKで言えば、ヤクザのように人ん家にテレビの有無やスマホにワンセグ機能がついてるかどうかまでを確認して、取り立てに来るようなやり方が23年9月で廃止された。そういうぶっ壊された部分も多々あり、NHK内には「これまでと同じじゃまずい」という危機感が出てきたように思われる。
それに加えて、高齢者が消えて少子化が進むと、現実的に制作費がどんどん減ってきているというのもあると思う。
紅白といえば、着物着たベテラン歌手が、今年もこれ歌うんかいみたいな、懐メロを歌って、良いお年を~。のイメージだが、もうそのようなイメージは完全に無くなったと言い切れる。
おそらく紅白の伝統を守ることはできていない。だが、何か新しい決別をしたように個人的には感じられた。どちらにせよ維持するのは無理な建物だから、壊して新しいものを建てた方がいいだろう。的なことかもしれない。
小林幸子さんと美川憲一さんの豪華な衣装が見れることはもう無い。ジャニーズ問題もあり、出演者のいろんな段取りに苦労したようにも見える。
今年の紅白のテーマは「ボーダレス」という言葉が掲げられていた。韓国アイドルをかなり多用していたこともあり、おそらくNHKの紅白は海外に目を向け始めたんじゃないかという雰囲気も出てきた。
なぜかQueenが出ていたし、宣伝回避のために企業名を隠すNHKが、堂々とディズニーを出していた。おそらく、もうしばらくしたら、XGのような日本発のグローバルアーティストも呼ばれるようになるかもしれない。
その決意表明みたいなものが、YOASOBIのアイドルの演出だったんじゃないかと個人的には思った。なんでこんな韓国アーティストを呼んだんだ?と思っていたら、YOASOBIのあのパフォーマンスがやりたかったからなんだと思う。大トリというわけではなかったが、実質大トリというか、仮面ライダーの最終回的な、これまでの歴代ライダー勢揃い感がネットでバズっている。
ネットを通じて海外にいち早くあのYOASOBIのステージが切り抜かれて拡散された。それなのに、今年の紅白が数字上で不調だったのはなぜだ?という疑問を解き明かしたい。
過去の紅白の視聴率を見てみると、北島三郎さんが引退表明した年(平成25年)の紅白は後半の視聴率が上がり45%くらい、それ以降の年は40%前後でふらふらし、令和に入ると、視聴率は急減している。
特に令和2年(2020年)~令和3年(2021年)の視聴率低下は著しい。じゃあこの原因は何なんだろう?と考えてみると、明らかにあの感染症によって多くの高齢者が他界されたからだと推測できる。これは日本全体の人口の増減グラフを見ても、言うまでもなく減っている。
助けのない家族と同居していない独居老人が多く亡くなったと考えると、世帯のテレビ数で計算している視聴率が急減する理由もわかるし、感染症に関係なく老衰でもそれが続いていくことになる。
歌手も歳を取れば、視聴者も歳を取る。早く先の一手を打たなければ、共倒れとなり紅白が消滅してしまう。そういう岐路に立たされて、少しずつ方向性を模索するようになったのだと思う。
同時に紅白のブランド力も年々低下しているだろうし、年一回の紅白の生放送で好きなアーティストを見れる喜びよりも、紅白なんかの舞台に立たせるなら、普通に単独でライブやってほしい。というファンも多い。
せっかくみんなが祝日で休みなら、仕事も確実に連休で休めるし、チケ代が高かったり、場所が遠くても絶対コンサートに行きたいみたいな人もいるだろう。
その問題を打開するには、NHK紅白でしか作り上げることができないステージを作るしか無い。それがYOASOBIのアイドルにちょっと見られたような感じがした。
あのアイドルごちゃまぜ感は、USJのアトラクションのようなジャンプ漫画のキャラからハリーポッターまで誘致した、節操ない感じが見れて、特別感があった。
ボーダレスというテーマに沿うなら、個人的にはアーティストの垣根や曲を超えて、パフォーマンスしてくれたら最高だったろうが、練習時間と許可の問題とかで、個々のアーティストで単独パフォーマンスみたいなのが限界だったのかもしれない。それでも面白かった。
視聴率という、謎の統計の呪縛に囚われすぎて、まぁまぁ面白いコンテンツがテレビ業界から消えて行っているように思える。今の若者をターゲットにするなら、狭いワンルームの部屋にテレビを置くだろうか。ほとんどネット視聴をメインにするだろうし、そもそも視聴率の信憑性が怪しすぎる。
そもそもあれだけ「NHKプラス」というネット視聴できるものを純烈を使って宣伝してリアルタイムでサーバーをパンクさせておいて、1週間見逃し配信できるNHKプラスを差し置いて、広告のないNHKの視聴率を出す意味もよくわからない。
視聴率が低かったとしても、内訳を見れば、年代や世帯などの構造はかなり入れ替わっているはずである。見逃し配信のNHKプラスはサーバーがパンクするほどなのだから、さすがに数は前年より増えているだろう。
紅白はかなり若返りしてきているし、その中でテレビだけで30%を取ったとしたら、ネット視聴者を合わせれば過去最低というレベルでは無くなるんじゃないだろうか。
小学生くらいまでの年代を省けば、日本の人口は1億人くらいで計算できる。50後半や高齢者が4000万~5000万人くらいで高齢者以外をターゲットにして1200万人だとしたら、かなり上出来にも思える。
NHKは海外にも放送されているのだから、ネットでバズりやすい。YOASOBIの紹介VTRでも、ネットでバズっている曲がテレビ初披露的な煽り方をしていた。それだけ、次世代の小林幸子さんや北島三郎さんを探すのに躍起になっているのかもしれない。
ただ、これからの紅白は特定の人がずっと出るというやり方だと、おそらく音楽業界の時代の流れが速すぎて対応できないように感じる。だからこそ、その年に活躍したアーティストたちをうまく組み合わせて、一年一年のNHK紅白の舞台で最高のものを提供するというやり方が一番合ってるんじゃないかと個人的に思ったりする。
なによりNHKがぶっ壊され始めてからの、番組全般が尖ってきた感じが見れて良い。NHKがこれからどのような形で受信料を徴収していくのか謎だが、ネットにも力を入れ始めて、膿を出し切って真面目に経営再建できれば、おそらく魅力的なコンテンツも何個か生まれる可能性もある。
VTuberやadoまで出演したのだから、もう何でもありというか、紅白のブランドイメージを刷新するチャンスにも思える。
有吉さんの司会は、当たり障りもなくボケもせず、終始タイムスケジュールに追われていたような感じがしたが、司会者3人のうち2人がステージに出て歌うのも面白かった。
年始早々、不幸なニュースが立て続けにあって悲しいが、個人的に2024年は政治にしろ経済にしろエンタメにしろ、何かこれまでの日本の悪い点から良い点へ転換する年じゃないかと思っている。
NHKの攻めたコンテンツはテレビだけでなく、ネットでも見られるようになると嬉しい。ただ、受信料は高すぎるので払いたくない。