大岩・いちばんはじめの英文法・英語長文編
前稿では、肘井「読解のための英文法が面白いほどわかる本」は一読したくらいでさっさと長文演習に入るべきだが、英文読解からスムーズに長文に入っていける問題集があるかというと、悩ましいという話をした。
そうしたところ、大岩のいちばんはじめの英文法 英語長文編と言う本が目に止まった。ご存知、超基礎文法編の姉妹版だが、アマゾンのレビュー数が超基礎文法編の10分の1くらいしかないことからすれば、超基礎文法編ほどは売れていないようだ。発刊された当時はともかく、今の時代に敢えて本書を選ぶ必要はないといったコメントもあった。
本書は、三部構成となっており、第一部は英文読解の講義で、第二部と第三部がそれぞれ練習問題と実践問題という長文演習となっている。
第一部は第0〜6講からなるが、メインは第2〜5講の接続詞の部分である。英文が長くなるのは、複数の文が繋がっているからであり、1つの文には1つの動詞しかないということを出発点に、動詞が複数使われているということは文と文とを繋ぐ接続詞が必ずあるはずだとして、接続詞を中心に講義を進めていく。そして、接続詞には、副詞の役割を果たすもの、名詞の役割を果たすもの、形容詞の役割を果たすもの(関係代名詞)、複数のものを並べるものがあるとして、節が文の要素のうちの何になっているのかを意識させ、文構造の説明をしていく。 また、その前提として、品詞(0講)、5文型(1講)、時制(6講)が解説される。
第一部はこれで終わりで、第二部から問題演習に入っていく。不定詞や動名詞など句についてまとまった説明はないが、文の要素と品詞の関係、文型を理解し、節が発見できて節と節との関係が分かるようになれば、ひとまずは英文の構造は理解できるはずで、句については演習を通じて個別的に解説すれば足りるということなのだろう。もっとも、不定詞や動名詞といった句については、超基礎文法編において、文の要素としての役割を意識させ理解させる説明がされており、役割分担をしているということなのかも知れない。
第二部は、「れんしゅうもんだい」と称して英文の問題演習が7題ある。英文は10数行で設問も2題ほど設けられており、所要時間は5〜8分と設定されている。解説は、まず新出単語の一覧があり、次に全文につき文法的な分析と和訳があり、なぜそのように分析できるのかの説明もなされている。
第三部は、「実践問題」と称して英文の問題演習が5題ある。英文は20行を超えて、制限時間が15分に設定されている。解説等の構成は第二部と同じであるが、制限時間を意識して解くように言われている。
このように、本書は、講義の部分の量を抑えて早々に演習に入り、実践により学習させていくというスタイルになっている。長文も、読解問題集の中での演習なので、解説は文構造の分析がメインとなっており、単にSVOCを振るだけでなく、どうしてそのように分析できるかも説明されている。また、英文解釈の技術シリーズのように、各講にテーマが決められている訳ではなく、文法事項がアットランダムに出てくる点は、通常の長文問題集の形式に近い。そして、扱われる長文も、易しいものから徐々に難しいものになっていくので(特定の大学の入試問題ばかりなのは謎だが)、その後の長文問題集にも繋げやすいだろう。
動画チャンネルなどでは肘井がもてはやされているが、読解の勉強は程々にして早々に長文に入りたい人には、この本も選択肢に入ってくるだろう。網羅性に欠けるところはあるが、それは、ある程度演習を積んで長文慣れしたところで、肘井や英文解釈の技術くらいを読めば足りるだろう(そのころには、肘井の第一章、第二章などは読む必要もなくなっているであろうが)。