指輪物語TRPG 第1章『南方人の策略』第3回
前回に引き続きオリジナルシナリオです。
前回の冒険はこちら
物語
サビアンは影の手先として暗躍していた。
風見丘陵のゴブリンと南連丘のオークと秘かに連絡を取り、
エリアドールを混沌の渦に巻き込もうとしている。
各村々に、迫り来る危険を知らせなくてはいけない。
そんな矢先、小谷村で事件が起こった。
君たちが調査すると、ゴブリンの仕業だということが判明。
すでにゴブリンの一団が風見丘陵からおりてきているようだ。
ハルバラドが救援を呼びに行く間、
君たちがブリー郷を守らなくてはいけない――
各村に警戒の知らせを届け、小谷村に戻ってきた一行は、宿屋で翌日からの計画を立てます。
一行はブリー郷を見回ってゴブリンの痕跡を探すだけでなく、村の防衛強化もすることにしました。
翌日、森人のイムナチャールは卓越した狩猟技術でチェトの森を捜索します。
モリエルも鋭敏な感覚を研ぎ澄ませて捜索にあたります。
2人は一日かけてゴブリンの痕跡を少しづつ発見していきました。
2日目、カレンは小谷村で塹壕を掘り始めました。短い時間の中で効率よく掘るため、地形を見極め戦略的に掘り進めます。
ウーナの姿はアーチェト村にありました。ウーナはアーチェト村で戦闘訓練を行ない、村人を鼓舞しました。
3日目、アウストリはイムナチャールやモリエルの情報をもとに、小谷村とチェトの森の境を念入りに捜索していきます。そして、夕方ごろ、ついに複数のゴブリンの痕跡を発見しました。彼らは森の影から出ることなく、しばらく小谷村を偵察していたようでした。
追跡するのは翌日、明るくなってからにしようと決めた一行は、その日の残りを小谷村で塹壕を掘ることに費やしました。
翌朝、アウストリが発見したゴブリンたちの痕跡を辿っていくと、薄暗い森の中、ゴブリンの一団に追いつきました。様子からして偵察部隊のようです。
彼らはまだ気づいていません。
森に慣れ親しんだイムナチャールが、獲物に気配を悟られずに忍び寄る方法を皆に教えます。
その甲斐あって、誰一人気づかれずにゴブリンの一団に近づくことができました。
一行は手に手に弓や槍を持ちます。そして合図と共に一斉に攻撃しました。
モリエルとイムナチャールは矢を放ちますが、矢はゴブリンの目の前を通り過ぎ暗い森の闇に消えていきます。
ウーナは大弓を構え、狙いを定めて矢を放ちます。矢はゴブリンの鎧に突き刺さり、あまりの威力に鎧を突き破って絶命させました。
カレンの放った矢は別のゴブリンの頭部を貫いて倒します。
アウストリは槍を投げますが、木にぶつかって狙いが逸れてしまいました。
弓を捨てたモリエルは素早く影を移動し、下生えの茂みから突如躍り出て長剣で一人のゴブリンを斬り殺します。
イムナチャールもモリエルの動きを真似て奇襲しますが、振り下ろされた斧は鎧で逸らされてしまいました。
カレンも不意打ちの好機を逃さず果敢に攻め込みますが、危険を察知したゴブリンがさっと身を翻し、突き出された小剣は空を切ります。
アウストリは「バルク・カザード!」と鬨の声を上げ、ゴブリンの一団に真正面から突っ込んでいきます。ドワーフの恐ろしい鬨の声にゴブリンたちは浮足立ち、戦意を喪失してしまいました。
アウストリはひと際大柄な隊長めがけて長柄斧を振り下ろします。隊長は反応しきれず、斧の一撃を受けます。
態勢を崩した隊長を、ウーナの大弓が狙います。放たれた矢は胸に突き刺さり、凄まじい威力で鎧を破壊しながら心臓へと達しました。
声を上げる間もなく倒れた隊長を見て、アウストリはたまらず「またしても嬢ちゃんに手柄を取られてしまった」とぼやきました。
ゴブリンたちは不意を討たれ、まだ応戦する準備が整っていません。
モリエルはイムナチャールを助けに向かいます。長身から繰り出される長剣は恐ろしい速度でゴブリンを襲い、そのまま首をはね飛ばしました。
イムナチャールは一人残ったゴブリンに向かい、斧で致命傷を与えます。
そのゴブリンに向かってアウストリが突撃し、長柄斧で斬り伏せて倒しました。
奇襲は見事成功し、一行は反撃する間を与えずゴブリンの偵察部隊を殲滅しました。
一行が周辺を隈なく捜索していくと、森の奥に続く足跡を発見します。
風見丘陵から降りてきたゴブリンたちが拠点としている場所に続いているに違いありません。
すぐに足跡を辿っていきます。
順調に森の中を追跡していく一行の足を止めたのは、ゴブリンではありませんでした。
突然、軟弱な泥の詰まった穴にはまり込んでしまったのです。森は昼間でも暗く、さらには葉や苔が積もっていて泥に気付くことができませんでした。
一行はもがきながら抜け出そうとしますが、動けば動くほど沈んでいきます。
誰よりも背が高いモリエルが一番最初に脱出しました。続いてウーナ、カレンが息を切らしながら抜け出します。森人のイムナチャールは「私は大丈夫だ、アウストリを先に助けてくれ」と皆に声をかけます。
モリエルは顎髭まで沈んでしまったアウストリを掴み、引っ張り出しました。
イムナチャールは素早く視線を走らせ、脱出できそうな場所を見極めていきます。そして勢いをつけて動き出します。イムナチャールは重くまとわりつく泥をものともせず皆が待つ方へ進んでいきます。しかし、運命のいたずらでしょうか、あと一歩というところでひと際深い場所に踏み込んでしまい、手を伸ばしている皆の前で沈んでいきました。
結局イムナチャールは全身泥まみれとなって引っ張り出されました。
この状態ではゴブリンを追跡する場合ではありません。
一行はできるだけ泥を落として服を乾かし、脱出の苦闘で疲労困憊となった身体を休めました。
数時間後、一行は追跡を再開します。
木々の葉の隙間からすでに陽が高く昇っていることが分かりました。
すでに一行はチェトの森奥深くまで踏み込んでいます。今までは平地や窪地でしたが、やがて丘陵地帯に差し掛かりました。
足跡は丘の中腹にぽっかりと口を開けた洞窟に続いていました。
丘の入り口には弓を持った2人のゴブリンがいます。しかし、昼間だからかゴブリンたちはやる気がなく、周囲を警戒している様子もありません。
早速一行は奇襲をしかけます。
イムナチャールとモリエルの放った矢はゴブリンには当たらず、洞窟の壁に当たって跳ね返ります。
ゴブリンたちに緊張が走った瞬間、ウーナとカレンの矢がゴブリンたちを貫きます。警戒の声を上げる間もなくゴブリンたちは絶命しました。