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指輪物語TRPG 第2章『太古より目覚めしもの』第7回

前回に引き続きオリジナルシナリオです。

※『失われた王国の遺跡』のマップ及び設定を一部使用しております。多少のネタバレを含みますのでご注意ください。
物語の大筋はオリジナルです。

前回の冒険はこちら


プレイヤー・ヒーロー

ウーナ(バルドの民の闘争者)
バルドの民の裕福な商人の娘。幼少の頃より、王の竜退治の物語を聞いて育った。大人になったウーナは必然的に戦士となり、商人たちの護衛として故郷から遠く離れた西の地までやってきた。商人たちは取引を終えて故郷へ帰っていったが、ウーナはふさわしき強敵と戦ってその実力を示したいという強い思いに駆られ、見知らぬ土地での冒険に挑戦する。

モリエル(北方の野伏の守護者)
若くしてエリアドールの民を守ることにすべてを費やしてきた。族長のアラゴルンは遍歴の旅として南方に下り、各地でサウロンの手先と戦っている。族長不在の今、より一層エリアドールの守備を固めなければいけない。モリエルは任務の合間にブリー村の踊る小馬亭に立ち寄り、各地から集まってくる情報を仕入れることにした。

アウストリ・ステイルアンブロット(ドゥリンの民のドワーフの探宝者)
アウストリは復活したエレボールで鍛冶や工芸の技を高めてきた。だが年月が経つにつれ、トーリン・オーケンシールドがそうしたように、失われたドワーフの宝をその手に取り戻したいという思いが強くなってきた。今こうしている間にも、父祖の宝が悪しき者どもに穢されているのは我慢ならない。アウストリは鎚を置き、斧を手に放浪の旅に身を投じた。

イムナチャール(荒地の国の森人の研究者)
トゥイディマールの子。リョバニオンの最北端に古くからいるアイルガルザ族の流れをくむ氏族に生まれた。
霧ふり山脈の反対側からエリアドールまで旅をしてきて、この地の文明の要となるブリー村に滞在している。そこでカンパニーと合流して共に冒険をすることになる。
厳しい土地で生きてきたためか狡猾で素早く、頭の回転が速い。

カレン(北方の野伏の伝令者)
旧アルノール王家の血を引くもの。カレン内親王。
直系王族はドゥーネダインの中でも西方の血がより強く発現し、高い能力を持つ。また野伏集団の中でも先陣に立つことを求められるため、元服前の少女であっても一人前の野伏である。その任務は主にエリアドール各地に散る野伏たちの伝令係であるが、家格の高さから各国宮廷への正式な使者としてたつこともある。
カレン(Calen)は幼名。成人後はアラノール(Aranor)と名乗る予定。

物語

君たちは古いドワーフの鉱山から
オークたちを完全に排除した。
鉱山の北の扉は青の山脈北部の最後の峰々の間を抜け
フォロヒェルの氷結湾の凍てつく荒れ地へと続いていた。
一行は、狩のため南下してきていた
ロッソス族の野営地でお世話になり、
夜中の雪の塚人たちの襲撃も退け、
ついにドワーフの館へと帰還した――

一行は、古いドワーフの鉱山を奪還後、10日ほどかけてドワーフの館に戻ってきました。
ドワーフの館の主ドワリンに報告を済ませ、旅の疲れを癒していると、館内は蜂の巣をつついたような騒ぎが起きていました。
どうやらグラム山のオーク殲滅の噂が館中に広まったようで、急遽宴の準備が始まったのでした。
そうして一行は、同行したドワーフの戦士たちと共に宴の席につき、大いに食べ、大いに飲み、この平和な時間を楽しんだのでした。

三日三晩続いた宴もやがて終わり、徐々に日常に戻っていくドワーフたちでしたが、一行のもとにバリンが訪ねてきました。

「此度のオーク退治については感謝してもしきれん。おかげでこの館が守られただけでなく、我らの土地を一つ取り戻すことができた。それはそうと、あの大蛇のことだが、我らドワーフの間では何の伝承にも残っておらん。もしかすると太古の知識に精通している人物なら何か知っているかもしれないな。そう、例えば灰色港のキールダンとか。わしは以前このような噂を聞いたことがある」

塔山丘陵のエロスティリオンの塔にある“見る石”は、海の彼方の西方の地を見つめ続けている。この石が他の場所を映すのは、ごくまれに、太古の邪悪な存在が灰色港に近づいてきた時だ。この石はかの忌まわしき存在の一挙一動を監視し続け、その存在が視界の外に消え去って初めて、元のように不死の国を映し始める。

「もしお主たちがあの邪悪な獣を追うというのであれば、一度キールダンのもとに行くのが良いかもしれんな」

一行はそんなバリンの助言を胸に、灰色港に向かうことに決めました。
灰色港はドワーフの館から1週間ほどで到着しました。
この壮麗なるエルフの都は、エリアドールの中でも特に安全な場所で、まさに戦の傷と旅の疲れを癒すにはもってこいの場所でした。

灰色港

灰色港のエルフたちは、風変わりな旅人たちも歓迎し、十分に休める場所を貸してくれました。
一行はかつてない平穏の日々を送りました。街を歩けば必ずエルフたちが歩いており、彼らはこの世のものとも思えぬ美しさでした。
灰色港では絶えず音楽が流れ、道行くエルフは陽気に笑いながら一行をからかい、軽い足取りで過ぎ去っていきます。

一行が灰色港にやってきてから1か月ほど経った頃でした。
リンドンを治めているキールダンの使いの者が訪ねてきました。
彼は港のガルドールと名乗り、主が“ブリー郷の英雄たち”との謁見を望んでいると話しました。

港のガルドール

一行としても、バリンの助言通りキールダンと話をしたかったため、快く応じました。
ガルドールは、道すがら自分の立場や今まで足を運んだ遠い国々のことを話してくれました。
そうして、この港町で一番立派な建物まで案内しれたのでした。
ガルドールが先導して謁見の間まで通してくれます。
そこには、とても背の高い一人のエルフが立っていました。
エルフにしては珍しく髭が生えています。
その顎髭は長く、銀髪で年老いてさえ見えました。
しかし活力に溢れ、その目は星のように鋭い光を湛えていました。

キールダン

キールダンは礼儀正しく挨拶をします。

「ようこそおいでくださいました、“ブリー郷の英雄たち”よ。あなた方の活躍ぶりはこの地まで届いております。あなた方をもてなすことができるのはとても光栄なことです。さて、そんなあなた方がこの遠いエルフの国までやってくるとは、何かお困りごとでもありますかな」

一行はグラム山のオークが青の山脈に入ったこと、彼らを追ってドワーフの戦士たちと共に古いドワーフの鉱山へ踏み入ったこと、そこでオークが目覚めさせてしまった太古の存在のことを話しました。

その話を聞くと、キールダンの表情は曇り何かを考え始めました。長い沈黙の後、キールダンは重々しく口を開きます。
「その話が本当だとしたら、エリアドールは大いなる悪の脅威にさらされています。ここ千年の間、かの存在がエリアドールで活動していたという報告は何一つとしてなかった。てっきり、大海の暗い深みまで潜っていってしまったものだと思っていましたが・・・。青の山脈で永い眠りについていた上古の獣は、グラム山からやってきたオークの一団によって図らずも目覚めてしまった。これは我々にとって試練です。君たちには特別に白の塔に行く権限を与えましょう。少し待っていてください」
そう言ってキールダンは、白の塔の管理者に対しての手紙を書いてくれました。

一行はその手紙を手に、塔山丘陵の白の塔へ向かいます。
はるか遠くから、丘の上ににそびえる三本の柱が見えます。
近づくにつれ、それらの塔が陽光を反射して光り輝く様子がはっきりと見えました。

一行が丘の麓までやってくると、最南端の塔アスティリオンから一人の女性のエルフが出てきました。
彼女はエルフにしては珍しく、美しい顔立ちにはかすかな皺があり、ブロンドの髪には白髪が混じっています。
どうやら気の遠くなるような長い年月を生きてきたエルフのようでした。
彼女は管理者ブラスウェンと名乗り、白の塔に来た理由を一行に聞きます。

一行は自己紹介をした後、事の顛末を話し、キールダンの手紙を渡しました。
そして、図書室での調べ物と、パランティールの使用を要求します。
ブラスウェンはすぐには反応せず、一行の心を探るかのように一人一人の目をじっと覗き込みます。

そんな中、ウーナは前に進み出て自分たちの英雄譚を語って聞かせ、勇ましく角笛を吹き鳴らすのでした。
しかし、ブラスウェンは丘陵にこだまする角笛の音にも全く反応せず、ウーナは肩透かしを食らいました。
それでもめげずに今度は美しい小鳥たちを呼び寄せます。小鳥たちはさえずりながらブラスウェンの周りを飛び回り、美しい舞を披露します。
これにはブラスウェンも思わず微笑みました。
そこへカレンがすかさず言葉を投げかけます。
「エリアドールに迫る大いなる危機をこのまま何もせず放っておくわけにはいかない。太古の獣について調べさせて欲しい」
その言葉に、ブラスウェンも心を動かされたようでした。
「良いでしょう、あなた方はふさわしき人物のようです。ただし、くれぐれも用心することです。パランティールの使用はどんな危険が降りかかるか分かりませんから」

そう言って、ブラスウェンは別の塔へ一行を案内しました。
それは最東端に位置するナディリオンでした。
ここは訪問者が寝泊まりする設備が整えられています。

ブラスウェンが一行に一通りの説明をし終えた頃でした。
突然、上の階の寝室の扉が勢いよく開き、人間の中年女性が足音高くおりてきました。
彼女はブラスウェンに憤慨した暴言を浴びせます。
どうやら、彼女はパランティールの使用許可が下りてから何か月も待っているようです。
ブラスウェンはそんな暴言にも動じず、何事もなかったかのようにナディリオンを去っていきました。

中年の女性はウォレスと名乗り、自分が来てから2か月もの間、この塔で待たされていると言いました。
前の使用者の研究に時間がかかっているようですが、ウォレスはそれすらも管理者の嘘なのではないかと疑い始めています。

一行は、ウォレスにここへ来た目的をさりげなく訪ねてみました。
ウォレスはその質問に戸惑って口ごもりましたが、狡猾なイムナチャールの口車に乗せられ、白のサルマンの任務を帯びてやってきたことを明かしました。
すかさずウーナが詳しく話すように説得します。
ウーナの美貌は同性にも魅力的に映りました。
ウォレスは美しい乙女が自分の手を握り、きらきらとした目で次の言葉を待っている様子を目にして、まんざらでもない気になって得意げに話を始めます。

ウォレスの話によると、彼女の主であるサルマンは、エロスティリオンの図書室を調べ、パランティールの操作に関するあらゆる伝承を手に入れるように命じたそうです。
ウォレスは、白の魔法使が自分自身でパランティールを使おうとしているのではないかと疑っています。

「まあ私の任務はこんなもんさ。ところで、あんたたちに一つ頼みがあるんだが」
ウォレスはカレンの方を見ながら話を続けます。
「あんた、身なりはみすぼらしいけど、どうやら北方王国の血を引くものだね?そんなあんたを見込んで、この手紙を裂け谷のエルロンド卿の元へ届けて欲しんだが、引き受けてくれるかい?」
どうやら、その手紙はサルマンからエルロンドにあてた手紙のようです。
伝令者としてエリアドールを巡っているカレンは、二つ返事で引き受けました。

一行はウォレスの依頼を引き受けた後、ついに見る塔エロスティリオンに足を踏み入れました。
ウォレスの話では、現在パランティールを使用している者がいるとのことでしたので、見る部屋は入れませんが、下の階の図書室ならば入れるとのことでした。

そして図書室での情報収集が始まりました。
ウーナは欲張って大量の本を運ぼうとした結果、手から本が次々と落ち、結局たくさんの本を床に散らばしてしまいました。
アウストリは最初こそ真面目に本を選んでいましたが、途中から別の本に興味を惹かれ、任務などそっちのけで床に座り込んで本を読み始めます。
モリエルは梯子に登って上の段の本を探していましたが、手を伸ばしすぎてバランスを崩し、梯子から落ちてしまいました。

結局、カレンだけがイムナチャールのもとへ本を運んでいきました。
イムナチャールは運ばれてきた本を黙々と読みこんでいきます。
ここでもカルドランの鏡が役に立ちました。
知識の断片が鏡に映り、それを手掛かりに必要な情報を精査していきます。
数日間かけて、ようやく一つの情報を手に入れました。

裂け谷にあるエルロンドの個人的な書庫に、この存在について記した1枚の羊皮紙の巻物があり、この存在の習性や潜んでいる可能性のある場所に関する数多くの情報が記されている。

次の目的地は裂け谷に決まりました。
しかし、カレンはどうしてもパランティールが気になるようです。
上の部屋がどうなっているのか少しだけ見に行こうとしたところ、上の階の扉がバタンと開き、何者かが階段を降りてくる足音が聞こえました。
姿を現したのはやせ細ったエルフでした。
独り言をつぶやき、一行の問いかけにも反応しません。
熱に浮かされたかのように図書室の書物に目を走らせています。

突然、エルフは我に返り、一行を見つめながら問いかけてきました。
「君たちは一体誰だ?いつからここにいる?」
一行は、ここ1か月の間で何度も繰り返してきた話をこのエルフにも聞かせます。
それを聞いたエルフは驚きに目を見開き、次のようなことを一行に語りました。
「実は、最近パランティールの使用中に奇妙な幻視を視たんだ。傷ついた太古の怪物がルーン川を下り、灰色港のすぐそばを通って大海へ泳ぎ出た。奴は泳ぎながら南下し、ロンド・ダイアの近くを通って灰色川を遡り始めたんだ。幻視はそこで途切れ、大蛇がどこまで行ったのかは誰も分からない」

その話を聞いた一行は、いよいよ話が大きくなってきたぞと互いに目くばせをしながら、エルフに礼を言います。
そして、裂け谷へ旅立つ準備を始めたのでした。

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