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指輪物語TRPG 第2章『番外編:一人旅モード』

こちらはLMとPLの1on1で作り上げた物語となります。

今やっているキャンペーンの中で急遽お休みしたメンバーがいたので、その間にどんな冒険をしていたのかというのを決めるため、新たに発売されたサプリ『一人旅モード』を使用した冒険の記録となります。

ちょうど第2章と第3章の間だったので、一人で別の任務に出ていてもおかしくないタイミングでした。

前回の冒険はこちら

プレイヤー・ヒーロー

モリエル(北方の野伏の守護者)
若くしてエリアドールの民を守ることにすべてを費やしてきた。族長のアラゴルンは遍歴の旅として南方に下り、各地でサウロンの手先と戦っている。族長不在の今、より一層エリアドールの守備を固めなければいけない。

物語

北方の野伏の一人であるモリエルは、裂け谷に残って冬を過ごしました。
春が近づいたある日、灰色のガンダルフが突然裂け谷のエルロンドを訪ねました。
そして何日も何日も二人で何事かを話し合っていましたが、来た時と同じように突然出立します。

灰色のガンダルフ

ガンダルフが裂け谷を背にして鳴鴨川にかかる橋を渡ろうとした時、急に振り返って見送るモリエルのところへ戻ってきました。
「そうじゃった。忘れておったが、我らの味方の一人が影の手先に捕まった。霧ふり山脈のどこかにある、打ち捨てられたドワーフの鉱山に幽閉されているという噂を聞きつけたのじゃが、お前さん助けに行ってくれるか?その場所は裂け谷よりは南で、モリアよりは北にあるはずだとわしは睨んでおる。わしはちとやらねばならんことがあってのう、先を急いでおる」

モリエルは二つ返事で引き受けますが、事の詳細を聞こうとした頃には、せっかちなガンダルフはすでに馬に乗って走り去ってしまいました。
一体誰がどこに捕まっているのでしょうか。

ひとまずモリエルは情報を集めようとします。
裂け谷にドワーフが滞在しているか、もし滞在している者がいれば何か知っていることはないか、聞き込みをするのです。
もしドワーフたちがいなければ、あるいは何も知らなければ、伝承の大家であるエルロンドに助力を請うしかないでしょう。

そうして裂け谷を回っていきますと、身なりの良いドワーフたちが早春の陽の光を浴びながら美しいエルフの都を散歩しているのを見つけました。
モリエルは挨拶をし、早速ドワーフたちに聞き込みをします。
いかにドワーフと言えども、そのような古い鉱山の場所など知っているものでしょうか。
しかし、彼らは普通のドワーフではありませんでした。
何しろエルロンドと交流があり、裂け谷に入ることを許されたドワーフなのです。
地位が高いだけでなく、教養と知識を兼ね備えたドワーフたちなのでした。

彼らはその場所を知っていました。
そこは裂け谷から7日ほど南に行ったところ、霧ふり山脈から西に少しだけ突き出た山にあるようです。
その場所は、かつては音楽に満ち溢れたドワーフの鉱山でした。
仕事に励むドワーフたちが歌う歌が響き渡っていたのです。
しかし今では放棄されて久しく、その理由を聞いても彼らは口をつぐみ誰一人としてそこで何があったかを語ろうとはしませんでした。

目的地

モリエルは早速旅の準備をして出発します。
だいぶ日は伸びたとはいえ、霧ふり山脈から吹き下ろしてくる風はまだまだ冷たく、モリエルは厚手のマントをしっかりと体に巻いて進みます。
老いた馬の背に揺られること4日目、モリエルの鋭い目がはるか先からこちらへ向かってくる集団を見つけました。
このような荒野で出会う者は、得てして邪な者である可能性が高いです。
モリエルはすぐさま身を隠せる場所に馬を進めます。
灌木の茂みの中に馬を隠し、遠くからそっと集団を見張ります。
彼らは数十人のオークでした。
騒々しい彼らは、モリエルに気付くことなく過ぎ去っていきました。
無事にやり過ごしたモリエルは先を急ぎます。

旅路

そうして3日後には、目的の場所の近くまでやってきました。
モリエルは岩肌にぽっかりと開いた鉱山の入り口を見つけます。
どんな脅威が待ち構えているのか分からないため、まずは周辺の足跡や痕跡が残っていないか調べます。

すると、いくつもの靴の跡が出入りしている痕跡を見つけました。
興味深いことに、足跡の大きさや深さからドワーフのものだとわかります。
一体誰が何の目的でここに出入りしているのでしょうか。
そして囚われている味方は一体誰なのでしょうか。

モリエルは馬を放し、松明に火をつけ、慎重に鉱山に入っていきます。
かつて仲間と共に古いドワーフの鉱山を探索した経験がモリエルを助けました。
入り組んだ鉱山を一人進んでいくこと一時間、モリエルは大広間に辿り着きました。
どうやらここは特別な儀式をする場所のようです。
ドワーフではないモリエルには見慣れない部屋でしたし、一体どんな儀式をする場所なのかも見当がつきませんでした。

石の広間

広間は野営地として使用されているようで、焚火を囲んで3人のドワーフが話をしていました。薄汚れた格好のドワーフたちはフードを被り、手入れが行き届いていない斧を横に置いています。
その向こうに1人のドワーフがロープで縛られて転がっていました。
目を凝らしてよく見てみますと、あの顔には見覚えがあります。
埃と血で汚れてはいますが、あれは紛れもなくフンディンの息子バリンでした。
バリンが呻くたびに、ドワーフの一人がバリンを殴りつけます。
どうやら、バリンは彼らに捕らえられてしまったようです。

フンディンの息子バリン

モリエルはそっと後退し、別の通路から広間に接近しました。
そしてドワーフの歌を歌い始めます。
それは仲間のアウストリが歌っていた鍛冶の歌でした。
モリエルの家系に代々受け継がれてきた剣、マゴルダグニア(シンダール語で滅びの剣ほどの意)を鍛え直してもらったときの歌です。
この剣は、かつてドワーフ族からモリエルの先祖に贈られたノグロドの剣です。
ドワーフは武具に名前を付けないため、モリエルの先祖がシンダール語で命名したのでした。

モリエルの歌声は朗々と響き渡ります。
一体どのような造りになっているのでしょうか、歌声は通路を形作る岩々に共鳴して何度も木霊します。
焚火を囲んでいるドワーフたちは一斉に立ち上がり、歌声が響く通路を見つめて叫びます。
「そこにいるのは誰だっ!姿を現せ!」
返ってきたのは歌声の木霊だけでした。
返事がないことにしびれを切らしたドワーフたちは、斧をさっと拾い、一人を除いて通路に向かって駆け出します。

その様子を、モリエルは別の通路の入り口から眺めていました。
そうです、モリエルは歌を歌った後、すぐに元の通路に戻ってきていたのでした。
陽動はうまくいきました。

モリエルは密やかに広間に侵入します。
瓦礫の陰から陰へと素早く移動し、ついにバリンと一人のドワーフの悪党がいる焚火の近くまでやってきました。
突然、モリエルは瓦礫の陰から躍り出て突っ込んでいきます。
ドワーフの悪党はいかめしい顔つきの野伏を見上げ、びっくり仰天して後ろへひっくり返りました。
その隙にモリエルはバリンの縄を解きます。
「おお、お前さんか!助かったよ、私ももうこれまでだと思っていたところだ」
バリンとモリエルは、以前青の山脈にあるドワーフの館で出会っていました。
そして共に古いドワーフの鉱山を探索した仲でもあります。

ドワーフの悪党はすぐに体勢を立て直し、モリエルに斧を振り下ろします。
獰猛な攻撃はモリエルの守りを崩し、傷を負わせます。
そして走り去っていった仲間を呼び戻すべく、通路に向かって叫びます。
「おーい、侵入者だ!こっちだ、そっちじゃねえよ!」

バリンは自分の武器を拾い、モリエルを援護します。
モリエルはドワーフの悪党に向き直り、ドワーフ製の剣を振るいます。
恐ろしい形相の野伏は悪党を圧倒し、その剣はドワーフを深々と切り裂きました。
ドワーフの悪党は呻き、それでもなおしっかりと踏ん張って反撃をしてきます。
残る力すべてを振り絞った攻撃は、モリエルの体をしっかりと捉えました。
モリエルは激しい痛みを感じ、四肢から力が抜けていきます。
革鎧が重く感じられます。
悪党は再び仲間を呼び戻します。しかし彼自身も激しく消耗しており、肩で息をしながら今にも膝から崩れ落ちそうです。
戻ってくる悪党たちの足音がどんどん近づいてきました。
もうあまり時間の猶予はなさそうです。

ドワーフの悪党との戦闘

バリンはドゥリンの歌を歌い始めます。
モリエルはこの歌を一度だけ聞いたことがありました。
裂け谷に滞在している間、火の広間で歌われていたのです。
その時はそこまで深く聞き入っていたわけではないのですが、改めてドワーフの神聖な場所で歌われる歌は、大地にしっかりと根を張る山々のような重さがありました。

バリンの力強く響く歌声は広間の岩々に深く染み入り、大地と共鳴し、広間全体が歌っているかのようでした。
モリエルは知りませんでしたが、かつてこの広間はストーンスピーカーと呼ばれるドワーフたちが、石の礎つまり足下に広がる大地に歌いかける場所でした。
それはまるで五穀豊穣を願う祭事のように、鉱脈の豊かさを願うドワーフの特別な儀式でした。

モリエルは再び力を取り戻します。四肢から疲労が抜け、しっかりと大地を踏みしめ、マゴルダグニアを思いきり振り抜きました。
剣の腹がドワーフの悪党の頭を叩きます。
鈍い音がして悪党は気絶し、そのまま倒れました。
その瞬間、通路から二人のドワーフたちが戻ってきました。
モリエルはバリンを引っ張ってこの場を離れます。

後ろからは罵声を浴びせながら悪党たちが追いかけてきます。
モリエルはその長い脚でぐんぐんと走り続けます。
野伏の足の速さには着いていけず、ついにドワーフたちは追跡を諦めました。

追手が来ないことを確認すると、モリエルとバリンはしばし休憩を取りました。
そうして息を整えた後、鉱山の出口に向かって歩き始めました。
無事に鉱山から出た二人は、モリエルの愛馬と合流して裂け谷へと向かいます。

帰りの道中、バリンがなぜ霧ふり山脈にいたのかを話してくれました。
「私を助けるため、その身に降りかかる危険を厭わず単身乗り込んできてくれた君だけに、特別に話そう」
バリンは一瞬躊躇いを見せましたが、思い切って打ち明けます。
「そう、私はモリアを探していたのだ」
バリンはそれだけ言うと黙ってしまいました。

その後は何事もなく裂け谷へ辿り着きました。
すぐにエルロンドの元へバリンを送ると、バリンとエルロンドはがっちりと握手をします。
そしてバリンはすぐに医務室へ連れていかれました。
バリンの治療が済むと、エルロンドはモリエルの所へやってきます。
「君の仲間たちは、君が任務に出ている間に裂け谷に集まり、そして私の息子たちとこの地を離れた。一足先にブリーで待っているとの言伝を預かっている。彼らに追いつくのなら急いで行くと良い」

モリエルはその言葉を聞いて、すぐに裂け谷を出発しました。
そして仲間から遅れること2週間、ついにブリー村の踊る小馬亭の扉を叩きました。
今夜の酒場は、モリエルの冒険譚で賑わうこととなるでしょう。

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