指輪物語TRPG 第1章『南方人の策略』第8回
前回に引き続き、ルールブックの設定から着想を得たオリジナルシナリオです。
前回の冒険はこちら
プレイヤー・ヒーロー
ウーナ(バルドの民の闘争者)
バルドの民の裕福な商人の娘。幼少の頃より、王の竜退治の物語を聞いて育った。大人になったウーナは必然的に戦士となり、商人たちの護衛として故郷から遠く離れた西の地までやってきた。商人たちは取引を終えて故郷へ帰っていったが、ウーナはふさわしき強敵と戦ってその実力を示したいという強い思いに駆られ、見知らぬ土地での冒険に挑戦する。
モリエル(北方の野伏の守護者)
若くしてエリアドールの民を守ることにすべてを費やしてきた。族長のアラゴルンは遍歴の旅として南方に下り、各地でサウロンの手先と戦っている。族長不在の今、より一層エリアドールの守備を固めなければいけない。モリエルは任務の合間にブリー村の踊る小馬亭に立ち寄り、各地から集まってくる情報を仕入れることにした。
アウストリ・ステイルアンブロット(ドゥリンの民のドワーフの探宝者)
アウストリは復活したエレボールで鍛冶や工芸の技を高めてきた。だが年月が経つにつれ、トーリン・オーケンシールドがそうしたように、失われたドワーフの宝をその手に取り戻したいという思いが強くなってきた。今こうしている間にも、父祖の宝が悪しき者どもに穢されているのは我慢ならない。アウストリは鎚を置き、斧を手に放浪の旅に身を投じた。
イムナチャール(荒地の国の森人の研究者)
トゥイディマールの子。リョバニオンの最北端に古くからいるアイルガルザ族の流れをくむ氏族に生まれた。
霧ふり山脈の反対側からエリアドールまで旅をしてきて、この地の文明の要となるブリー村に滞在している。そこでカンパニーと合流して共に冒険をすることになる。
厳しい土地で生きてきたためか狡猾で素早く、頭の回転が速い。
カレン(北方の野伏の伝令者)
旧アルノール王家の血を引くもの。カレン内親王。
直系王族はドゥーネダインの中でも西方の血がより強く発現し、高い能力を持つ。また野伏集団の中でも先陣に立つことを求められるため、元服前の少女であっても一人前の野伏である。その任務は主にエリアドール各地に散る野伏たちの伝令係であるが、家格の高さから各国宮廷への正式な使者としてたつこともある。
カレン(Calen)は幼名。成人後はアラノール(Aranor)と名乗る予定。
物語
ブリー郷の戦いのあと、
君たちはゆっくりと体を休め、傷を癒した。
やがてハルバラドが戻ってくると
サビアンから入手した情報をもとに
南連丘のオーク狩りが始まった。
奴らは荒地狼と手を組んでいたようだ。
荒地狼が掘った穴を煙で燻すと
荒地狼とオークたちが慌てて飛び出してきた。
いよいよオーク狩りだ――
荒地狼とオークたちが勢いよく突っ込んできました。
一行は手に手に武器を持ち、迎え討ちます。
イムナチャールの斧はオークに向かいますが、盾で防がれました。
モリエルはオークの首領が乗っている大柄な荒地狼を狙います。
鋭い一撃が黒い毛皮を切り裂き、深手を与えました。
アウストリはドワーフの鬨の声を上げ、オークたちの突撃の勢いを削ぎました。そして一頭の荒地狼に長柄斧を叩きつけます。
カレンは松明を振り回して荒地狼を遠ざけながら皆を鼓舞するものの、荒地狼たちの激しい吠え声によって、その声はかき消されてしまいました。
ウーナは別の荒地狼に大弓の狙いを定めます。素早い身のこなしをものともせず、強力な矢の一撃で荒地狼の急所を貫いて倒しました。
乗っていたオークは投げ出され、慌てて立ち上がって武器を拾います。
オークと荒地狼は人馬一体となって見事な連携を取り、一行を翻弄します。
オークの反撃がイムナチャールを苦しめます。かろうじて荒地狼の鋭い牙からは逃れました。
オークの首領は耳障りで恐ろしい叫びをあげ、ドワーフの鬨の声に怯んでいたオークたちの士気をあげます。モリエルは首領の攻撃を防ぎ、荒地狼の噛みつきも避けましたが、鋭い爪によって急所を抉られました。幸い鎧によって致命傷は免れましたが、血が滴り落ちます。
アウストリは荒地狼の攻撃に気を取られ、頭上から振り下ろされたオークの曲剣をまともに食らい、重傷を負います。
一行は次々と負傷し、頑強なドワーフのアウストリはすでに息が乱れています。
一行は陣形を組み替え、イムナチャールが後ろに下がると同時にカレンが最前線に躍り出ました。
カレンは皆を励まし、ここぞとばかりに長剣を振るい、荒地狼を一撃のもとに屠ります。
モリエルは松明の炎と先祖伝来の魔剣によって、首領の荒地狼を着実に弱らせていきます。
アウストリの怒りの一撃は荒地狼の首を落としました。
ウーナは乱戦の中、正確無比に矢を放ちます。その矢はモリエルを掠り、対峙していた首領の荒地狼の心臓に突き刺さりました。
首領はもんどりうって地面に落ち、態勢を立て直しながらウーナをにらみつけます。
イムナチャールは自らを盾にして、そんなウーナを守ります。
しかし、オークの反撃で怯んだところで、荒地狼は大跳躍をしてイムナチャールを飛び越しました。そしてそのままウーナに噛みつきます。
アウストリ、カレンもオークの攻撃で傷ついていきます。
イムナチャールは再び攻撃に転じ、ウーナを襲った荒地狼にまたがっているオークを斧で斬り伏せました。
モリエルは態勢を立て直している首領に突撃し、恐ろしい一撃で首領の首をはね飛ばしました。
オークと荒地狼は浮足立ちます。
その隙を逃さず、アウストリも目の前のオークの首をはね、カレンは別のオークに重い長剣の一撃を与えます。
形勢は逆転し、今や一行の前には二人のオークと一頭の荒地狼が残っているだけでした。
周りでは、まだ野伏たちとオーク・荒地狼たちが激しい戦いを繰り広げています。
突如強い風が吹いて気温がぐっと下がりました、
そして、急に濃い霧が立ち込めてきます。
不自然に発生した霧は瞬く間に戦いを覆い、周囲の状況は一変しました。
今や野伏たちの姿は薄っすらとした影でしかなく、戦いの喧騒もくぐもって聞こえます。
霧の中にいる者は不自然な寒気を感じ、見通すことのできぬ霧の中から誰かに見られているような視線と恐怖感を感じ始めます。
荒地狼たちは本能に従って逃げ出し始めました。オークも後に続きます。
野伏たちは彼らを追って、見えなくなってしまいました。
一行も野伏の後に続こうとしたその時です。
不意に、どこからともなく塚人が現れました。
どうやらこの霧は塚山丘陵から流れてきたようです。
塚人は一行の前に立ちはだかり、凍るような視線でにらみつけてきます。一行はたまらず視線を逸らします。
一行は、塚人と戦う理由がないこと、傷を負っているこの状況での戦闘は厳しいと判断し、オークたちの追跡を野伏たちに任せて撤退しました。
こうして、南連丘でのオーク狩りは思わぬ邪魔者が入ったものの、（戦いで死んだにしろ野伏の追跡で死んだにしろ）ほとんどのオークと荒地狼は刃と矢で倒れ、僅かに生き残ったものもエリアドールを後にして暗い山の底へ逃げかえり、二度とこの地を踏むことはないのでした。