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指輪物語TRPG 第2章『太古より目覚めしもの』第5回

前回に引き続きオリジナルシナリオです。

※『失われた王国の遺跡』のマップ及び設定を一部使用しております。多少のネタバレを含みますのでご注意ください。
物語の大筋はオリジナルです。

前回の冒険はこちら


プレイヤー・ヒーロー

ウーナ(バルドの民の闘争者)
バルドの民の裕福な商人の娘。幼少の頃より、王の竜退治の物語を聞いて育った。大人になったウーナは必然的に戦士となり、商人たちの護衛として故郷から遠く離れた西の地までやってきた。商人たちは取引を終えて故郷へ帰っていったが、ウーナはふさわしき強敵と戦ってその実力を示したいという強い思いに駆られ、見知らぬ土地での冒険に挑戦する。

モリエル(北方の野伏の守護者)
若くしてエリアドールの民を守ることにすべてを費やしてきた。族長のアラゴルンは遍歴の旅として南方に下り、各地でサウロンの手先と戦っている。族長不在の今、より一層エリアドールの守備を固めなければいけない。モリエルは任務の合間にブリー村の踊る小馬亭に立ち寄り、各地から集まってくる情報を仕入れることにした。

アウストリ・ステイルアンブロット(ドゥリンの民のドワーフの探宝者)
アウストリは復活したエレボールで鍛冶や工芸の技を高めてきた。だが年月が経つにつれ、トーリン・オーケンシールドがそうしたように、失われたドワーフの宝をその手に取り戻したいという思いが強くなってきた。今こうしている間にも、父祖の宝が悪しき者どもに穢されているのは我慢ならない。アウストリは鎚を置き、斧を手に放浪の旅に身を投じた。

イムナチャール(荒地の国の森人の研究者)
トゥイディマールの子。リョバニオンの最北端に古くからいるアイルガルザ族の流れをくむ氏族に生まれた。
霧ふり山脈の反対側からエリアドールまで旅をしてきて、この地の文明の要となるブリー村に滞在している。そこでカンパニーと合流して共に冒険をすることになる。
厳しい土地で生きてきたためか狡猾で素早く、頭の回転が速い。

カレン(北方の野伏の伝令者)
旧アルノール王家の血を引くもの。カレン内親王。
直系王族はドゥーネダインの中でも西方の血がより強く発現し、高い能力を持つ。また野伏集団の中でも先陣に立つことを求められるため、元服前の少女であっても一人前の野伏である。その任務は主にエリアドール各地に散る野伏たちの伝令係であるが、家格の高さから各国宮廷への正式な使者としてたつこともある。
カレン(Calen)は幼名。成人後はアラノール(Aranor)と名乗る予定。

物語

君たちはバリン率いるドワーフ部隊と共に
古いドワーフの鉱山へ向かった。
入り口にはオークの群れが陣を敷いていたが、難なく撃破する。
しかし、日光を憎悪する彼らが鉱山に入らず屋外にいたのはおかしい。
君たちの憶測は正しかった。
暗闇の中、謎の痕跡が次々と発見される。
そして君たちが対峙したものとは――

半ば水浸しの自然洞窟の中、一行は見上げるほど大きな大蛇と対峙していました。
迫り来る大蛇に対し、一行は弓を引きます。
次々と鱗の隙間に矢と槍が突き刺さりました。
大蛇は痛みに身を震わせながら、滑るように近づいてきます。
アウストリはドワーフの土地を荒らすものに激怒し、雄たけびを上げながら長柄斧を振り回して鱗を割りました。
モリエルはアウストリに続き、素早く斬りかかって割れた鱗の下の肉を切り裂きます。
カレンは皆を鼓舞して士気を高めます。
イムナチャールは怯える猟犬ウルフに喝を入れ、後方から強烈な矢の一撃をお見舞いしました。
ウーナは的確に大蛇の顔を狙って矢を放ちます。
残念ながら分厚い鱗に阻まれましたが、着実に傷を負わせています。

太古の存在との遭遇

大蛇は興奮して分泌液を出しました。
それはとてつもない悪臭で、接近して戦っていた3人は思わずむせてしまいます。
さらに、太古より生き永らえし恐ろしい存在を前にして、一行はまさに蛇に睨まれた蛙のように恐怖によって金縛りにあいます。
イムナチャールと相棒のウルフは、これほどの存在を前に完全に戦意を喪失しました。
カレンとモリエルは、さすがにエリアドールを守ってきた野伏たちだけあって、完全に恐怖に飲み込まれることはなかったものの、最初の勢いはなくなってしまいました。

アウストリとウーナだけが、その恐怖を完全に克服しました。
アウストリはドワーフの土地を穢された怒りの力で恐怖を押さえつけ、果敢に向かっていきます。
ウーナは、幼いころより竜殺しのバルド王の伝説を聞いて育ったため、強敵と戦う高揚感が恐怖を上回りました。その目は輝き、美しい顔に似合わぬ大胆不敵な笑みを浮かべて大弓をきりきりと引き絞ります。

そこへ大蛇が神速の速さで襲い掛かりました。
瞬く間にアウストリとモリエルは毒牙にかかります。
2人とも咄嗟に体を丸めて致命傷を避けることしかできませんでした。
豊富な戦いの経験と勘がなければ、とても反応できなかったでしょう。
2人は毒牙から逃れ、ごろごろと瓦礫の上を転がりました。

さらにカレンに巨大な尾が迫ります。
カレンは一瞬の間に衝撃に備えて体を丸めました。
激しい衝撃と共にカレンは吹き飛ばされ、壁に叩きつけられます。
カレンの肺からは全ての空気が抜け、数秒間呼吸ができなくなりました。

3人は激痛に耐えながら立ち上がり、次の攻撃に備えます。
そこへ後衛の2人が矢を射かけます。
恐怖に飲み込まれたイムナチャールの矢は鱗に弾かれます。
しかし、大蛇の隙をずっと狙っていたウーナは、ここぞとばかりに矢を放ちます。
洞窟にアーチェトの狩猟弓の弓弦の音が鳴り響き、矢は過たずに急所へ吸い込まれていきました。
大蛇は苦痛の叫びを上げました。洞窟は震え、ぱらぱらと小石が落ちてきます。

大蛇は怒り狂っていました。これほどちっぽけな存在に、ここ数千年感じたことのない苦痛を与えられたのですから。
それと同時に、この時代にこれほどの英雄がまだ存在していたのかと、小さな恐怖のともし火が心に宿りました。
大蛇はその邪悪に満ちた眼で英雄たちを一人一人睨みつけ、しっかりと記憶に刻み込みました。特に、恐怖の影を微塵も見せずらんらんと輝く目で見据えてくる人間の小娘を。
そして身を翻し、洞窟の奥の凍るように冷たい水の中に飛び込み、姿を消しました。

洞窟に静寂が訪れました。
一行は、大蛇が本当に去ったのかを念入りに確認します。
ようやく、本当に大蛇が戻ってくるつもりがないとわかった時には、緊張が解け疲労と痛みが全身にのしかかってきました。
一行はこの洞窟で傷を癒し、休息を取りました。
あまりの激戦に、戦いに参加できずにいたドワーフたちが一行を労います。

この洞窟には大蛇の犠牲となったものたちの残骸がありました。
その多くは鹿などの野生動物でしたが、北方王国時代の武具の残骸も含まれています。
北方王国最後の王とその従者が逃げ込んだという噂の信憑性は、いよいよ増してきました。
犠牲者の山の上には、オークたちの新鮮な死体もたくさん転がっていました。

一行は痛む足を引きずりながら鉱山の探索を再開します。
疲労と負傷によって足取りが重い一行を、アウストリが力強く先導していきます。
崩落の危険個所を見極め、足を滑らせたウーナを支え、時に皆を励ましながら進んでいきました。

そして到着したのは、石塚がある小部屋でした。壁にはルーン文字が刻まれており、どうやら大蛇との戦いで命を落とした騎士が葬られているようでした。
モリエル指揮の下、石の扱いに長けたドワーフたちが慎重に石をどかしていきます。
中から現れたのは、ぼろぼろの武具を見に纏った騎士の亡骸でした。
しかし、騎士が手に持つ剣だけは、長い年月の影響を受けていないように見えました。

カレンだけは、剣の装飾からこれが北方王国時代の遺物であることに気が付きます。
思わず手に取ったカレンは、剣がぶるぶると震えるような錯覚に陥りました。
カレンは突然、大蛇への激しい憎悪の感情が沸き起こったことに気が付きます。
そして、かの邪悪な存在を倒さねばならぬのだと、不意に悟りました。

周りで見ていた者たちは、カレンが剣をその手にし、微動だにせず剣を見つめていたかと思うと、突然決意を固めた顔になったことに驚きました。
先ほどまでの疲れ切った表情とは違い、新たな活力に満ち溢れています。

そうして今はなきヌーメノールの高度な技術で作られた剣を手に入れた一行は、オーク狩りを再開します。
鉱山は迷路のように複雑に入り組んだ地形の上、長年放棄されていて非常に危険な探索行となりました。
イムナチャールは、今までの冒険で手に入れたカルドランの鏡を取り出して、覗き込みます。
鏡は鉱山の道を映し、正しい方向を定めることができましたが、イムナチャールが鏡をしまう直前、炎に縁どられたまぶたのない目が一瞬だけよぎりました。
しかし、それに気づく人は誰一人としていませんでした。

やがて、北の鉱山に続く一本の長い通路に到着しました。
この先には、一体どんな脅威が待っているのでしょうか――

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