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指輪物語TRPG 第2章『太古より目覚めしもの』第9回
前回に引き続きオリジナルシナリオです。
※『失われた王国の遺跡』の設定を一部使用しております。多少のネタバレを含みますのでご注意ください。
物語の大筋はオリジナルです。
前回の冒険はこちら
プレイヤー・ヒーロー
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ウーナ(バルドの民の闘争者)
バルドの民の裕福な商人の娘。幼少の頃より、王の竜退治の物語を聞いて育った。大人になったウーナは必然的に戦士となり、商人たちの護衛として故郷から遠く離れた西の地までやってきた。商人たちは取引を終えて故郷へ帰っていったが、ウーナはふさわしき強敵と戦ってその実力を示したいという強い思いに駆られ、見知らぬ土地での冒険に挑戦する。
モリエル(北方の野伏の守護者)
若くしてエリアドールの民を守ることにすべてを費やしてきた。族長のアラゴルンは遍歴の旅として南方に下り、各地でサウロンの手先と戦っている。族長不在の今、より一層エリアドールの守備を固めなければいけない。モリエルは任務の合間にブリー村の踊る小馬亭に立ち寄り、各地から集まってくる情報を仕入れることにした。
アウストリ・ステイルアンブロット(ドゥリンの民のドワーフの探宝者)
アウストリは復活したエレボールで鍛冶や工芸の技を高めてきた。だが年月が経つにつれ、トーリン・オーケンシールドがそうしたように、失われたドワーフの宝をその手に取り戻したいという思いが強くなってきた。今こうしている間にも、父祖の宝が悪しき者どもに穢されているのは我慢ならない。アウストリは鎚を置き、斧を手に放浪の旅に身を投じた。
イムナチャール(荒地の国の森人の研究者)
トゥイディマールの子。リョバニオンの最北端に古くからいるアイルガルザ族の流れをくむ氏族に生まれた。
霧ふり山脈の反対側からエリアドールまで旅をしてきて、この地の文明の要となるブリー村に滞在している。そこでカンパニーと合流して共に冒険をすることになる。
厳しい土地で生きてきたためか狡猾で素早く、頭の回転が速い。
カレン(北方の野伏の伝令者)
旧アルノール王家の血を引くもの。カレン内親王。
直系王族はドゥーネダインの中でも西方の血がより強く発現し、高い能力を持つ。また野伏集団の中でも先陣に立つことを求められるため、元服前の少女であっても一人前の野伏である。その任務は主にエリアドール各地に散る野伏たちの伝令係であるが、家格の高さから各国宮廷への正式な使者としてたつこともある。
カレン(Calen)は幼名。成人後はアラノール(Aranor)と名乗る予定。
物語
君たちが白の塔を離れようとした時、
ゴンドール人を名乗る男が現れた。
キルゾールは見る石の使用許可を主張したが、
ブラスウェンは頑なに応じない。
君たちは一度出直すように説得したが、
彼は邪悪な本性を現し、
捨て台詞を吐いて去っていった。
君たちは気を取り直し、
港のガルドールと共に裂け谷へ出発する。
やがて果野橋に差し掛かった時、
キルゾールがごろつきを率いて現れた。
橋を渡っている君たちを挟み討ちにするつもりだ。
文明地の果てで、激しい戦いが幕を開けた――
果野橋での待ち伏せは、一行の倍以上の人数がいたにも関わらず、すでに英雄たちに形勢が傾いています。立っているごろつきはもう半分もいません。
カレンはアルノール古王国の騎士の剣でごろつきの槍を叩き斬り、柄で顔面を強打しました。ごろつきは悲鳴を上げて顔を抑えうずくまりました。
モリエルはキルゾールの小剣を弾き飛ばし、みぞおちに柄の一撃を入れます。命を奪う目的ではないとはいえ、あまりの衝撃にキルゾールはううっと呻き、呼吸もままならないまま口から血を吐いて気絶しました。
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橋の後方ではアウストリが斧の側面でごろつきを強打します。骨が砕ける音が響き、彼はもんどりうって倒れました。
イムナチャールは目の前のごろつきに斧を振るいますが、ウルフの容体が心配で仕方ありません。その攻撃は精彩を欠いており、さっとかわされてしまいました。
そこへアーチェトの狩猟弓に持ち替えたウーナの矢が飛んできます。矢はイムナチャールに迫るごろつきの肩に突き刺さりました。
そしてウーナは降伏勧告をします。
誰一人として死んだ者はいませんでしたが、そこかしこでうめき声や悲鳴が溢れ、もはや襲撃者たちの中で戦える者は残っていませんでした。
最後の一人も周りを見回し、武器を捨てて降伏しました。
「俺たちは金で雇われただけだ。あんたらに恨みはないんだよ、なあ命だけは助けてくれ」
一行はそんなごろつき達の武器を奪い、橋を越えた先の大木に縄で縛りつけました。
そしてカレンが狼煙を上げます。この辺りには野伏の隠れ里があるので、緊急の知らせを受けた野伏がいずれやってくるでしょう。
一行はキルゾールが目を覚ます間に休憩を取ります。
イムナチャールは秘伝の塗り薬と卓越した癒しの術をもって相棒のウルフの傷を癒していきます。
さすがに槍の一撃を受けただけあってすぐに元通りという訳ではありませんでしたが、普通に動けるほどまでは回復しました。
さて、休憩が終わってもなお、モリエルの一撃が重すぎたせいか、キルゾールの意識は戻りませんでした。
そこでまずアウストリがドワーフの荒療治を試します。
それでも目を覚まさなかったので、カレンが治療を交代しました。
ようやく意識を取り戻したキルゾールは、せき込みながら上体を起こします。
その瞬間、ウーナが角笛を力いっぱい吹き鳴らしました。角笛の音は渓谷に響き渡って反響し、にびしろ川の音をかき消すほどでした。
血塗られた由来を持つリュダウルの角笛は、かつて吹き鳴らされた地で再び鳴らされ、その音に混じって過去の裏切りの戦音が聞こえるのでした。
キルゾールの顔からは血の気が引き、顔面蒼白となってウーナを見上げました。
ウーナはキルゾールに問います、何者で、何のためにここへ来たのか、と。
キルゾールは完全に圧倒され、逆らわずに答えます。
キルゾールの話はこうでした。
彼はゴンドール人などではなく、偉大なる御目に仕える黒きヌーメノール人でした。
上官の命令で、サウロンの敵が集う裂け谷を探していたのです。
白の塔へ行ったのは、見る石で裂け谷の場所を探ろうとしていたからでした。
しかし、白の塔では管理者に何度も追い返されてしまいました。そんな折、白の塔で裂け谷へ向かう一行に出会ったのです。
第一紀から生きているエルフを相手にするよりは、はるかに簡単な獲物が目の前に現れたのです。
この機会を逃すわけにはいかないと、先回りしてごろつき達を金で雇い、この果野橋で待ち伏せをしたというわけでした。
「簡単な仕事だと思ったのによ、お前たち強すぎるぞ。こっちはお前たちの2倍もいたんだぞ!」
そうぼやくキルゾールを立ち上がらせ、一行は旅路を再開します。
野伏たちの到着を待っている時間はないため、一行はキルゾールだけを連れて先へ急ぎます。
野伏たちが後を追ってこられるように、カレンは野伏にだけ分かる印を狼煙の場所から定期的に残していきます。
そうして数日が立った頃でした。
フード付きのマントを羽織った数人の野伏が森の中から音もなく現れ、カレンとモリエルの前にやってきます。皆一様に背が高く、手には弓を持ち、長い剣を腰にぶら下げていました。
「何があった?緊急事態か?」
野伏たちは余計なことは話さずに、単刀直入に切り出します。
カレンがこれまでのいきさつを話し、黒きヌーメノール人の捕虜を引き取って欲しいとお願いしました。
野伏たちは二つ返事で引き受け、捕虜を連れて忽然と森の中へ姿を消しました。
一行は再び裂け谷へ向かいます。
彼らが今いるのは、トロルの森と呼ばれる恐ろしい土地でした。
街道はすでに半ば土に埋もれ、時には完全に見失ってしまうほどでした。
小暗い森の中を迷わずに進むには、熟練の探検家が必要です。
そこでアウストリが先頭に立ちました。
旅慣れたドワーフは、ドワーフ製のランタンで足元を照らし、街道の僅かな痕跡も逃さず進んでいきます。
そうして歩くこと数日、アウストリの先導が正しかったことが分かりました。
景色は一変し、一行は陰鬱な森から湿原へと踏み込んでいました。
霧ふり山脈は目の前に悠然と聳え、上の方はすでに雪で白く染まっています。
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「ここからは私の番だね」
港のガルドールは、軽やかな足取りで一行を先導していきます。
というのも、裂け谷は魔法によって守られ、招かれざる訪問者の進路をそらすからでした。
ガルドールはキールダンの名代として何度も裂け谷を訪れているので、谷への道筋をよく知っていました。
そうして一行は、一介の旅人が立ち入ることのできぬ地に足を踏み入れたのでした。
深い谷底へと通じる道を下り、ブルイネン川にかかる橋を渡ると、一人の若いエルフが見張り塔から降りてきます。
ガルドールとエルフ語でしばらく談笑した後、一行にも挨拶の言葉をかけました。
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彼の案内で宿泊所まで行った一行は、荷物を下ろし早速浴場へと向かいます。
一行は湯あみをして旅の汚れを落とし、気分良く自分たちの部屋へ戻ってきました。
そこには出来立ての食事が用意されており、心ゆくまで食べ、眠くなったらふかふかのベッドで寝ました。
この厳しい土地において、これほど安心して休める場所は他にありません。
一行は夢を見ることもなく深い眠りに落ちていきました。
心身ともに癒されたのは、人間やドワーフたちだけではありませんでした。
馬たちは厩舎に連れていかれ、それは丁寧な扱いを受けました。
埃を落とし、ブラッシングされ、毛並みはつやつやと輝きます。
しばらくして旅の疲れが取れた頃、エルロンドの使いの者がやってきました。
彼についていくと、裂け谷の主が住まう最後の憩い館へ案内されます。
そこにはガルドールと話をしているエルロンド卿がいました。
「ようこそ、ブリー郷の英雄たち。遠路はるばるよくこの地まで参った」
一行も挨拶を返し、白の塔で出会った女性から託されたサルマンからの手紙を渡します。
エルロンドは感謝の言葉を述べ手紙を受け取って開き、中の文字に目を通します。
「確かに、これは預かった。して、そなたたちの話を聞かせてくれないか」そうして、一行は青の山脈で目覚めた大いなる悪の話をしました。
また、白の塔の図書館で見つけた本によれば、その大蛇についての情報が記された羊皮紙がエルロンドの個人的な書庫にあるという話もしました。
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エルロンドは探してみようと引き受けてくれました。
「ただし、探すには時間がかかるだろう。なにせ私の書庫は数千年にも及ぶ文書が山のように積まれているのだから。春が訪れた頃、再び私のもとを訪ねなさい」
一行は、エルロンドに深く感謝し、広間を後にしました。
その後、街道が完全に雪に閉ざされる前に、ある者は自分の故郷へと帰り、またある者は、この裂け谷の地で心身ともに疲れを癒しました。
こうして、第三紀2966年は終わりを迎え、新たなる年が始まるのでした――
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