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2000スキ記念式典! 分冊でお届け(6)

【あわせて読みたい:これは付録付き一話完結連作短編集『大人の領分』の完結記念&こんにちは世界アカウント2000スキ記念エッセイの続きです。大人な人々の大人たる所以、沈黙の中で世間は回っています  ほか】

(1)開会    (2)薫・ユキ
(3)茅瀬・蓮    (4)敦・佳奈
(5)澪里・詢 


5番ブース   晴人・梨恵


≫≫≫   梨恵が聴いている音声(晴人について話す梨恵)   ≫≫≫

梨恵:晴人とのエッチがどんな感じか…?!   ちょっと直接的過ぎない、それ? あ、裏話に…? えー。もちろん、すごく楽しいよ。か、っっこいいぃぃーもん。男の人って、あんまりそういう人いないでしょ。まあ…性ってそういうところあるのかな? 女の人はそういう目では私、見ないから、みんな可愛くしてて、みんな可愛く見えるけど、男の人に聞くと「どこかに可愛い女の子いないかなー」って言うよね。あれ、こんな感じなのかな、あーいない。ない。アウト。アウト。アウト。って、感じ。だいたいの男の人ってどこかしら歪んでるっていうか…かっこいいって言っても、うっすらキモチ悪かったりバランス悪かったりイビツだったりして、あと一歩二歩「かっこいい」には足りないし…奢ってるわけじゃないんだよだけど…私、釣り合い取れる人とエッチできるってなかなかなくて、だいたい向こうが…なんていうか、罪悪感っていうか劣等感っていうか、感じてて、妙な雰囲気になっちゃうのね。この問題、深刻なの。絶対に埋められない謎の距離があるし、別れる時もあっさりしてて、みんな、やっぱり現実に戻るよ、みたいなこと言う…。晴人はそういう距離が全然なかったっていうか、私のほうからこんなに自然に、かっこいいな、好きだなって思うの、初めてで…「ま、仕方ないよね」って、ね、見ないふりするところ全然ないって、ストレスフリなんだなーって思った。いちいち見つけて褒めなくても、目に付いたところが全部、好き。って、素直でいれて、いいなって。そんな男の子とのエッチだもん、そりゃ素敵だよー。…うーん…でもね…? あのねエッチが、楽しいってだけじゃ、ないよ? 晴人、いっぱい、いいとこあるよ…? 可愛いし、可愛いし、可愛いし、かっこいいし、誠実だし、気が利くし、なんでもすぐ覚えちゃうし、すすっと、いつのまにか細かい仕事済ませてるし、成功例にこだわらないっていうか、パターンに頼らないし。エッチだって、かっこいい男の子とエッチするって楽しみとは別に、晴人が私のこと、好きだって思ってくれるのが伝わる瞬間がたくさんあって、それがいちばん、私には、素敵な思い出になったよ。だんだんわかってきたのね、晴人って…すごく、繊細な人なの。白黒はっきりしてるみたいに見えて、実はものすごく奥ゆかしくて、気持ちが安らぐために色々なハードル越えなきゃいけないんだよ。だから私ね、晴人が私のこと躊躇いなく好きでいてくれて…晴人が、私のことそんなふうに安心して好きでいてくれるの、すごく、嬉しかった。それで、あ、いま、晴人が私のこと、もっと好きって思ってくれたって、それでどんどん、ああ私も、好きだなって、大好きだなって、思うようになって、で、…だから…すごく、つらかった。エッチの時もね。すごく嬉しくて、それがすごく、つらかったよ。…現実に戻らなきゃって言ってた人たちも、そうだったんだとしたら…私、あの人たちが感じてた寂しさを知らずに、自分だけが幸せな恋愛しちゃってたんだなって思うし…それって、ちゃんとした恋愛だったのかなとも、思う…。結局、誰かにしたことって、自分に返ってくるんだね。


≫≫≫   晴人が聴いている音声(梨恵ついて話す晴人)   ≫≫≫

晴人:………。企画なら、乗らなくもないけど…俺はそういうことは、個人の心の中にしまっておくことだと思う。それだけは、はっきり言わせてほしい。で…? 梨恵? …困ってるよ。梨恵以外の女が女に見えないから…例えば俺は男は対象外なんだけど、そんな感じで、人としてどうとか審美的にどうとかは幾らでもあるけど、性ってラインを超えない。脱いで、どう?とか言われても、ああおっぱいだね、って感じで、何にも気持ちが湧かないんだよ。美しくないよりは美しいほうがいいだろうけど、そう思ったあと、もう何も、することない。なんにもないんだ。この先、他の誰かのこと好きになるのか不安だし、好きになった時に梨恵より好きだとしたらそれも、今の自分を否定してるみたいで、嫌だ。困ってる。…え? いまの話じゃなくて…? …。…。こういう…表現は、したくねーんだけど…梨恵の中に比べたら、それまでの女の子二人、ただの筒。人間の体ってこんなに気持ちいいんだって、思ったよ。こういうの知らないであの女子この女子言ってる奴らはもう、俺とは違う人種だって思った。…たださ、セックスって、精神論的な部分が結構、あるでしょ。好きな子とやるって全然違うわー、とか好きな子がこんなことしてくれてるわー、とかいう、こっちの気持ちだけの話じゃなくて。梨恵としてて俺、型通りにやるんじゃ、する意味なくて、相手のこと、知ったり感じたりするから喜びがあるとか…気持ちが通じてればどっちが気持ちよくたって気持ちいいんだとか、腰振ってばっかじゃなくて俺だって、自分の好きなように感じる時あってもいいんだとか、…そういう、セックスはお互いへのサービスじゃないっていうこと、わかったんだよね。俺、…気持ちって、体と体で伝え合えるんだって、わかったの。…わかった、気がしたんだよ、畜生。



続きます。


みんなは、ここに:


今日は明日、昨日になります。 パンではなく薔薇をたべます。 血ではなく、蜜をささげます。