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モードとSAGYOの現在地


この記事は、2019年9月にSAGYOメンバーの岩崎が個人アカウントに書いたものを転載しています。

先日、WWD JAPANというファッション業界誌のWEB版に、私が共同運営している野良着メーカーSAGYOが少し取り上げられました。

京都精華大学の蘆田先生が「2019年のモードを体現」してるブランドのひとつとして挙げて下さったのです。

WWD:そういった意味では、蘆田さんが考える2019年現在のモードを体現しているクリエイターは誰ですか?

蘆田: 現在のファッションビジネスのサイクルをどう書き換えていくか、システムをどう作り変えていくかを考えられる人たちが新しいと考えると、「フーフー(FOUFOU)」や村田明子さんの「MAデザビエ(MA DESHABILLE)」「サギョウ(SAGYO)」が挙げられます

SAGYOは、グラフィックデザイン分野からアパレル業界に入り込んでしまった岩崎と、農家であり文筆家である伊藤、根っからのWEB業界人長山の3人で、借り入れ無しの自己資金運営をしております。


全員ファッションビジネスのことをよく知らぬまま、「なぜ半年に1回のハイペースで新作を発表しないといけないのか」とか「なぜ卸の掛け率は6掛けが相場なのか」など、誰に聞いても正確な答えがわからないものを避けていった結果、独特のスタンスを取ることになりました。

SAGYOの特徴はざっくり4つあります。

・新商品の発表よりも定番品を随時アップグレードすることを優先する


SAGYOの野良着の軸足はあくまで「作業着」にあります。

おしゃれ着ではないので、トレンドは取り入れていません。年2回も新商品を出す必然性が無いので、新商品の登場は1年で1型あるかないかです。

ファッションブランドに比べるとラインナップは少ないですが、全てが渾身の一型です。お客さんの声や、実際自分たちが使用して感じたことをすぐに共有し、早くて次回、遅くても次々回の再生産時にはパターンを修正して、常に、その時自分達が一番いいと思える仕様を販売出来る様心がけています。

ちなみに、新商品のこちら。

商品説明の一番下に「Lot 3:2018.11 ベルトループを追加」と書いています。

これを見ると、この商品が2018年11月に3回目の修正をしたパターンで制作されていることと、修正内容がわかるようになっています。

・見切り反を使ったつくり切り&売り切り

作業着として使って頂ける価格、商品のクオリティと生産オペレーションのしやすさ。3つのバランスを取ろうとすると、必然的に使う生地の選択肢は「見切り反(通常の価格より安く手に入る、売れ残りや使い残しの生地)」になります。残った生地というだけで品質は全く問題ありません。

残った生地はコンテナにぎゅうぎゅう詰めにされて二束三文でアジアに出ていったり、産業廃棄物として焼却されたりしますから、逆に「そういう生地こそ優先的に使わねば!」という使命すら感じています。

私達としても発注ロットが無い分、いろんな生地を使うことが出来るので助かります。
唯一「追加発注できない」というデメリットがあるのですが、私達は「出会ったその時しか買えないかもしれない」という宝探しのようなワクワク感を提供出来ているとポジティブに捉えています。


・オンラインストア+販売会での直売

今まで、自社商品を流通させるには自社店舗での直売か小売店に卸す方法が主流でした。

ですがご存知の通り、ここ20年ほどで私達のような小規模事業者でも簡単に商品を販売出来る仕組みがたくさん出来ました。

メンバーにもWEBに詳しい者がいますし、自然な流れでオンラインストアをメイン売場としました。

ECだけでもよかったのですが、「試着してから検討したい」というお客様はいつの時代も一定数おられますし、ありがたくもご依頼を最初から頂けた経緯があり、これまた自然な流れで試着販売会(POP UP)をすることになりました。

POP UPは個人商店から美術館、蔦屋家電まで、SAGYOのコンセプトに共感頂いたご担当者様からお声掛け頂き、毎月数件同時開催出来ています。


・販売パートナー制度

ありがたいことに毎月日本のどこかでPOP UPを開催出来ていますが、どうしても都会に集中しがちなところがあります。

本来であれば、本当に野良着を必要としてくれている人が多く住んでそうな場所で販売会を開くのが筋ですが、SAGYOメンバーには本業があり、システム構築(長山担当)とブランドディレクション(伊藤担当)以外の雑務を全て担当している私には幼子が居る為、日本各地を飛び回れません。

そこで、「販売パートナー制度」をつくり、初心者の方でもSAGYOのことが好きであればどんな場所でも身ひとつで販売会を開くことが出来るような仕組み作りをしました。

(具体的には、備品の無償貸し出しはもちろん、接客しなくて済むよう下げ札に商品説明を3か国語で書いたり、袋は何度開け閉めしても再利用できるチャック袋を採用したり…細かいですが。)

この試みは、2020年から本格的に始動させようと現在準備中です。

その他実験的に、カフェの一角を借りて試着だけが出来るイベントを長期開催したりもしています。

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蘆田先生とは面識が無いので推測にはなりますが、おそらく上記のような「アパレルのセオリー」みたいなのを無視したやり方が、先生的に「2019年のモードや!」と思われたのかもしれません。

(ちなみに、アパレルのセオリーを避けた理由としては、「なぜそうなってるのか調べてもわからない」とか、「昔からそう決まってる」みたいな曖昧な感じが時代と合わない気がして気持ち悪かったから、です。)

私は不勉強故ファッション史学はめっぽう疎いので、この記事を読んでも自分の言葉でモードとは何か、まだ説明できません…。でも、記事を読む限り「モードを体現」しているのであろう私達に期待して下さっていることは分かります。素直にうれしいです。


先にも書いた通り私達は3人それぞれ本業があり、SAGYOを立ち上げる時、「本業(クライアントワーク)では出来ない実験をやっていく場所にしよう」と決めました。

手探りで進んでいる分、トライアル&エラーの数が毎分レベルで半端ないのですが(だから大変です…手間も資金面も。)この記事のおかげでSAGYOがこれからやるべきことや変えてはならない点、変えなければならない点など、再考することが出来ました。

日々取捨選択し、少しずつ形を変えていきながら、SAGYOのある風景を日本各地に増やすべく、邁進していく所存です。


他者から思いがけない評価を頂くということがどれだけ肥やしになるか、心に沁みた1日でした。蘆田先生、ありがとうございました。


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