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欠ける
昼食を済ませた人であふれている街中のガラスに映ったわたしのからだが穴だらけである。
顔にも腕にも腹にも膝にも、全身に大きな穴が幾つもあいていて(もちろん服にも穴があいている)、後ろの景色が見えている。
いつからだろう。
朝起きたときは?
あいていたような気もするが、はっきりしない。
ひょっとしたら昨日からかもしれないし、一年前、ひょっとしたら十数年も前からかもしれなかったが、頭のなかがぼんやりしていてどうにも思い出せない。
ただ、いつのまにか、わたしの大半がかけていたのだ。
わたしの前を通りすぎたり、追い抜いていく人はちらりともわたしに目を向けていかない。
奇妙な現象が身に起きていることを教えてくれる人も、心配する人も、気にする人もいないのだ。
淋しくなってぽたりと流れる涙の粒にも穴があいているのが見えた。