絨毯
丸められて捨てられているゴミ集積所で、最後に何を思うのか絨毯が考えているが、何もなかった。
太陽が少し傾きかけた頃に、ぼんやりと昔のことが浮かんできて、嗚呼、わたしは人間だったなあと一言つぶやいた。
女は二十歳を過ぎた頃から少しずつ横に広がり始めた。五年ほど経つと、今度は薄くにもなり始めた。横にも相変わらず広がり、厚みはどんどんどんどん薄くなったある日、立寄ったカフェで女は沈むように床に倒れると動かなくなった。元からあったものかのように、人はその上を横切り、時には立ち止まって泥を落としていった。女は全身に埃が染み付いていた。はたいても、拭いても、どうにもならなかった。離れていても、タバコと淀んだ空気と芳香剤の香りが混じった臭いがするようになったその日のうちに、彼女は集積所に置かれた。
夜がくる前にエンジン音を立てた車が来て、女を最後の場所へと運んで行った。
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