夏と青空とギターロック
8月。夏休みの真っただ中、課題を作るために学校へ向かう。
玄関のドアを開けると、うだるような熱とジメっとした湿気が体を包む。
思わず顔をしかめながら、庭に置いた自転車のロックを外す。
道路まで自転車を押し出て、ペダルに足を掛ける。少し走っただけで、汗が吹き出てくる。
背負ったリュックサックのせいで、風通しの悪い背中を汗が垂れるのを感じる。
その気持ち悪さに思わず、リュックサックを背中から下し、自転車のカゴに投げ入れる。
カッターシャツは既に汗で濡れている。
太陽は刺すように光線を注いでいる。
自転車を漕ぎながら、いろんなことを考える。
これから作る課題のこと、昨日見たテレビのこと、SNSで知り合った同世代の女の子のこと、友達の恋愛のこと。
頭の中に浮かんでは消えていく些細な考えや悩みが、なんの解決もしないまま、夏の空に飛んでいく。自分のことで精一杯なはずなのに、だれかのことばかり考えてしまうのはなぜだろう。
国道沿いを走り、ガードをくぐり抜け、まっすぐ自転車を走らせる。木陰を走ると、道に影で出来た模様が浮かんでいる。時折そよそよと吹く風が気持ちよい。
白い雲が、頭の上を流れていく。
バレたら学校の先生に叱られるけれど、イヤホンをつけて自転車を漕ぐ。
ウォークマンを操作すると、最近好きになったロックバンドの曲が流れてくる。
小さなイヤホンからあふれてくる音。
歪んでいるのに綺麗なギターの音。
小気味良くリズムを刻むドラムの音。
低音をうねるベースの音。
いつからこんなにも音楽が好きになったのだろう。夏にぴったりな歌詞が、今のシチュエーションに妙にマッチして、なんだかくすぐったくなる。
街の喧騒を抜けて、田んぼだらけの道に入る。
空を見上げるとコントラストの強い青空に、大きな入道雲が浮かんでいる。
いつもは空なんて気にしたことがなかったのに、なぜだか今日はとても綺麗に見えて、思わず自転車を停めて、眺めてみる。
永久に続きそうで、きっと一瞬の、夏。
そんなどこかで聞いたフレーズが頭をよぎった。
様々な文章表現にチャレンジしてみたいと思い、昔の記憶を基に散文詩を書きました。今でもあの青空を思い出します。