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サカナクションライブ配信〜夜を乗りこなす〜

サカナクションのライブを、生で見たことが一度だけある。



カラオケで「ミュージック」を歌ったとき、ライブ映像が流れていた。そのライブ映像のあまりの格好よさに涙がでて、「生で観てみたい」と思っていたのだ。



ライブというものは、映画館や美術館と同じで、ひとりで観るのがいい。誰かといくというのは、自分と同じくらいの熱量じゃないと落ち着かない。



2年前の2019年6月、わたしは福岡へ行った。

好きな人に、会いに行った。トーキョーから、地元の福岡に戻ったという人だった。サカナクションのライブを観にいくという口実をつくって、会いに行って、2日一緒にいて、ひとりでライブを観て、最終便にのって帰ってきた。あれから一度も会っていない。



初めて生で観るサカナクション。だけど正直、ライブどころではなかった。好きな人と過ごした時間を反芻しまくって、最初のほうはあまり覚えていない。ほとんどうわの空だった。「ミュージック」と「新宝島」、そして初めて聴く「aoi」が流れたときに、心が疼いたくらい。



そう、わたしは好きな男に会いに、一泊でも飛行機を使って会いにいくような女なのである。


でもそこに、「初めていく福岡」「サカナクションのライブ」という付加価値を付けた。それに、福岡に行ったからといって、好きな人に会えるとは限らなかった。


会えなくてもいい。そういう余裕は持っていた。


会いに来てくれた。好きな人の住んでいる久留米から、わたしが行った博多まで、車で40分。はじめ、「空港までいけないわ」と連絡がきた。全然いい。社会人の貴重な土曜日を、ただの大学の後輩が遊びにくるってだけで、割かせるわけにはいかない。わたしはひとりでも楽しめる。ひとりでもつ鍋でも食べようか。博多周辺をぷらぷら歩いていた。そして電話がきた。「どこいんの」。足も心も弾んで、緊張と嬉しさでゆるむ顔を存分に引き締め、再会した。実に半年ぶり、3度目ましてだった。



サカナクション。彼らを、わたしは数曲くらいしか知らない。「おま、それでよくライブ観に福岡まで来たなあ」と、好きな人は笑った。あなたに会いに来たんだよ。ライブは日曜日の夜からで、土曜の夕方に福岡に着いたわたしを、好きな人はいろんなところに連れて行ってくれた。2日目の昼には糸島まで車を走らせてくれた。なんて綺麗なんだろう。音楽を流す。わたしが東京事変を好きだと言ったことを覚えていてくれた。King Gnuの白日が流れる。どうしてこんなに幸せなんだろう。その時のわたし、とびきり綺麗な自信があった。



ライブギリギリに会場に着いた。彼が車を飛ばしてくれたから間に合った。一万円札を助手席に投げ入れて、わたしは会場に駆け寄った。振り返って、車が去っていくのを見送る。決定的なことはなにも伝えず、それっきりになった。



それから何度か電話で話した。一度ZOOMに招待されて、彼と彼の友達5人のなかに、なぜかわたしが入るというおもしろい展開になったこともあったけれど、直接会うことはなかった。



サカナクションを聴くと、当時のことを思い出す。一時期は、それがあまりに辛くて聴けずにいた。青春は、渦中にいるとそうだと感じないほどあまりに眩しすぎる。あれは青春だったなあ、としみじみ思う。


わたしは青春に、成功していた

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JURIA
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