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思い出に残るあの人

毎回エッセイを書くネタのほとんどが記憶の彼方にあった俺の思い出シリーズなるものになりつつあるが、こりずにも昔出会った記憶に残る人を書き出したいと思う。

中学生の頃である。
中学何年生かは忘れてしまった。
一年生だったかもしれないし、二年だったかもしれない。
その頃に習ったのが性教育の授業だ。
第二次性徴を迎えた生徒たちには大事な授業である。
性教育というのはきちんと学ばずに通らないとえらいことになると思う。
過去に私は股間にできた粉瘤を癌もしくは金玉ができたと思い大騒ぎしたものだが、性教育というものは改めて大事だと思った。(過去エッセイ:股に金玉ができた話より)

大体そういった授業は大体講義室か視聴覚室※で行っていた。
(※視聴覚室というのは大きなスクリーンかテレビのどちらかがありそこで視聴しながら授業を行う教室のことである)で

担任の先生や保健体育の教師が行う授業ではなく、外部から講師を招いた課外授業であった。
今回やってきた講師の方はあの頃見て大体50代後半~60代前半くらいの女性だった。

こんにちは~

この講師の先生は、医者だとか専門的な知識の資格を持っていたというよりも、ボランティアに近い先生だった気がする。
もしかしたら元教師の人だったかもしれないし、普通の主婦の人なのかもしれない、その人の肩書がなんだったか忘れたのだが、とにかくその講師のイメージというか勢いが「私が性教育の伝道師よ」と言わんばかりの人だったのである。

性教育を教えに来たというよりも、押し付けに来たに近かった。
それくらい彼女は衝撃的で今までにない性教育者だった。

まず、授業に必要である授業道具だ。
図や説明が書かれた模造紙や、模型など、普通ならそんな想像するかもしれないが、彼女は違った。


彼女はギター片手にやってきたのである。

イメージ図です。

片手にギターを持った講師って今までになかった。
特に性教育では。

思わず最初登場して来た時なんだなんだと教室内がどよめいていた。
それもそのはず、「性教育を行う」と事前に言われていたのに関わらず、突如教室に入ってきたのが年配の女性がギター片手でやってきたものだから、どよめくのも無理もない。
まだ人生経験もない中学一、二年のそこらの子だったら余計に困惑するであろう。
ぶっちゃけ、成人になった私もそんな現場に遭遇しても普通に混乱する。

教室の一番前、沢山の生徒が見渡せる教壇に立った彼女は、挨拶をした。
いたって普通の、どこにでもいるであろう年配の女性だという印象だ。
手にギターを持っている以外には。

彼女の講義をざっと説明をするとしよう。
彼女は性教育の基礎という基礎であるまずは男女の体の違いを話す。
「男性と女性の体の違いはどこかな?」といった風に投げかける。
もちろん、投げかけられるのは思春期の子供たちである。
真面目な子でも自分から挙手をして答える子なんかいない。
いないのが普通だ。

しかし彼女は違った。

「男の人と女の人の違いはこうだよねー?」
「まずは性器!男の人はぺ■スがあって、女の人には■ギナがあるよねー!」
「じゃあみんなでー!一緒にー!?」

曇りなき眼で彼女はそう言った


赤信号みんなで渡れば怖くないといったように、
みんなで一緒に言うなら怖くない方式をしてきたのである。

そして彼女は何度も我々生徒に忘れないように何度も何度でもこう告げるのだ。

「恥ずかしくないよー!」
「恥ずかしくなんて全然ないよー!」
「さあみんなで言ってみよー!」

ライブ会場だ。ここは視聴覚室なんかじゃない。
ライブ会場なんだ。彼女の。
マイクが用意された教壇の前に立つ彼女の独擅場だ。

彼女は、普通の大人達が子供に言い辛いであろう性教育の内容、単語を何度でも何度でも繰り返し言う。
それを我々にも言わせる。
一斉に、大声で、限られた教室内が子供が合唱のように、性器の単語を発せられる。

イメージとしては、運動部とか掛け声に近い気がする。
とにかく教室内で性器の単語が飛び交う飛び交う。

「聞いているのも言うのも恥ずかしい、やめてくれ……」と普段活発な男子生徒が下を向いて助けを求めていた。
彼女の激し目な授業では普段活発な野球少年さをも殺していた。

けれど、ここは彼女のライブ会場。
チケットを買って席についているのは私達なのだ。
彼女からのコールにレスポンスをしなければならない。
これは義務であり、この場のルールでもある。

多分人前で、同じクラスの人の前で堂々と性器を口走ったのは初めてだった。
とにかく、彼女の教え方は「恥ずかしくない」「知っておくこと」というようで、今ネットにはきちんと青少年に向けられた性教育の話や、保護者向けの性教育の書籍などあるが、正直彼女の性教育は恥など捨てましょう!!みたいな方式だったので、果たしてきちんとした性教育になれていたのかはわからない……。


そして持っていたギターは何に使うのか?


普通に歌っていた。

性教育に絡めた曲だとか替え歌とかでもなく、ただ普通の曲を歌っていた。
確かドリカムの「Love Love Love」を歌っていた気がする。
その選曲は一体何?
しかも独特の歌い方のアレンジをしていて癖が強かった。
なんであの時あの流れでドリカムの「Love Love Love」を歌い出したのかはわからない。彼女の好きな曲だったのだろう。
授業の終わりに歌い出したので、エンディングなのだろう。
性教育で知らない女性から聞くドリカムって聞いたことある?
私はある。

ちなみに同じ学校に通っていた姉に今日起きたことを話すと、姉も彼女の講義……もといライブの経験者であった。

どういうことをしたの?と聞くと、姉曰く当時彼女から受けた抗議の中で「ぺ■スを30回言いましょう!言えた人から帰れます!!」
と講義室がぺ■スと言わなきゃ帰れない部屋と化したらしい。
無事にぺ■ス!!と30回言えた人が下校したり部活に出たりできたので、できなかった人はどうなったのだろうか……。

流石に私の場合はなかったが、想像するだけで恐ろしいと思った。
あまりにも酷ではなかろうか。

彼女の「恥ずかしくない!!」という教育というか、ほぼ洗脳は、ちゃんと
恥ずかしがらずに股を見せなければならない病院に行けることにもなったので、まさしく彼女の教えを受けたとも言える。(股に金玉ができた話参照)


沢山衝撃を受けるような人間とあったが、刺激的な講師の彼女を生涯、忘れることはないでしょう。


歌い出す彼女。
性教育の伝道者として彼女は歌うのだ。

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