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【旅行記】微魔女の微ミョーな旅・14

2.カンボジアー2017年

 なぜ、カンボジアだったのか?

 「家族での海外旅行はしない」というと、必ず「なんでなの⁉」と驚かれる。私にしてみたら、「なぜ、わざわざ家族で旅行に行くの?」と思う。私にとっての海外旅行は“日常を離れた息抜き、独りだけの時間”。なのになぜ、思いっきり日常である家族を引きずっていかなければならないのか? 
 ところが、その禁を犯してしまったのがカンボジア旅行だった。
 
  久しぶりの海外旅行で遠い中東へ行ってから、すっかり腰が落ち着かなくなってしまい(英語ではイッチーフィート/かゆい足という)、数か月もすると次の行先を探し始めていた。今度は近場の東南アジアにも目を向けてみよう、タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピンは行ったことがあるので、残るはベトナム、ミャンマー、ラオス、カンボジア。
 毎晩コンピューターでリサーチをしていたら、モニターを覗き込んだ夫がアンコールワットは自分もものすごく行ってみたいと言い出した。夫も行くとなると息子も連れて行かなければならない。中東旅行で疲弊した財布のリカバリーが必要な時期でもある。家族旅行なら家計支出で行かれるから懐も痛まないし、じゃあ、家族での初海外旅行にしよう。ありがとう、夫。
 ツアーとしてはカンボジアとベトナムのセットが一般的のようだったが、夫の仕事の都合と息子を合わせた予算を考えると、機内往復2日を加えた4泊5日分が無理のない線だったので、カンボジア一点買いとなった。夫がいるので自由旅行も考えたが、誘拐・人身売買のメッカ、カンボジア。息子13 歳の安全を考えて、ガイドとドライバーとホテルの付いた個人ツアーを手配することにした。
 夏休み中の旅行は“新学期が始まる直前”が鉄則だ。休みの初期段階で大枚はたいて思い出を作ってやっても、子どもは学校が始まる頃にはすっかり忘れてしまう。しかも航空券の値段は1月後半になるとぐんと安くなる。
 海外旅行は日本にしか行ったことがない夫になど任せていたら、旅行計画自体が消滅しそうだったので、単独でリサーチを始めた。夫も私も行きたいところはアンコールワットとプノンペンの虐殺博物館と決まっていたので、あとはツアー会社を見つけて航空券を探せばいいだけだ。しかし、どういうわけかモチベーションがまったく上がらない。
 基本的に一人で旅行に出掛けるときは、旅行保険以外は自費と決めている。いくら自分勝手な私に寛大な夫でも、家事の負担に加えて金銭的な負担までかけられるほど図々しくない。小遣い稼ぎ程度のパートのお金が溜まると、予算を決め、旅行の計画を始める。ちなみに、前年の中東旅行は祝・50歳の特別予算枠で総額1万ドル(約100万円)、通常は行先にもよるが2~3000ドル(2~30万円)の範囲内で収めている。若い頃の癖が未だに抜けないためか主婦のためか、安いツアーや安い航空券を探すのがひとつの楽しみで、予算が下回るほど得した気分になる。値切り交渉に成功したり、現地通貨対ドル高になったりすると、“この国へは行くべくして行くことになっていたのだ”と、勝手に運命じみたものを感じながら盛り上がったりもする。
 がしかし、今回は……。
 恐らく、見つけたツアーがチャーターで、催行日程に合わせて航空券を探す必要がなく(乗り換え便の接続をパズルのように組み合わせていくのが楽しい)、逆にこちらの飛行機の都合に合わせて旅程を組んでくれること、私の懐はまったく痛まないのでそれほど予算に神経質にならなくてもいいこと、適当に旅程を組んでも夫が一緒なので現地で何とかしてくれそうなこと……などなど、盛り上がり要素に欠けるスタートダッシュで、実際12月に入ってもツアー会社も航空券も決まらず、夫が慌ててラストスパートで予約を入れたほどだった。

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