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日本とアメリカに、時差はない。| Anime Expo 2024 レポート

※この記事はHelixes Inc.のオウンドメディア「Helixes.log」から転載しています。(公開日:2024.8.16)

Helixes Inc.のメンバーやそのマインドについて発信していく「Helixes.log」。

2024年7月4日~7日にかけて北米はロサンゼルスにて開催された、ANIME EXPO 2024にHelixes代表・志村龍之介とクリエイティブプロデューサーの田中大地が行ってきました。今回は「ANIME EXPO 2024 レポート」と称して、イベントの実態と各ブースの様子などを記録しました。


ANIME EXPO とは?

ANIME EXPOとは、1992年より毎年開催されている、日本のアニメ・漫画とポップカルチャーに特化した全米で最大規模のコンベンションで、上記に関わる企業や個人がブースやパネルディスカッション、アーティストアレイなどを行うイベントです。
アメリカでは、NYCC(ニューヨークコミコン)やSDCC(サンディエゴコミコン)などの、より大きな範囲でのポップカルチャー(映画・漫画・アニメ・ゲーム等)を取り扱ったコンベンションが有名ですが、ANIME EXPOはより日本のそれに特化したイベントです。
SPJA(The Society for Promotion of Japanese Animation)が主催しており、基本的には非営利のボランティアで運営。本年は世界60カ国から約39万人が訪問したと言われております!

ANIME EXPOの会場に関して

https://www.anime-expo.org/

ANIME EXPOは、LAのDown TownにあるLos Angeles Convention Centerにて開催されています。過去にはグラミー賞なども開催された場所で、大きなホールが数個ありつつ、数百人から、数千人が収容できる沢山のホールが用意されています。

ANIME EXPOでは下記の図のように、MAIN EXHIBIT LEVELに「EXHIBIT HALL」というアニメ産業に関わる多くの企業がブースを出しているホールと、長い廊下を挟んで「ENTERTAINMENT HALL」というゲームや配信サービスなどの企業が、寄り体験型に近いブースを出すホールがあります。

下の階の「KENTIA HALL」ではアーティストアレイがあり、主に北米のアーティストさん(イラストレーターさんなど)が自身の作品などを販売しております!(コミティアやコミケに近いイメージです)

他の階や隣にあるJW Marriottでは、各企業が新作の発表や、パネルディスカッションなどを行うホールが10個以上ありました。

今回は、主にMAIN EXHIBIT LEVELの「EXHIBIT HALL」と「ENTERTAINMENT HALL」での各ブースなどをレポートできればと思っております!

▼注目したブース▼

ここからは上記「EXHIBIT HALL」で出展されている各企業さんのブースの様子と、出展各社が今年は何を推していたのか、レポートしますー!!

講談社

講談社のブースは、全社的なブースとブルーロックのブースの2つを出展していました。
全社的なブースでは、弊社がビジュアル制作やMEQRIなどで携わらせていただいている『ガチアクタ』や、『シャンフロ』『フェアリーテイル』などが推されており、また各ジャンルで分けた講談社の漫画の小冊子などを配っていました。
『ブルーロック』ブースは単独の展示で、その人気ぶりが伺えました。

『ブルーロック』『ガチアクタ』はどちらもパネル(別のホールで講演)をやっていたのですが、前者は声優さんの登壇もあり、2000人キャパが満員でした。後者は「BONESの新作」という売り出しなのもあって人が集まっており、アニメスタジオの人気も垣間見れました!

BANDAI NAMCO

BANDAI NAMCOは昨年、私(田中)がNYCCに行った時もそうでしたがメーカー/流通という立場で、北米でもアニメ市場における重要な立場を担っており、ブースも一番大きい/多かったです。

IPとしては『DRAGON BALL』、そして『ガンダム』シリーズ、Netflixでアニメが公開された『ウルトラマン』シリーズのブースがありつつ、「TAMASHII NATION」「一番くじ」など各ホビーシリーズのブースも単独でありました。

DRAGON BALLはゲームのブースを出していたのですが、やはりとても人気が高く、「アニメの代表作」的ポジションとしてその人気が伺えました!
『ガンダム』シリーズはNYCCの時も大きく打ち出しおり、BANDAIグループとして大きく売り出す覚悟が見えました。

昨年NYCCに行った時は『NARUTO』『たまごっち』なども出展していたのですが、今回はありませんでした。

東映アニメーション

TOEI ANIMATIONは、今回『ONE PIECE』をメインにしたブースでした!

『ONE PIECE』に関しては、ルフィのバルーン、エッグヘッド編の映像、DIM MAKとのコラボアパレルなども販売を行っていまいた。

ご存知の通り、国内だけではなく『ONE PIECE』は大きく売り出されており、会場でのコスプレイヤーも多くいました!

体感ですが、昨年のNetflixの実写とともに『ONE PIECE』の人気は爆発した印象で、それまでは(集英社)アニメといえば『DRAGON BALL』『BLEACH』『NARUTO』だったのが、ここにきて大爆発している印象です。

漫画もいよいよ佳境になってきましたね!楽しみでしょうがない!
私がワンピースを手に入れようと思っています!

TOHO Animation

TOHO Animationのブースでは、『呪術廻戦』『僕のヒーローアカデミア』『怪獣8号』『SPY FAMILY』などを推した展示です。

イマーシヴ体験型の映像展示とイベントを行うステージがあり、さすがの大人気作品群ということで周りに沢山人がいました。

『僕のヒーローアカデミア』のパネルに運良く参加できましたが、3000人キャパくらいの部屋が満員でした。
新作映画のプレビューで、デクの山下大輝さん、オールマイトの三宅健太さん、そして映画ゲストの宮野真守さん等が登壇したのですが、声優さん達の人気が爆発的でした。

北米では、字幕で作品を見る文化がまったくなく、それが壁となって、映画/アニメなどの進出も難しいと言われていたのですが、映画『パラサイト』のアカデミー受賞、配信サービスの普及により、より字幕で見る文化が広まったのかと思いますので、これは日本のアニメ産業においては大きな変革かと思います。

とにかく『呪術廻戦』は一番の人気で、グッズもコスプレイヤーも沢山いました。
おそらくコロナ以降アニメ文化に注目が集まった際、アニメのクオリティー、作品が扱う文化の面白さ(呪術等の日本的オカルト要素)、そしてキャラクターの魅力がとにかく受け入れられたと考えています。そしてとてもタイミング良い時に、TOHO Animation/集英社/Chunchyrollがこれを押し出せたのかと思います。
とにかく大人気です!

また、TOHO Animationが手掛ける「iizo」というアパレルブランドのブースがありました。

いわゆるオシャレ系のアパレルグッズブランドで、今回は『呪術廻戦』『SPY FAMILY』『僕のヒーローアカデミア』のアパレル・グッズがありました。

自社でブランドを持つ+オタク方向だけではないブランディングをする、という意味でとても興味深い取り組みかと思います!

ANIPLEX

ANIPLEXのブースです。
『Fate Grand Order(FGO)』と『鬼滅の刃』両側に大きく出しつつ、中央で他作品の映像などを流していました。

FGOの根強い人気がうかがえました。
ゲーム基軸ではないかもしれませんが、「日本のアニメ文化」において欠かせない存在として、
しっかり継続的に追っている人が多くいるのかと思います。グッズが沢山売れていました。

『鬼滅の刃』は引き続き人気で、もはやレジェンド作品の風格があり、他のグッズ事業の企業さんのブースでも多く見られ、老若男女のコスプレイヤーがいました。

CRUNCHYROLL

アメリカのアニメ配信サービスの最大手、CRUNCHYROLLのブースです。
SONY系列で、北米でのアニメ人気を爆発させ、今も支えている(Awardも主催しています)フィクサー的企業です。

とにかくブースが大きく、『俺だけレベルアップな件』のバルーンがあったり、LiSAさんの映像を流していたり、グッズコーナーではラッパーのLogicと『COWBOY BEBOP』とのコラボ商品なども売っていました。
(昨年も『COWBOY BEBOP』を推していたので、やはり人気があるのと、贔屓にしているのかと。良いですね。)

ブースだけでは無く、会場と会場を渡る長い廊下に、超大量の広告を出しており、「アニメ見るならCRUNCHYROLLしかなし」という魔王的風格がありますね。

前述した通り、配信が大きな支えになっている北米アニメ文化の中で、とても重要なプレイヤーです。

VIZ MEDIA

北米の大手出版代理店VIZのブースです。
「少年ジャンプ」の出版や、各作品を翻訳して出版しているので、北米の集英社/小学館の漫画ファンはVIZ出版の漫画を読んでいるという構図になります。

『NARUTO』『BLEACH』『ONE PIECE』に+して、伊藤潤二先生の作品を大きく売り出しており、先生の作品の人気が垣間見れます。
まだまだメディアとしての漫画の人気は追いついていないと言いますが、今後5-6年で4倍の人気となると言われているので、集英社/小学館作品の漫画に関わる機会がある人は、動向をチェックしておくとどの作品が北米で人気かわかると思います!

KADOKAWA

KADOKAWAさんのブースです。アニメとしては、『ダンジョン飯』『推しの子』を推し出しつつ、
どこよりも「漫画」という文化を推し出しており、巨大なIPカタログを保有する自社の魅力を打ち出すブースとなっていました。

どこよりも推し出す作品(漫画/ラノベ等々)が多い会社なので、カタログの幅広さを見せつつ出版社としての印象を強めているのは、将来に向けた投資になりそうだなと思いました。

日本でもですが、大手3社と比べるとコアファンに売り出すことをベースにしながら、北米のグラフィックノベル/インデペンデントのような雰囲気もあり、感度の高いファンは最終的にここに流れると感じました。

その影響か、『ダンジョン飯』はアニメの人気ももちろん、原作はアニメ化とともに、売上が400万部以上増えたようです。

集英社

集英社さんのMANGA Plusのブース(JUMP+ですね)では、NYCCの時とおなじくサービス打ち出すために、人気作品の『チェンソーマン』『僕のヒーローアカデミア』『呪術廻戦』『怪獣8号』などの複製原画を展示していました。

まだまだアニメ人気で、漫画人気の波はこれからではあるので、デジタルでの漫画購読を常に押している感じかと。

ヒロアカ、お疲れ様でした。本当に本当にありがとうございました。

COVER / hololive

hololiveを運営するカバーのブースです。

holoiveブースでは、常に大スクリーンで配信を行っており、多くの人が滞留していまして、日本でのコミケやアニメジャパンと同じような様相でした。

Dodgersの試合にも伺ったのですが、hololiveとのコラボを行っており、星街すいせいさん、兎田ぺこらさん、がうる・ぐらさんの試合前の挨拶、試合中の挨拶、試合後のドローンショー、グッズの販売を行っており、グッズは長蛇の列で記録的な販売数だった模様です!

NIJISANJI

Vtuber事務所のNIJISANJIのブースです!
hololiveと同じく、自社のブースだけではなく他社がおもちゃ等を販売していたこともあり、各所で露出が見えました。
配信等の体験は行わず、グッズをメインとした展示でした。

ChroNoiRさんのライブが会期中に行われる予定だったのですが中止になってしまい、とても楽しみにしていたので残念でした!

BAIT

アパレルブランドのBAITのブースです。日本では渋谷PARCOに入っていまして、弊社が以前運営していたブランド「名/NA」も置いてもらっていました。

ブースとしては、『SPY FAMILY』『ONE PIECE』『聖闘士星矢』のコラボアパレルが販売していたのと、『鉄腕アトム』『ウルトラマン』のフィギュアが売っていました。
アニメコラボグッズ/アパレルの先駆者で、カルチャー系からのアニメ人気を支えるブランドなので、いわゆるオタク系の人だけではく、カルチャー系のオタクも多くきていた印象です。

▼他ブース▼

PONY CANYON

ポニーキャニオンのブースでは新作『キン肉マン』を推していました。
これもファンベースが相対的にそこまで大きくない(過去作)作品なので、どうやって推すのかは課題かなと。

ただプロレス文化が今でも強い北米なのもあり、ブースではプロレスラーとリングで写真が撮影できる施策でした。

プロレスラーが4日同じ人ですごかったです。

SEGA / ATLUS

ATSUKO

BIBISAMA

DIM MAK

HYPLAND

CYBERPOWERPC

FAKKU!

NIKKE

YOSTAR

Vshojo

HOYOVERSE

BEYBLADE

Bellzi

liliuhms

MILK MOCHA

OMOCAT

CASETiFY

▼広告▼

廊下の広告 – クランチ一色

▼パネル▼

こういった500~2000人規模が収納できるホールが10箇所くらいあり、各出展者が新作発表や、新作プレビューをしています。
私達は、講談社『ガチアクタ』『とんがり帽子のアトリエ』、TOHO Animation『僕のヒーローアカデミア』のパネルにお邪魔させていただきましたが、どれも超満員でした!

上記以外でも、『呪術廻戦』『ブルーロック』の声優さんを呼んでのパネル、Clover Works×WIT STUDIO×集英社の「JOEN」の新作発表、『ルックバック』の全編公開など、色々とパネルがあり、全てがほぼ満員でした。

日本と違い、アニメ文化を体験できる機会が少ない北米ではお祭りの様なことでみんなとりあえず参加するのかと思います!

感想/総評

1.ストリーミングサービスとSNSにより、流行りの上での日本との差が縮まっている。

体感ではありますが、先述した通りやはり日本のアニメ文化(アニメ作品・声優人気・ミーム・キャラクター)だったりの流行りを、北米の人たちはしっかりそのまま受け取れている印象でした。
「流行っている。」というのが日本だけではなく北米も含まれるイメージです。

特に、この3年のコロナ後から始まった作品の多くは爆発的に人気を誇っており、その前のアニメはレジェンド的扱いになっている状況だと思います。

コロナ前であれば北米ではアニメといえば『DRAGON BALL』『NARUTO』『進撃の巨人』などがとても強かったイメージですが、今流行っている作品をしっかり追っており、その「ジャパニメーション文化」が日本よりも歴史が浅い分(日本では戦後から脈々と受け継がれる文化がありますが)、新しいものに常に寛容なのかなと。

何より、ストリーミング才ービスにより日本語版での英語字幕視聴が可能になったのと、アニメ文化の一環として声優が人気になっているのが驚きました。

パネルで見に行った、『とんがり帽子のアトリエ』は、とにかくすでにファンが多かったです。

2.包容力の高さ

こちらは私の主観ではありますが、とにかく全てにおいて包容力が高いです。

「自国発信の文化ではない」、「輸入した文化である」、という前提がある故でしょうが、なにか会場全体にポジティブな雰囲気があります。

全ての作品・文化に対しての包容力があり、人種や性別を超え、アニメならではの自己表現(コスプレ等)を楽しんでおり、そこに壁がありませんでした。

多くの人種が交わる国ならではの雰囲気というところで、アニメ作品だけでは無く、ファッション、グッズ、エロからなにまで、いろいろな側面が開放されている雰囲気がありました。

3.まだまだ北米で伸びのある産業である。

これも行ってみてさらに体感したことですが、想像の10倍くらいのアニメ人気の熱があることです。

単にアメリカのオタク(日本でいう、洋楽好きやマーベル好き)だけでなく、ストーリーコンテンツ=IPとして、アメリカの産業=ハリウッド映画に引けを取らない人気があるということです。

現状、Z世代(1997年から2012年生まれ、約5,740万人)がアニメ市場の42%をしめ、男性が72%を占める市場であるのですが、このままZ世代が歳を取り、その下の世代が更にアニメを自動的に視聴をするようになり、また女性の視聴の多いジャンルの輸出や、推し文化の浸透などが広がると、更なる発展が見込めるかと思います。

後述しますが、まだまだ北米市場に対するプロモーションを形にできていない状況ではあるので、そこがしっかり戦術として形になればもっと広い市場の獲得も見込めるかと思います。

おまけ

① 今回の訪問に+してJETROさんの出した「アニメ関連サービス・商品に関する米国市場レポート(2024年版)(2024年7月)」が、北米でのアニメ・漫画産業の現状とこれからに関して、とても有益な情報がまとまっており参考になりました。

https://www.jetro.go.jp/world/reports/2024/02/c4e281f9a67a5ddb.html

 

② Blink 182のライブに行ってきました。70,000人が収容できるスタジアムで2028年のLAオリンピックの開会式もこちらにて行うみたいです。
トム・マーク・トラヴィス、みんな元気そうでした。
あの頃の音楽が再熱していて、熱いですね。

③ 2021年に開館した、The Academy Museum of Motion Picturesに行ってきました。広い枠での映画/ハリウッド映画にフォーカスした博物館で、映画芸術科学アカデミーが運営しています。誰でも知っている「あの映画」のプロップスが多く展示されており、「映画製作/制作」がしっかりとアーカイブされています。
私が行った時は、ジョン・ウォーターズ特集がやっており、ちゃんと下品で悪趣味でした。

④ ちょうど私達が行った7/4は独立記念日でして、街中がお祭り騒ぎでした。
特にすごかったのは、花火です。街のいたるところで市民が花火を打ち上げていて、「ブレードランナー」「MADMAX」の世界かと思いました。カリフォルニアだなぁと思いました。

⑤ 円安の影響もあるのですが、物価がとにかく高く、財布を出すタイミングでは常にちょっと涙がでました。

Text : Daichi Tanaka
Edit : Kentaro Okumura / Ryunosuke Shimura / Hanako Yamaura
Photograph:Ryunosuke Shimura / Daichi Tanaka

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