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人生リスタート、俺やっぱりデザイナーなるよ。
そう言って前の職場を飛び出し早1年半。
32歳、独身。
大学入学とともに上京し、早10年以上が過ぎた。
新しい事を始めるのに何歳でも遅すぎるということはないが、
しかし30歳を過ぎると手放しで若いとも言えない。
若者はどんどん挑戦して失敗すればいい、というのも20代相手の言葉だろう。
普通なら会社では若手から中堅に差し掛かり、
後輩や部下の指導、プロジェクト担当、などなど
相応のキャリアを積んで、お金もまあまあ稼いでいく頃。
しかし、そういうのは全部捨てることにした。
なぜなら、オレ、やっぱりファッションデザイナーになりたいから。
自分のブランドを立上げるという長年の目標に本腰いれて取り組もうと思うのだ。
上京して十数年。
大学を卒業後、公務員になった。
憧れの外交官にはなれなかったが、近しい世界に足を突っ込んだ。
しかしやっぱりファッションの道に進みたくて、アパレル企業に転職もしてみた。今流行りのサステナブルとかなんとかを進める部署だ。
けどやっぱり、服を作ってみたい。
今は、平日は会社に勤めるかたわら、数ヶ月前から服飾学校の社会人向けコースに通い服作りの基礎を勉強している。
正直、今の自分のレベルでは全然、思い描いていたような心打つような素敵なデザインや、優美なドレープを描くドレスなんて作れやしない。
どうやって作るのかもわからないし、作れる技術もいつになったら身につくのか。
授業についていくのも大変だし、疲れて作業がまったく進まず、焦りとフラストレーションが溜まるだけのときもザラにある。
思っていた以上に道のりは果てしない。
そして苦しい。
だけど、楽しい。
苦しいけど、楽しい。
今はファッションじゃ食えないよ、という話しは色々なところで聞く。
実際そうなんだと思う。
けど、そういうことじゃないんだ。
稼げるかとか、今後のキャリアに役立つとか、
そういうことはどうでもいいんだ。
これは自分の人生において、やるべき事なのか、そうじゃないのか。
いや、やるべきかどうかでもない。
やるか、やらないか。
だったら、やるという選択肢しかない。
最近は、Z世代やミレニアルズの活躍が色々なところで取り上げられる。
その度に、若くしてすごいなぁ、自分ももっと早くやっていれば、どうして、という気持ちも込み上げる。
しかし、今ここで、やるしかないのだ。
まだデザイナーの卵というにもしのびないほどの何者でもない人間だが、
ひとりの人間が何かを始めようとする裏側を、
デザイナーになれるのかどうか、
ブランドを立ち上げられるのかどうか、
これから右に転ぶか左に転ぶか、
ここに書き記していきたい。
もし誰か見てくれる人がいたら、果たして32歳の人生がどう転んでいくか、一緒に見届けてほしい。
これは、ひとりのゆとり世代が、
社会に揉まれ世間に抗い、覚めない夢を追いかける
ドキュメンタリーである。