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サッカーは理不尽で、だからすばらしいと思う
先週の金曜日に公開されたこちらのGKを中心にしたナイスセーブ集は、期待以上にご好評いただけました。
編集した田上さん、お疲れ様でした。
しかし、このプレー集は「もしこれを決められていたら」と肝を冷やすような場面満載です。
ひとつ決められていたら勝点を落としていて、目標を達成できなかったかもしれません。
そして「昇格を逃した理由はどこか」「なぜ終盤失速したのか」「結局誰が何を間違えたのか」みたいな議題で界隈は占められていたかもしれません。
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サッカーってそう考えるとおっそろしいスポーツで、ひとつのプレーが勝敗に及ぼす割合がほかの球技よりも多いです。
(優劣ではなく)
いい選手をそろえていて組織力も含めて上回っている方が、内容(決定的場面の数?決定的場面を決める確率?)で上回る可能性は高い。
内容で上回る方が勝つ可能性も高いけれど、その内容が結果に直結しない試合も多々あります。
たとえばセンターバックとGKの連携ミスからゴールが決まって、あとはひたすらポストも含めたみんなで跳ね返して勝てることもある。
打っても打っても入らなくてポストとバーを何回も叩いてPKまで外れて、逆にDFに当たってコースが変わった1本のシュートが入って負けるみたいなこともある。
とはいえ、負けた側にしてみれば、失点にはミスの要素0%ということはないから、「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」ではあるんですけど。
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バスケだって選手の質や練度では見劣りするはずのチームが勝つことはあるけど、サッカーと比べれば内容が結果に反映される確率はずっと大きいものです。
格下と見なされる側が、内容でも劣勢で、それでも勝つことはあんまり起きづらく、ちゃんと見れば色々な要素が噛み合って下馬評では格上の対戦相手よりもいいプレーをして勝ったということがほとんどのはず。
なぜならバスケは30本40本50本とシュートが決まるからです。
サッカーの何倍もシュートを打つ機会があり、10倍以上のシュートが決まる。
そうなるとシュートチャンスをたくさん作った側(シュートチャンスを作らせなかった側)、決める精度が高い側が勝つ可能性は高い。
繰り返しですがこれは優劣ではなく、単純に特徴が違うという話ですが。
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サッカーは多くの攻撃がシュートにすら至らず終わり、結果1点2点しか決まらず、だから偶発的な要素で勝敗が決まることがあります。
もちろんシーズン38試合を終えれば、ある程度シーズン通しての内容にふさわしい順位(+ーα)に収斂されていくものですが。
だから監督や選手はひとつの勝ち負けに一喜一憂しすぎることなく、次の試合で勝つ確率を少しでも高めるために日々トレーニングを積み重ねていくものです。
しかし去年今年の鹿児島のようにひとつの勝ち点、ひとつの得点、ひとつのセーブで、昇格できるかできないかというあまりにも大きな差が生じてしまうことがあります。
そしてそのあまりにも大きな差ゆえに、そこに至るまでの過程に対して周囲があまりにも必然性を探し求めすぎることが世の中には見受けられるなーって思っちゃうこともあります。
鹿児島はマシなほうなんですけどね。
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でも、良いサッカーをしたチームが必ずしも勝つわけではないところも、サッカーの魅力なのは否めません。
サッカーは理不尽で、だからすばらしいと思う。
(進撃の巨人でユミルがそんな遺書を書いていたような)
それは格下が金満クラブ(相対的な)をぶっ倒す的な甘い夢を、もうちょっと現実のものとして描けることでもあります。
あまりにもゴールを決めることは難しく(メッシすら半分以上のシュートを外す競技)、だからこそゴールが決まった瞬間、スタジアムは爆発します。
理不尽で、だからサッカーは多くの感情を揺り動かします。
100年を超える歴史でたくさんのルール改定は行われてきたけど、10点15点決まってもっと頻繁に興奮できるようなものにしようとはなっていません。
こんだけ放映権が重大になった世の中だけど、ここだけは変わっていません。
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改めて今、思います。
サッカーは理不尽で、だからすばらしい。
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追記
とはいえ。
昇格が決まってから約2週間、鹿児島ではあんまり「昇格に必然性を過剰なほどに探す」ような論調を見ることは多くありません。
むしろ「厳しい闘いだぞ」という風潮を見かけることのほうが多くて、だからいいなーって思います。