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チェルシー×マンチェスターユナイテッド プレミアリーグ ~ポッターらしさが見えた~ 第13節 2022.10.23

試合結果
チェルシー × マンチェスターユナイテッド
1-1
得点者
87' ジョルジーニョ
90+4` カゼミーロ

スタメン


誤算だったファーストプラン

ユナイテッドは4141のシステムで試合に入った。中盤のブルーノ、エリクセン、カゼミーロの組み合わせ自体は今までもあった思うが、逆三角形の形になったのは多分、今回が初めてだ。

まずは、チェルシーの非保持の部分から話していく。

立ち上がりは早速、チェルシーのハイプレスがはまらないところから始まった。

ユナイテッドの保持は4141の形そのままに行われた。SBのショー、ダロトはそれぞれ、マルティネス、ヴァランのサポートが取れる位置にポジショニングをする。カゼミーロもアンカーの立ち位置をそのままとる。そして、ヴァラン、マルティネスの2CBを軸にビルドアップが展開されていった。

それに対して、チェルシーは3トップで真ん中を消しながら、大外のSBに対してWBをジャンプさせるハイプレスを試みた。オーバメヤンは、カゼミーロを消しつつ、タイミングを見計らってヴァラン、マルティネスに圧力をかけていく。それをスイッチにスターリング、マウントはもう片方のCBを抑えに行く。最初のプレスで限定しきれないパスコースに関してはジョルジーニョがケアをする。。。

というのが、ポッターの用意したファーストプランだったと思う。

誤算であったのは2CBのプレス耐性の高さである。ヴァラン、マルティネスは足元の技術が高く、いつものノリのプレスでは顔が下がらない。オーバメヤン、マウントがプレスをかけたとて、限定しきれないパスコースが多発してジョルジーニョ一人で管理しきれなくなっていた。また、ウィングバックをジャンプさせるタイミングも作れなかった。ということで、チェルシーは一旦、ハイプレスをあきらめて自陣への後退を余儀なくされた。


続いて、少なかったながらもチェルシーの保持局面に関して。

チェルシーはこのところ、GKはメンディーではなくケパが起用され続けている。彼を起用する意味は、やはりビルドアップの局面で強みを発揮できるからである。

ユナイテッドのプレスの特徴は中央の選手をはっきりと捕まえる代わりに大外の選手は比較的空いているということだ。前節のスパーズ戦でも3バック相手にほとんど同様の守備を行っていた。この試合で少し違ったのは中盤の形を逆三角形にした点である。チェルシーの2Voをマンツーマンで捕まえに行くためのやり方であったのであろう。

分かりやすい出口があったため、大外のアスピリクエタを使いながらチェルシーはユナイテッドのハイプレスを避けていく。試合の序盤ではアスピリクエタを誰が抑えるのかが明確になっておらず、チェルシーの前進は比較的容易になっていた。

(  ここで、少し気になったのは、シウバ、ケパからチルウェルへの展開が全くなかったことである。映像に映り切っていなかったので、すべてはわからないが、チルウェルのポジションが高すぎてダロトに捕まっていた可能性がある。二人とも右利きなので、対角方向の方が蹴りやすいはずなのだが、チルウェルからの前進はほとんどなかった。  )

15分のシーンである。

チャロバーがサンチョの頭を超すボールをアスピリクエタに供給。フリーの状態で一気に持ち上がると、マウントのクロスまでつなげることができた。

このシーンではゴールに向かうことができたが、WBでプレスをはがした後のデザインはイマイチであった。斜めのパスを引き取るのに長けるオーバメヤンを使うなどのアイデアがあるとよかった。

チェルシーはユナイテッドのプレスが最適化される前にゴールまで迫りたかったが、得点することはできなかった。よって、序盤は保持、非保持ともに苦しい展開になってしまった。

流れを引き戻した修正

35分、攻守に苦しい展開になったチェルシーは、ポッターが早くも動いた。

ククレジャに代えて、コバチッチを投入。攻守において修正を行った。そして、システムを3421から攻撃時433守備時4312に変更した。

修正の効果が顕著であった非保持局面について話していく。

マウントをトップ下においてオーバメヤン、スターリングの2トップに前線を組み替える。そして、中盤ではジョルジーニョをアンカーに配してIHにコバチッチ、ロフタスチークを並べた。

2トップにした意図は明確であった。まずはCBヴァラン、マルティネスにボールが入らないようにしなければいけないということだ。この二人はボール保持においてほとんどミスもなくヘッドダウンもしない。彼らがボールを持てる状況をデフォルトにしてしまうと、プレスのタイミングを作ることが難しい。両CBがクリーンにボールを持てる状況をなくすことを目的としていた。

代わりに、空いてくるのはSBであるがここに対してはIHがジャンプして捕まえに行くことで対応。CBを経由させずにラフなボールがSBに入ったとこを狙っていた。

39分のシーンでは、2CBを抑えられたデヘアは明らかに迷いをみせていた。デヘアが無理をしてショーに蹴ったところをロフタスチークが寄せて速攻につなげた。直後にはテンハグがボードをもってスタッフとチェルシーのプレスを整理するシーンも見られた。非保持の局面において、この修正はユナイテッドのベンチを動かすには充分であった。

下の画像はゴール期待値の時間経過を伴う変化である。35分を境に試合展開がイーブンに引き戻せたことがよくわかる。

ゴール期待値の変化

さらなる微調整

続いて、後半の話をしよう。

チェルシーの修正に対して、テンハグがどんなアンサーを出せるのかが注目だった後半戦。

結論から言うと、ユナイテッドは最後までビルドアップの解を見つけきることができなかった。ダロトが立ち位置を内側にしたり、リサマルが少し高い位置をとったりと個人個人での工夫は見られたもののチームとしての解決策を見つけきることはできなかった。

代わりにテンハグは、中盤での強度勝負に持ち込むことを選んだ。テンハグ政権下では中盤の技術が高い選手が起用されがちではある。が、ユナイテッドは中盤で「闘う」ことをストロングとする選手も多い。後半手始めにはフレッジ、次にマクトミネイをピッチに送り出した。

そして、後半のチェルシーの保持の話について。

ユナイテッドは後半から、チェルシーのシステム変更に伴って4231の形に変えた。当然だが、チェルシーの三角形の形に噛み合うようにするためであろう。ユナイテッドの目線に立つと、中盤のかみ合わせはそろったが、相手のディフェンスライン4枚に対して3枚でプレスをかけていく必要が出てきた。基本的な狙いとしてはラッシュフォードがCBのどちらかに限定をかけながら前に出ていき、片方のサイドに圧縮するプレスを行った。

そこで、ポッターが行った微調整が効いてきていた。

先ほど、ちらっと触れたが前半はチルウェルを出口とするビルドアップがほとんどなかったという話についてだ。後半に入ると、明らかにチルウェルからの前進が増えた。ポッターは相手の守備の形が変わることまでは予想できていなかったかもしれない。ただ、チルウェルが立ち位置を低くしてダロトに捕まらないようにボールの出口を作ったことによって、ユナイテッドの圧縮するプレスを回避できる場面が増えた。52分、80分では大外で浮いたチルウェルから大きく前進することができている。

433にした効果は中盤での拾いあいになった展開でも強さを発揮していた。マウントは攻撃面がフォーカスされがちな選手でもあるが、実は守備の局面でも非常に気が利く選手である。マウントがトップ下気味に入ったことによって確実にセカンド回収率が上がったと思う。プレスバックも献身的にこなすマウントはボールのこぼれをキャッチする能力もめちゃくちゃ高い。中盤の拾いあいの意味でも433にしたことは理にかなっていた。

終わりに

ポッターは終盤に入っても試合展開にあわせて、ブロヤ、チュクエメカ、プリシッチを投入し攻撃の手を緩めなかった。最終的に失点はしたものPKで先制したところまでは、明らかにポッターの修正によるものであったと思う。システムを変え、人を変え、戦い方を逐一変える戦い方はまさにポッターならではの采配だと思った。そして、テンハグの戦い方をすぐに変えたあたりも、明らかに年々進化している戦術合戦を象徴しているようにも思えた。今後もポッターチェルシーの進化を楽しみに見ていきたい。

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