スケジュールにゆとりを持たせ過ぎると、逆にやっかいな事態になることがある
読者のみなさん、「このお話、いつ終わるんだろう?」と思ってません?
作者も思ってますし、当時の青年も同じコトを思っていました。おそらく、あの人も浜田君もそう思っていたはずです。
自分から「世界を変えよう!」と言い始めたくせに、青年はこの長い生活に飽き飽きし始めていました。「ボランティアの集い」のイベントの場所は押さえたし、もうあとはみんなに連絡して、当日を待つばかり。
小学校の受験戦争の時と同じでした。スケジュールにゆとりを持たせ過ぎたせいで、大幅に時間が余ってしまったのです。
そもそも、当初の予定では、こんなに長い時間一緒に会うつもりはありませんでした。まさか、40日の内30日近くを一緒に過ごし、それも朝から晩まで顔を突き合わせているだなんて夢にも思わなかったのです。
青年に備わっていた能力は「短時間で効率よく能力を上げ、結果を出す」というもの。「大量の時間を投じ、ひたすら努力する」というのは、むしろ彼女の特性でした。
よって、青年は暴走を始めます。せっかく彼女が家にやって来てくれているというのに、1人で勝手に散歩に出かけたりするのです。モノポリーの時と同じ。
「自分からペアを組もう!」と言い出したくせに、途中で飽きてトイレに行ったり夜の森へと散歩に出かけ、残された彼女ひとりにサイコロを振らせ続けたあの時と同じ目に遭わせてしまったのです。
部屋で一緒にいる時も、疲れ果てて寝てしまったり、ゲームをするようになります。最初はオセロや「ぷよぷよ」で一緒に遊んでくれた彼女も、疲れてしまい相手をしてくれなくなりました。
そうして、ますます「私、なんのためにここにいるのだろう?」という気持ちにさせてしまったのです。
でも、誰にもどうしようもありません。とっくの昔にほとんどの準備は終わっており、他にするコトがないのですから。完全に時間を持て余してしまっていました。
ほんとは、他にしたいコトもいっぱいあったんです!
たとえば、一緒に図書館に行って紙芝居を選んで来て、母子寮のボランティアで読むとか。録画しておいた教育テレビの福祉番組を見て、教養を深めるとか。
でも、なんか妙に気にしてしまったのです。浜田君のコトを。
「そういうのって、恋敵に対して隠れて先手を打つようなズルイ行為なのではないだろうか?」
そんな風に考えてしまいました。
青年には変にやさしい部分がありました。「全員と仲よくなって、その上で恋人を作ったり、結婚相手を見つけたりしたい!」といったような考え方です。
それって、世界平和のためには役に立つのかもしれません。でも、こと恋愛においては邪魔以外の何ものでもないのです。その妙なやさしさがライバルを救うことになり、結果、好きな人を奪われてしまうということがよくありました。
まったく損な性格です。