「僕の改革 世界の改革」 第36夜(第6幕 プロローグ ~ 5)
~第6幕~
ープロローグー
まるで、生きる意味を失ってしまったかのように動き続ける人々。
人々をあんな風にしてしまったのは僕の責任だ。意図して行ったコトではないとはいえ、結果的には僕の責任なのだ。
でも、ならば、どうすればよかったのだろうか?あるいは、どうするべきなのだろうか?
コレから『僕がどう生きていくか?』それを見つけたい。そして、できることならば、どうにかして人々を元の姿に戻してあげたい。
それこそが、ほんとうの意味で『僕の改革』であり『世界の改革』であるように思えた。
ー1ー
とりあえず、何をすべきかはわからなかった。
でも、1つだけわかっているコトがあった。それは…
「ここに居ちゃいけない!!」
それだけだけは確かだった。
僕は急いで旅の準備を整えると、側近の部下に命令を与えた。
「できるだけ心にゆとりを持って、現状維持で生きていくコト」
命令は即座に伝わっていくコトだろう。部下のその部下のそのまた部下にまで。
今の僕にできるコトは精々そのくらいだった。それ以上の命令は思いつきもしなかった。いつか、もっと理想的な解決方法が見つかったら、その時に新しい命令を下せばいい。
ー2ー
城の外に出て、街の外に出て、何年かぶりかにすがすがしい気分になれた。心の底から『解放された』という気持ちになれた。
あてどもなくブラブラと歩いていく。目的地も方角も決めずに。
実は、僕にはこういう生き方が一番合っているのかも知れない。
生きる意味も目的地も…何もなくとも、たださまよい歩くだけの人生。
どこへ行くとも知れず、誰に会うわけでもなく、風に揺られて進み続ける。ただそれだけの人生。
ー3ー
ひとりになって落ち着いて考える。この激動の数年間のコトを。
感覚としては、まるで数日か数週間か、せいぜい数カ月であったようにも感じられる。
でも、実際は数年という長い年月が過ぎ去ってしまっていたのだ。
考えてみると、それがフツーの人生なのかも。
人ひとりができるコトには限界がある。一生をかけて1つか2つ、何かしら自分で満足できるコトを成せたなら、それは人にとって充分な一生であったと言えるのではないだろうか?
そういう意味では、僕は幸せだった。
ひとりどころか、何人も何十人もの時間を生きてきたのだから。
ー4ー
この数年間の僕は心の底に感情を封じ込めて生きてきた。
『世界の改革』という目的のために、泣いたり笑ったり悲しんだりといった感情達を封じ込めて。
それは、人が持つ一種の『自己防衛本能』だったのかも知れない。そうしなければ、ここまでのコトはできなかっただろう。だから、自分の中の個人的感情を押さえ付け封じ込めることでしか対処できなかった。
でも、ほんとうはもっと感情的になるべきだったんだ。そうしなければいけなかったんだ。
そうすれば、人々ももっと別の形に変われていただろう。
僕の中に封じ込めていた感情が一気にあふれ出した。
「コレは、僕の作りたかった世界じゃない…」
ー5ー
ひとりで歩き続ける人生は、確かに気が楽だ。
でも、同時にとてつもなく寂しくもある。リンはいない。彼女もいない。もう誰もいない。気がついたら、たったひとり。一体、僕の人生はなんだったのだろう?ここに意味などあったのだろうか?
『世界の改革』という目的を持っていた頃は、まだよかった。
目の前の使命に没頭し、自分の周りに誰もいないコトにすら気がつかなかったのだから。
でも、それも終わりを告げてしまった今となってみては…
残ったのは寂しさだけであったのかも知れない。
チリ~ン…
そんな風に頭の中で考え事をしていると、どこかで鈴の鳴る音が聞こえたような気がした。
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