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作家は真実を語るのが使命

読者の中には、「だったら、あの人が喜んでくれるようなストーリーに変えちゃえばいいんじゃないの?」と思う人もいるかも知れません。

でも、そういうものじゃないんです。

「自分が、人として幸せになりたいから」などという理由で、無理やりストーリーを変えるなどというコトをやってはいけないのです。

確かに、エンディングの1つとして、「アリさんが結婚を後悔して、離婚をして、最終的にはキリギリスと結ばれる」というモノも用意されていました。でも、1度は必ず別の人と結婚しなきゃいけなかったんです!

なぜなら、それが「真実のストーリー」だから!そっちの方が作品として格段にクオリティが高いから!

「この方が読者が喜んでくれるからエンディングを変えてしまおう」とか「読者に人気があるから、このキャラクターを殺すのはや~めた!」なんて、ダメなんです。

青年は、人である前に作家であり過ぎました。これは、生き様の問題。「作家としてやっちゃいけないコト」は、やっちゃいけないんです!


問題があるとすれば、青年は「自分の人生」と「物語」を直結し過ぎたこと。でも、直結しているからこそ、リアリティのある物語が生み出せる。究極の作家になるために青年が生み出した方法は、いわば「禁断の魔術」であり「邪法・外法」の一種でした。

あるいは、それは遠い昔に決められていた運命なのかもしれません。14歳の頃、「つまんないな…」と思いながら授業中にボ~ッと学校の窓から外を眺めていたあの日々。「史上最高の作家になるのだ!」と決心したあの日から決められていた運命。

言い換えれば、それは「マスター・オブ・ザ・ゲーム」の生み出したシステム。

現存する…あるいは、今は存在していないけれども、今後誕生するであろう全ての作家。歴史上に残るありとあらゆる一流と呼ばれる作家たちを遥かに凌ぐくらいの能力を持ち合わせた存在。

そのような者になるためには、人を超える必要があったんです。己の人生と物語を直結させ、世界を吸収し、「幸せ」も「悲劇」も全部全部、その身で受け止める。そうして初めて、「今後数百年に渡って読み継がれる作品」は生まれ、「史上最高の作家」となれるのです。

恐ろしいほどのレベルで目的や任務に執着し、そのためには自分自身の人生が破綻してしまうことすらいとわない。それが青年に与えられた能力であり、生き方でした。


これは狂気の物語。

「史上最高の作家」となるために、自らの人生だけではなく「世界で一番大切な人」さえも生贄にしてしまった1人の人間の物語…

noteの世界で輝いている才能ある人たちや一生懸命努力している人たちに再分配します。