「頭の中の声」と「心の想い」と、どちらに従うのが正解か?
「あの人」と縁が切れれば、目的が1本化され、いい小説がどんどん書けると思っていたのに、そうはなりませんでした。むしろ、状況は以前よりも悪くなってしまったくらい。
あの人との微妙な関係が、物語を生み出してくれていたのです。
ここで、青年は実家に帰るべきだったんです。そうすれば、まだ再起をはかることだってできたかも知れないのに…
けれども、「あの人」の亡霊や、妙なプライドが邪魔してしまいました。頭の中では「実家に帰るべきだ!」とわかっていたのに、心はそうさせなかったのです。
結果、時間ばかりが無駄に過ぎていきます。何者にもなれないまま、中途半端に無為な時間を過ごすことになりました。
もちろん、それなりに楽しいコトもあったし、それなりに思い出になるような出来事もありました。でも、それらはみんな「代わりが効く」んです。あってもなくてもどっちでもいいし、「絶対に必要なモノ」ではありませんでした。何もしないのはダメだから、とりあえず埋めておいたといったようなものです。
結果的に、青年が実家に帰ったのは、それから3年が過ぎてからのコトでした。この3年間を有意義に過ごしていれば、もっと別の何者かになれていたかも知れないのに…
人生には、そういうコトってあるんです。わかっていても行動できないし、「そっちじゃない!」と頭の中で声が響いているのに、正しい声に従えない時というものが。ちっぽけなプライドやつまらない意地にこだわってしまって。
それに「頭の中の声」よりも「心の想い」に従った方がいい時もありますしね。
「理論」か?「感情」か?どちらが正しいのかは、時と場合によるのです。たまたま、この時は理論に従った方がよかったのに、感情を優先してしまっただけで。
実家に帰ってきた時には、身も心もボロボロでした。高速道路のトラックに乗って東京に向かってから10年近くが経過していました。
あの頃は、果てしないほど大きな夢を抱いていたのに、今は違います。結局、何もできなかったし、何にもなれはしなかったのです。
今は、ただゆっくりと眠りたいだけ。それだけが青年の願いでした…
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