「僕の改革 世界の改革」 第18夜(第2幕 38 ~ エピローグ)
ー38ー
その日を境に僕は変わった。
僕は、すぐにでも基地に帰りたかった。帰ってやるべきコトが、いくらでもあると感じた。
そこで、僕はみんなに『帰ろう』と提案した。
「そうね。ここにいると、なんだか気分が悪くなるし」
リンは、そう言って賛成してくれた。ほかのみんなも、それでいいと言ってくれた。
ただ、『彼女』は街に残ると言ってきかなかった。
「私は、この街に残ります。残って、ここの人たちにできるコトをしてあげたいのです」
僕は反対した。
「ダメだよ。あんまり長いコトこの場所にいたら、君まで無気力生物になってしまう!」
でも、彼女は首を振って答えた。
「それでも構いません。私の運命は、この先にしかないという気がするのです。無気力生物になった時はなった時です」
彼女の意志は固かった。僕には連れて帰れないと感じた。
そうして、僕らは、僕らの基地に帰ったのだった。
彼女1人を街に残して。
ー39ー
基地に帰ると、僕はガムシャラには働き出した。
司令官に進言し、我が部隊の人員補強をはかった。
新しい隊員も集めてきた。
いくつもの街を回り、大勢の人々と会った。
やる気の原因と無気力の関係についても、研究を重ねさせた。
ある日、僕は無理矢理2人を連れてこさせた。
ホーとマンガンの2人をだ。
「お願いだ。もう1度、あの頃のように協力してはくれないだろうか?」
2人は、やはり顔を渋らせたが、明らかに前の顔とは違っていた。
ホーが言った。
「隊長は、もういないんだぜ。2度と帰ってきやしない」
「僕が隊長になるさ。君らの新しい隊長に!」
マンガンも言った。
「あの頃は戻らない。同じ思いも、もうたくさんだ…」
「なら、新しい日々を作ればいい!同じ思いは、もう2度とはさせない!」
それからも、2人はいろいろとグチをこぼしたが、僕が反論する度に、その顔に光が戻って来るのがよくわかった。
ついに、2人が言った。
「そうだな…ボ~ッとしているのにも、もう飽きたな」
「ちょっと、おもしろそうかも知れない」
「どうせ、ムダな人生なら…」
「何かに没頭して、ムダな方がいい」
「行くか」
「行こうか」
『決まりだな』
こうして、ホーとマンガンを加え、再びあの頃のメンバー4人が揃ったのだった。
そして、僕はもう1度『彼女』に会いに出かけた。
ー40ー
彼女は、まだ街にいた。
無気力生物によって崩壊した街に…
彼女は、やつれていた。疲れていた。今にも消えてしまいそうな危うさがあった。
その彼女が言った。
「どんなに進歩しても、進化しても、人はどこかで生きることを諦めてしまうのかも知れないわね…これが、神様が出した結論なのかも。人の増え過ぎたこの星に出された結論なのかも。なんの混乱もなく、自然と人はその役割を終え、収縮していく…どう?ある意味で、とても理想的な結論だと思わない?」
「違う!僕は、そうは思わない!」
「じゃあ、あなたは、まだ生きる価値のある人なのね。でも、私はもう…」
「そんなことはない!僕を君を連れていく!だって、そのために生きてきたんだもの!君なしじゃ生きて行けない!」
「ほんとうに?ほんとうにそう思う?」
「思うさ!あたりまえじゃないか!!」
「私は…私は、そうは思わない…」
「なぜ、なぜだ!?」
「だって、私は役割を終えたもの…私にとっても、あなたにとっても…」
「そんなことはない!少なくとも僕には君が必要だ!」
「果たして、ほんとうにそうかしら?私は、あなたの活躍をいつも見ていたわ。でも、あなたの側にはいつも1人の女性がいた。そして、私は思ったの『ああ…私の役割は、完全に終わったんだわ』って」
リンのコトだった。
確かに、リンはいつも僕の側にいた。
「でも、それは君が現れるまでのコトで…」
「そんなに都合のいいコトにはいかないわ」
「それは…」
「私は役割を終えたのよ」
「そんなコト…」
「さあ、行きなさい。縁があったら、また会えるわ。その時に、ほんとうの結論を出しましょう。それまでに私もやる気を取り戻しておくから。ただ、今は疲れたの。だから、少し休ませて…」
彼女は変わってしまった。僕には、もうどうしようもなかった。
でも、何もかもが終わったと考えるには、まだ早いような気がした。
彼女は言ったではないか。
『また、会いましょう…』と。
そして、その時にこそ、ほんとうの結論を出そうとも。
ーエピローグー
世界は、変わらない。
でも、僕の中では、確実に何かが変わっていた。
もう、僕は昔の僕ではない。
責任ある立場にも立っている。
背負っているものも、たくさんある。
これから、僕はどこへ向かって行くのだろうか?
いや…どこに向かうかなんて関係はない。
たとえ、どこへ向かって行くにしろ、僕は変えてみせる。
僕と、僕が関わる、この世界そのものを!
~ 第2幕 完 ~
noteの世界で輝いている才能ある人たちや一生懸命努力している人たちに再分配します。