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海村さんと一緒にテレビの収録に行く

さて、マンガの学校で新しい仲間たちができた青年でしたが…

その中でも一風変わっていたのが海村さんでした。海村さんは金髪で長髪の男性でしたが、経歴もまた普通の人とは違っていました。

以前は大阪に住んでいたそうで、言葉の端々にちょいちょい関西弁が飛び出します。遠泳漁業の船に乗り込んでいたこともあるそうで、ロープの結び方などに詳しい人でした。

今はお父さんと2人暮らしで船橋の辺りに住んでいます。総武線に乗って、アニメーターの勉強をするために毎日学校に通っているのです。

ただし、アニメーターになりたいわけではなく、目指しているのはマンガ家でした。一見するとこの選択肢はおかしいなと思われるかもしれません。でも、画力を上げるという意味では、非常に正しい選択だと言えるでしょう。


ある日、マンガの学校に「テレビ収録」の話が舞い込んできました。深夜に所さんがやっている番組で、出演してくれる人を募集してるというのです。所さんというのは、所ジョージさんです。

青年はあまり興味がありませんでしたが、海村さんは「絶対に出演する!」と言ってきかないので、ついていくことにしました。

「クイズ大会をやって、優勝した人はマンガ家の赤塚不二夫先生に会うことができる」というのが、今回の番組の趣旨。

海村さんは、自分で描いたマンガをコピー用紙に印刷し、本を作っていたのです。「そのマンガを絶対に赤塚先生に読んでもらうのだ!」と凄い意気込みで、鼻息を荒くしています。


番組収録の当日。どこかの広場に集められたメンバーたちは、1人ずつ所さんにコメントを求められました。

「君はどのようなマンガ家を目指しているのかな?」という質問に、みんなそれぞれの夢を語っていきます。

青年は「何か変わったコトを言ってやろう」と思って、セミナー講師のシノハラさんのところで学んだコトを披露しました。

「将来は、偉大な経営者になりたいと思います!」と、青年が元気よく答えると、「コイツは話が通じないな…」と思ったらしく所さんは「あっそう」と言って、次の人の所に行ってしまいました。

「さすがに、ちょっと狙い過ぎたかな?せめて『偉大な経営者のマンガを描きたいと思っています』くらいにしておけばよかったかな?」と青年はちょっぴり反省しました。


その後、クイズ大会が始まるのですが、なんだか様子がおかしくなってきます。

最初は普通にクイズ大会をやるはずだったのですが、正解率が低すぎたせいか、ルールが変更されました。まず最初に問題と解答を全員に覚えてもらい、それからクイズ大会をやるというのです。

「これって、ヤラセってヤツじゃないかな?大丈夫なのかな?」と青年はちょっぴり心配しましたが、別にそんなに出たかった番組でもないので、あまり気にしませんでした。


そして、見事優勝したのは…

なんと!あの海村さんでした!

海村さんは、こういうとこ抜け目ないのです。自分の夢を持ち、信念を貫き通し、意地でも目的を達成してしまうのでした。それって、シノハラさんやナポレオン・ヒルが言っていたコトと同じだとも言えます。

青年は海村さんのコトを「ムチャクチャな人だな…」と思いつつも、同時にある意味で尊敬するようになります。


番組の収録が終わり、わずかな出演料をもらうと、本来ならばそこで解散のはずでした。ところが、赤塚先生が懇意にしているお寿司屋さんが「このまま帰すのはかわいそうだ…」というコトで、出演者みんなにお寿司をごちそうしてくれることになりました。

回転寿司とかチェーン店ではなく、ちゃんとした個人経営の手で握るお寿司です。青年は「なんてやさしい人なのだろうか!」と感激しました。


後日…

収録されたテレビ番組の深夜放送を見ると、海村さんが赤塚先生に自作のマンガを見せているシーンがガッツリと映っていました。

でも、海村さんが持っていったのはガチガチのハードなファンタジーマンガであり、赤塚先生はギャグマンガのマンガ家だったので「なんだか、よくわかんないなぁ」みたいな反応をされていました。

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ヘイヨー
noteの世界で輝いている才能ある人たちや一生懸命努力している人たちに再分配します。