「3つの願い」の内1つが地に落ちる時(理想の女性編 ~エピローグ~)
図書館でピーター・パンの本を読んで涙して、どのくらいの時が経過したでしょうか?
風のうわさで、「あの人が結婚した」と知りました。結婚の1年後、赤ちゃんも生まれたそうです。生まれてきたのが男の子か女の子かも知りません。
あの人が結婚したのは、ちょうどあの本を読んだ頃のコトでした。
青年は「やっぱりな…」と思いました。遠く離れた場所に住んでいても、以心伝心で伝わってきていたのです。
その後、あの人がどうなったかは知りません。元気でやってるのか?幸せに暮らしているのか?それとも大変な目にあっているのか?結婚を後悔しているのか?そうでもないのか?何も伝わってこないのです。
「過労で倒れたりしてないだろうか?」と、時々、青年は心配します。
いつも、みんなのために無理をする人だったから。学校の先生をやりながら、結婚して、子育てや家事もやって。きっと、また睡眠時間を削り、徹夜もしているのでしょう。そんな生活、長く続くはずもないのに。
もしかしたら、学校の先生は辞めてしまったかも?そうでなくとも、病気で長期入院してる可能性だってあります。でも、青年には知りようがありません。
手元に連絡先は残っていましたが、直接確認する勇気は、もはや残されていなかったからです。
東京で知り合った人たちにも連絡を取らなくなりました。あの人に関連するものは全て消してしまいたかったから。
そう!世界は、あの人を中心に回っていたのです。
「世界で一番大切な人」を失った今、それ以外の全ては無意味・無価値となってしまいました。だから、残り全員失うくらいの代償を払わないと釣り合いが取れないと思ったのです。
少年時代より夢見続けてきた「3つの願い」の内、「理想の女性」は消え失せてしまいました。
なので、この物語はここで終わりです。
人としてはね。
でも、青年にはまだ「作家としての人生」が残されていました。
何もかも全てを失っても残し続けてきた最後の夢「究極の作家への道」が…