1年間の労働の日々で失ったモノと得たモノ
最初の半年を派遣として、残り半年を正社員として働いて、青年は様々なモノを手に入れ同時に失いました。
主に失ったのは「人としての心」や「時間」
逆に、手に入れたのは「リアリティ」や「持続力」でした。
1年間の労働の日々で学んだコト。それは…
「労働者として優秀になればなるほど、作家としてはどんどん落ちぶれていく」
「全員の要望をかなえようとすると、自分を失っていくし、全部がダメになる」
「朝8時半から夕方5時半まで拘束されるような、まともな仕事は向いていない」
…といったようなコトでした。
青年の持つ自由闊達な性格を最大限生かすためには、制限を取っ払わなければいけません。制限が増せば増すほど、その能力は落ちていきます。
「カゴの中の鳥」は最悪!「なんでもあり!」の環境下でこそ、能力を最大限発揮することができるのです。
10代の大半を制限された環境下に置かれて、思うように能力を発揮できなかったように、この1年間は自分の能力を殺した時期でした。
…とはいえ、この1年間の経験で役に立ったコトもいくつかありました。
「空想世界が拡大し、密度を濃くした」
「現実感が増した」
「持続力を手に入れた」
皮肉な話ではありますが、やりたくもない嫌な仕事に従事することで、少年時代に生み出した「魔物の卵たち」は次々と孵化し、成長を遂げました。生まれてきた魔物たちは、今や「伝説の悪魔」の命令を待っています。
このコトは、ファンタジーの世界を舞台とした小説を書く時に大いに役に立ちました。
それから、現実の労働に没頭することで、ファンタジーだけではなく現実世界を舞台とした物語にもリアリティを与えることができるようにもなりました。
さらに「持続力」を手に入れたことで、これまで苦手だった長編小説を完成させる道も開けます。小説自体は空想能力を必要としますが、「小説を最後まで完成させる」というのは現実世界の能力ですからね。
それまでの青年は、とかく空想世界に偏りがちでした。だからこそ人とは違った人生を歩めたし、だからこそおもしろかったとも言えるのですが…現実に作品を完成させることができなければ、誰からも認められはしません。単なる妄想人間。
1年間、作家としての能力や活動は封じられていたに近い状態でしたが、それゆえに作家としても爆発的な成長ができたのです。
ここで青年はもう1つ学びます。同時にそれは「伝説の悪魔」として学んだコトでもありました。
「能力は封じられれば封じられるほど、再び解放された時に飛躍的に成長している」
noteの世界で輝いている才能ある人たちや一生懸命努力している人たちに再分配します。