「脚本の力」と「演出の力」
もしかしたら、読者のみなさんにとって、ここまで「キザオ君のイメージ」ってあまりよくなかったかもしれません。
確かに、人としては「どうかな?」と思う部分も多々ありました。ただし、ただ1点!演出家としてはズバ抜けた能力を持っていたんです!
だから、中崎さんが持ってきた「よくわからない脚本」も、キザオ君の能力でどうにか舞台で上演できるレベルまで持っていくことができました。そのくらい演出の力って重要だったんです!
ちなみに演劇における「演出家」というのは、映画やドラマでいうところの「監督」にあたります。作品の内容に関しては、最も権力を持ったポジションです。
そして、青年が任されていた劇団の「主宰」というのは、いわば「プロデューサー」です。弱冠22歳の時点で、プロデューサーのマネごとをやってたんですね。これは、貴重な経験となり、のちにいろいろと役に立つことになります。
青年がキザオ君から任された最初の任務は「劇場を押さえる」ことでした。まずは、舞台を上演する場所とスケジュールが決まらなければお話になりません。
実はこの時点で、物語に登場する「伝説の魔女ランシーヌ」にあたる女性が存在してたんです。
ただし、スケジュールの関係で、彼女に出演してもらうと、他の多くのメンバーが参加できなくなってしまいます。「なるべく多くの役者に出演してもらうか?」「少人数になっても構わないので、一番重要な人に来てもらうか?」選択を迫られていたわけです。
後者を選ぶと、最悪のパターン、人が足りなさ過ぎて上演自体が中止になってしまう可能性がありました。
なので、泣く泣く前者を選んだんです。結果、彼女はランシーヌになりそこなってしまいました。
上演日は、3月の最終週に決まりました。奇しくも、「世界を変える戦い」のちょうど1年後にあたります。
青年は演劇についてはズブのド素人でしたので、全てキザオ君から教わって、要望通りに任務を遂行していきます。
たとえば、「稽古をする場所を押さえて欲しい」と言われれば、東奔西走し、あちこちの区民会館や公民館で部屋を借りてきます。
それだけでは足りなかったので、「おちゃのこ祭祭」で知り合ったクラシックバレーの先生に頼んで、練習ルームを貸してもらいました。
※「おちゃのこ祭祭」は、この時に行われたイベント
もちろん、部屋を借りるのにもお金がかかります。必要経費は、青年が全部肩代わりしました。
実はお金の問題もいくらか発生してしまったのですが、それはいずれ語ることにいたしましょう。
とにかく、この時点では練習場所を押さえるのに精いっぱいで、それ以外のコトには頭が回りませんでした。おかげで、それなりに時間を確保して充実した練習ができたはず。
ただし、ここでも1つ問題が発生してしまいます。キザオ君は非常に優秀な演出家でした。優秀ではあったんですけど…
代わりに「鬼教官のような性格」だったんです!指導がムッチャ厳しかったんです!
noteの世界で輝いている才能ある人たちや一生懸命努力している人たちに再分配します。