みんなから尊敬され愛される人よ。私が応援団長になるから!
告白に失敗したと思い込んだ青年は次なる手を考えます。
手紙を書こう!と思ったんです。
なんて書いたのかはよく覚えていませんが、おそらく次のような内容だったのでは?
いきなり変なコトを言ってしまってごめんなさい。
あの時は「好きだ」と言ったけれど、好きにもいろいろあるのです。
たとえば「女性として好き」「人として好き」といった感じで。
告白自体は否定せず、うまく今後の関係をつなげていけるような内容にしたつもりでした。
実際に便箋にメッセージを書き、封筒に入れ、切手も貼りました。でも、踏ん切りがつかず、なかなかポストに投函できません。そうこうしている内に時間ばかりが過ぎていきます。
すると月曜日…
驚くべきコトが起きました!なんと、あの人の方から手紙が届いたのです!
まさに以心伝心!手紙を出そうと思ってたところに、相手の方から手紙が送られてきたのですから。
2人で会っていたのが土曜日のお昼から夜にかけてだったので、きっとその日の内か翌日の朝にでも手紙をしたためてポストに投函してくれたのでしょう。
青年は天にも昇る気持ちで、丁寧に便箋の封を切ります。
急に好きだなんて言われて驚きました!
あなたはみんなから尊敬され愛されている人なのに。その一方で孤独な部分があると知りました。
大丈夫!自信を持って!私が応援団長になってあげるから!
要約すると、そのような内容が書いてありました。
たぶん、土曜に会った時に「ボランティアも一生懸命やってるけど、大変過ぎる。世界中の誰から信じてもらえなくて寂しい…」みたいなコトを言ったので、その話を覚えていてくれたのでしょう。
青年は、何度も何度も手紙を読み返しました。受け取り方によっては「私にはおつき合いしている人がいるので、あなたとはつき合えません」とも取れますが、同時に「誰よりもあなたのコトを信頼しています」とも取れます。
「複数の読み方ができるいいメッセージだな」と思いました。
それから、青年は自分の書いた手紙を近くのポストに投函すると、さっそくあの人にお礼の電話をしました。
「素敵なメッセージをどうもありがとう♪ちょうど同じタイミングで手紙を書いてたんだよ」と伝えます。
どうやら、彼女の方も驚いたり喜んだりしてくれたようでした。
*
それからは、毎日あの人のコトを考えて暮らしました。
木曜日にはちゃんと母子寮のボランティアに行き、つつがなく自分の使命を果たします。いつも通り内山さんは1時間ほど遅れてやって来て、イスに座ったままでしたし、浜田君もさらに遅れてやって来てボランティア活動の残り1時間くらいをボ~ッとイスに座ったまま過ごしていました。
でも、別にそんなコトは関係ありません。だってすぐ側に自分だけの応援団長がいて支え続けてくれているのです。
少年時代から待ち続けてきた「理想の女性」と出会い、「世界で一番大切な人」として尊敬し信頼してくれています。心の底から望んでいた「お互いがお互いを信頼し、尊敬し、高め合える仲」の人を手に入れたのです!
果たして、これ以上の幸せがあるでしょうか?
あるいは、ここで終わりでもよかったのかもしれません。何もかもがこのままで、時が止まった世界で暮らし続けられればよかったのに…
でも、世界の時間は動き続けています。いつまでも「夢の国」で暮らし続けることなどできはしません。いずれにしろ、いつかはこの時間にも終わりを告げる時がやって来たはず。たとえ、今すぐでなくとも。いずれは…
それに、青年は「それ以上の関係」を望んでしまったのです。
そのコトにより、運命の歯車はさらに回転のスピードを増していくことになるのでした。
noteの世界で輝いている才能ある人たちや一生懸命努力している人たちに再分配します。