「僕の改革 世界の改革」 第34夜(第5幕 21 ~ 25)
ー21ー
そして、ついに『革命の日』は訪れる。
世界改革連合の大部隊がこの国の国会に攻め入ることになったのだ。
もちろん、それを指揮しているのは、まぎれもなく他の誰でもないこの僕だ。
しかし、物凄いスピードで進んでいく現実に、常に違和感がつきまとう。まるで僕の心は全く別の場所にあるようだった。
「このまま進んでいいのだろうか?何かとんでもない間違いをおかしているのでは?どこかで進むべき道の選択を誤ってしまったのでは?」
そんな僕の思いをよそに革命は進んでいく。
もう何も指示しなくとも計画は勝手に進む。たとえ、僕が一言も発しなくなったとしても、誰かがどこかでうまいコトやって、改革は行われてしまうだろう。成功するか失敗するかなんて関係なく。
もはや、誰の手にも止められない状態にあった。
ー22ー
完全に心はカラッポのまま、僕は革命軍の先頭に立って指揮をする。
誰かがコレを止めてくれればいいのに。でも、そんなコトができる者がこの世界に存在するだろうか?もしかしたら『彼女』ならば、それができるかも…
なぜだかわからないけれど、そんな風なコトをボンヤリと考えていた。
目の前の人々は、ビデオの早送りボタンを押されたみたいにとんでもないスピードで動いている。僕の頭の中がスローモーションで動いているのとは全く逆に。
ー23ー
革命は驚くほどあっけなく終わった。
ほとんど誰も抵抗することなく。ほとんど誰も傷つくことなく。ほとんど誰も血を流すこともなく。
国家の勢力の半数は、既に我々世界改革連合に加わるか賛同するかしている者たちで、残った人々は何もする気はなく、抵抗どころか動くことすら面倒臭がっていた。無気力生物化していたのだ。
「革命家ポルトーテス!バンザ~イ!!世界改革連合!バンザ~イ!!」
革命の成功を喜び、人々は口々にそう叫ぶ。
それでも僕の心はカラッポのままだった。
占拠された国会を前に、僕は1人ポツリと呟いた…
「茶番劇だな」
ー24ー
新しい政府が誕生する。
新しい国家が建国されるに伴って、新しい法律が定められ、新しい国王が作られた。
そして、僕はそこの初代国王となった。誰にも異存はなかった。
「国王ポルトーテス!バンザ~イ!!世界改革王国!バンザ~イ!!」
人々は、口々にそう叫ぶ。
だが、人々の支持とは裏腹に、僕の心はえも言われぬ不安で一杯だった。
不安の原因がなんであるのかは、全くわからなかったが…
ー25ー
それから、新しい首都が作られた。
僕は首都に名前をつけようと、再び名前屋を呼び出した。
名前屋は僕のコトを恐れ、敬服し、土下座したままで、なかなか頭を上げようとしなかった。
「わ…私のお売りした名前のお方が、今や国王様とは…」
僕はひさしぶりにフッと可笑しくなった。忙し過ぎる時間と、ズレていく感覚の中で、人としての感情など忘れかけていたけれど、ほんとうにひさしぶりに心の底にあたたかいモノを感じることができた。
そうして、新しくできた街に名前をつけた。革命都市『ガダメポートレス』と。
noteの世界で輝いている才能ある人たちや一生懸命努力している人たちに再分配します。