「僕の改革 世界の改革」 第7夜(第1幕 21 ~ 25)
ー21ー
その日から隊長は姿を消した。
僕には、何が起こったのかサッパリだった。
ホーとマンガンもサッパリのようだった。
「どうしたんだ、一体?」
「どうしたんだ?」
「こんなコト初めてだ」
「この基地始まって以来だ」
「これから、どうなるんだ!」
「どうなるんだ!」
「まったく、わからん…」
「まったくだ…」
気になって、僕はリンに尋ねた。
「ねえ、リン…隊長は、一体、どこに行っちゃったんだろうね。いつ戻ってくるのかな?」
リンがポツリと答える。
「あの人は、もう戻って来ないわ…」
ー22ー
「隊長が…戻って来ない?どうして、そんなことがわかるんだい」
「どうしても…いえ、なんとなくよ」
リンは何かを知っているようだったが、僕はそれ以上聞くのはやめた。
代わりにこう言った。
「急にヒマになっちゃたね」
「でも、こういう時期も必要よ。これから何が起きるかわからないんだから、こういった時間にしっかりと休息を取っておかないと」
「そうだね。これまで忙しすぎたからね」
僕は前から疑問に思っていることを聞いてみた。
「僕らは、ほんとに恋人なのかな?」
「そうよ。どうして?」
「どうしてって…何だか全然恋人らしいくないなと思って。任務、任務で、いつも仕事ばかりしている感じで…」
「こういう形の恋人も存在するのよ」
「そうかな」
「そうよ。それとも何か不満?恋人らしいことでもしてみる?どうせ暇なんだし」
「いや、別にそういう意味じゃ…」
なんだか拍子抜けするな…
「今にわかるわ。いろんなコトが」
「わかる?何が?」
「何もかもがよ。何もかもがつながる日がやってくるわ。やがて…」
「そういうものかな?」
「そういうものよ」
わかるとかわからないとか、そういうものなのだろうか?
その時の僕は、そんな風にしか考えられなかった。
でも、まさか、ほんとに何もかもがつながる日がやって来ようとは…
もっとも、それはまだずっとず~っと遠い先のコトになるのだけど。
ー23ー
基地は、もぬけの殻であった。
ホーもマンガンも消えしまっていた。一体、どこへ行ってしまったのだろうか?
残されたのは、僕とリンの2人だけだった。
「2人だと寂しいね。ガラ~ンとしちゃって」
「なんだかね」と、リン。
「結構広かったんだね、ここ。今まで気がつかなかったけど」
「街へ…行ってみましょうか?」
「そう…だね。ここでボ~ッとしていても仕方がないからね」
そう言って、僕らは2人で街へと繰り出す。
街は、なんだか以前とは違っているように見えた。どこがどうという風には説明できないけれど、感覚的に違和感を感じた。何となくイヤな感覚だ。
ふと昔の感覚が甦る。
この状況、どこか…どこかで前に味わったコトがあろうような…
トルルル、トルルル…突然、携帯が鳴った。
ー24ー
僕は、電話に出る。
「ハイ、もしもし。ナンバー24ですが」
「私だ」
「あ、隊長!今までどこに…」
「いいか、よく聞くんだ」
「はい」
「これが最後の任務になるだろう。よく聞いて、確実に実行してくれ」
「は…はい」
「基地を…爆破するんだ」
「爆破!?秘密基地をですか?」
「そうだ。いいな?やり方はリンが知っている」
「でも…」
「これが君に課せられた最後の任務だ。それが終われば、あとは自由にしていい」
「わかりました…」
「任務が完了したら、もう1度、私に連絡をくれ。そうしたら、今度は街へミサイルを打ち込む」
「ミサイル!?街へ!」
「そうだ。無気力生物たちの侵攻は思ったよりも進んでしまっている。ここで食い止めておくには、残念だが現状ではこの方法しかない」
ピッ…
そう言って、隊長の携帯が切れた。
ー25ー
「基地を…あの秘密基地を爆破してくれってさ」
「基地を?」と、リンが問い返す。
「そう。そして、それが終われば、僕らはお役御免なんだと」
「オヤクゴメン?」
「そう…自由になるってコトさ」
「自由になって…それから、どうするの?」
「さあ?でも、その後のコトはその後になってから考えればいい。とりあえず任務をこなさないと」
「そうね」
「やり方は、君が知っているって」
「ええ…暗証番号を入れて、このボタンを押せばいいの」
そう言って、リンは何やら機械を取り出す。
「それが自爆装置のスイッチ?」
「そうよ。いい?じゃあ、行くわよ」
そう言って、リンは自爆スイッチのボタンを押す。ここから基地までは距離があったが、遠隔操作で自爆させられるのだろう。
機械が音声で伝える。
『ヒミツ基地、自爆マデ、アト30分デス』
その瞬間、僕の頭の中に1つの思いが飛び込んできた。
noteの世界で輝いている才能ある人たちや一生懸命努力している人たちに再分配します。