浮気妻を尾行して……
真実、私は愛していた。
心の底から彼女を愛していた。
辺り一面の畑が広がる片田舎。膝よりやや高い程の古い石垣が続く丘陵。丘の上には一本の大木が聳えている。晴れ渡る蒼穹の昔日、私はその大木の下で彼女に求婚した。
彼女の返事は「Yes」だった。
それから私は出世をした。若くして銀行の副頭取になった。
そして妻の心は私から離れていった。
相手はプロゴルファーだった。ある日、私は妻を尾行した。一軒の民家でプロゴルファーとの逢い引き。
私の心は空虚だった。ひたすらの深淵が何処までも続いていた。
だからウイスキーを流し込んだ。足りなかった。車から降りた。ウイスキーの瓶が地面に落ちて割れた。右手にはリボルバー。そのまま部屋に侵入した。裸体で繋がる男女。驚愕に凍りついた顔――妻の顔。一瞬の後、妻の顔に怒りが浮かんだ。
何故あなたがここにいるの? 私たちの愛の一時を、何故あなたなんかが邪魔をするの? 許せない。絶対に赦せない。そもそもあなたなんかと結婚したのが間違いだった。
そう言われている気がした。いや、実際に言われたのかもしれない。それはもう誰にもわからない。
とにかく私は引き金を引いた。純白の壁に血の脳漿がぶちまけられた。
プロゴルファーの絶叫。銃口を向けた。惨めな命乞い。ペニスが信じられないくらいに縮こまっていた。撃った。血と脳漿と死。撃った。撃った。撃った。撃った。撃った――カチリ。弾切れだった。私は銃弾を詰めなおすとさらに撃った。
やった。やってしまった。殺してしまった。捕まりたくはない。ここで捕まれば私は終身刑だ。そうなればリタ・ヘイワースのポスターの後ろで逃亡するための穴を掘らなくてはならなくなる。そんなのはごめんだ。なんとしてでも完全犯罪を為し遂げなくては。
そこで私ははたと気づいた。
誰かに目撃されてはいないだろうか?
市原悦子的な人物が後ろでこっそり見ているかもしれない。
私は恐る恐る後ろを振り返った――
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