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17灰、56
逃げ出したんだ。赤みががった灰色の吐息から、逃げ出したんだ、ほんの少しの嫌悪感から
変わる変われるめぐるめく、肺、空気の塊、吐き出して、狭い借用地に縮こまってしまっている。肺の空気が不快で、吐き出す息が不快で、物音が怖くって。
チンケなつまらないことに怯え、もっと遠くにいる化け物と戦う度胸すらないまま、「楽しく戦えばいい」だとか、目を瞑っている他人に自己嫌悪で悪口吐いて、
肺の空気が気持ちが悪い…私はあの遠くの巨人が敵ではなくおもちゃになるまでにゆっくり別人になりたいのか、なるべきだと考えている、
生きていたい、死んでないだけじゃなくって、生きていたいと思う。肺の空気が不快だ。寒々しい、赤みを帯びた灰色の吐息を全て吐き切ってしまいたい。僕は空気なんかに頼らずに生きていきたいんだ、一人で。ふぅと肺の中の空気を噴き出すと肺は少し縮むけれど、すぐに耐えられなくなって新しい寒々しい空気が僕の内臓を侵略にくる。
自身にからまる数多の鎖を忌々しく見続けるマリオネットに違いはないのだけれど、それを受け止めたくはなくて、それまでしてしまえばぼくは生を謳えないんだ。
不快感というものは減れば減るほど弱いものですら強く感じるようになってしまう。ぼくは不快感から逃げ切るほどの足は持っちゃいないので、
肺の中の空気が不快だ、肺の空気が不快だ、
ふかいだ。