Fight!

「ファイト!闘う君の唄を

闘わないやつらが笑うだろう

ファイト!冷たい水の中を

震えながら登ってゆけ」

~中島みゆき ファイト~

今日、元気を貰おうと風呂場で聞いていたつもりが、ふとあの時の情景がフラッシュバックして、嗚咽をあげて泣いてしまった。


今から8年前、埼玉からパーソナルトレーナーとして働くために東京に越してきた。

大手パーソナルトレーナージムでの採用が決まり、研修過程を終えて、テストを迎えた。

俺のどこが気に食わないのか、研修担当の社員はやたらと俺だけに当たりが強く、ほかの2人は難なくテストを合格するものの、俺だけ不合格。


そんな日が3日続き、明日受からなければそれ以降の給料は出ないままテストだけを受けに職場に行くという日が永遠に続く。

実質の首。

そんなプレッシャーの最中、とぼとぼと帰っていると、高円寺駅の高架下で聞こえてきた。

中島みゆきさんのファイトだ。

「ファイト!闘う君の唄を

闘わないやつらが笑うだろう

ファイト!冷たい水の中を

震えながら登ってゆけ」


歌っていたのは、冨田麗香さんという方だった。

あまりにも透き通る歌声と高架下という環境も相まって、文字通り壁が振るえる程の歌声が響き渡っていた。


俺は思わず立ち止まり、自然と涙があふれていた。

気づいたら、財布の中身をひっくり返し、彼女のギターケースに入れていた。

少々びっくりした様子だったが、ニコッと笑い、「ありがとうございます!」と言ってくれた。

後日、見事テストには合格し、パーソナルトレーナーとしてデビューができた。


それから2年後、独立をしてそこから6年、フリーでトレーナーとして活動した。


そして今年2020年、コロナが東京を襲った。


活動自粛中は当然、報酬は出ない。

去年から細々とやっていたUberEatsだけが頼りの綱。


副業でやっていたUberが、まさかの本業になってしまった。

それも、7月8月までは猛暑だということもありそこそこ稼ぎもあったが、9月から減り始め、10月は月収12万円台にまで落ち込んだ。

もともとバカみたいにカッコつけて買った高級時計のローン、結局使う機会のなかった心理学の学費等の支払いもあり、それに加えて家賃だ。


もう数か月滞納している。


11月はもっとひどい。10万円を切る勢いだ。時給にして500円程度。


自由に働きたくてフリーランスになったのに、今は誰よりも不自由に生きている。

今日も朝から晩まで自転車をこぎ続け、鳴らない注文を待ち続けた。


途中、自転車が壊れた。

惨めだった。


悔しくて、情けなくて、みっともなくて・・・



「カッコ悪」



もう、つまらないプライドは捨てて埼玉に戻ろう。


心がこれ以上ないほどにボロボロになりながら、今日はそんな覚悟を決めた。


今年いっぱいで埼玉に戻る決心をした。


そんな夜、風呂場で元気を貰おうと冨田麗香さんが歌うファイトをYouTubeで聞いた。

給湯器が壊れていて、シャワーしか使えない。


いつもより少し熱めに温度を設定して、歌を流した。

「ファイト!闘う君の唄を

闘わないやつらが笑うだろう

ファイト!冷たい水の中を

震えながら登ってゆけ」


8年前の、あの日の光景が蘇った。

止めどなく涙があふれてきて、嗚咽に変わった。


クソッ クソッ クソッ・・・



戻ろうと思えば戻れた。


お客さんに連絡を取って戻ってもらうこともできた。

ジムに頭を下げて再度活動させてもらうようにお願いすることもできたかもしれない。


でも、もう決心したこと。

それに、戻ったところで、自分の体になにかあったらまたこの繰り返し。


最後のお客さんに辞める事を伝えたときに、決心したんだ。


自分の身、社会にもしも何かあっても、次は大丈夫なような仕組みを作っていこうと。


それを本当の自分に、ありのままの自分で生きていける釣りで、築いていこうと。


でも…でも…


積み重ねた8年と、辛かった思い出、ウキウキした思い出、そのすべてが走馬灯のように駆け巡って、涙が止まらなくなった。


俺って負け犬なのかな。


ダサいだろうな。


みっともないだろうな。


32にもなって尻尾巻いて埼玉に帰って、まだ親のすねをかじるとか。



クッソだせぇ。



かっこわる。


そんな思いもぐるんぐるんした。


今回はゼロじゃない。マイナスからスタートだ。


オリコ、楽天カード、au、家賃の請求書がセットだ。


そいつらを引き連れて埼玉戻るよ。


本当の、何のかっこつけも装飾もない自分で勝負するよ。


釣りって、面白いんだよ。


さぁ、寝るか。


眠剤いらない生活を取りもどそっか。


書いたら少しスッキリした。


ありがとうnote。


また書きたくなったら書くわ。









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