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シーン9

推奨楽曲
Parliament
《Give Up the Funk (Tear the Roof Off the Sucker)》
収録アルバム
Parliament
《Mothership Connection》
 
 
 
ハルカに先導せんどうされ、no nameたちは高さ2.5mほどのスライドゲートの前にあつまっていた。
 
 
<|春雷しゅんらい> ハルカ[春香]
「誰から先に入る?」
 
 
その声にno nameたちは、たがいを見あ
 
 
no name (2)
「私が先に入ります」
 
 
見合う間もなく、ことも無げにno name (2)がそう言った。
 
 
<春雷しゅんらい> ハルカ[春香]
「おっ……(顔が少しほころぶ) 一番槍いちばんやりはオマエか。よし、行ってこい‼」
 
 
ちょっとふざけながら、そう言うと……声に反応してブワァァァとゲートがゆっくり開いた。
 
ゲートの先は真っ暗闇まっくらやみ
のっぺらとしたクラヤミによって数mどころか、1m先すら全くみとおせない。
 
 
にも関わらず、no name (2)はそのままスタスタと歩いていき
 
 
パァパンパァパンパパッパン
 
 
たくさんの爆竹ばくちくがハジけるような音がして
パッと明かりがつく。
 
 
パァーン‼
と、一斉いっせいにクラッカーが鳴りひびき、キョトンとしているno name (2)に紙テープやら紙ふぶきが舞いおちる。
 
 
【WELCOME!!】
 
 
そう言って人形たちがno name (2)を迎えいれる。
 
コレは祝福しゅくふく洗礼せんれいの儀式だ。
 
 
おずおずと残りのno nameたちも入ってくる。
ゲートの両側では、人形たちが新入り (候補)たちに色とりどりのフラワーシャワーをあびせ、入り口あたりの天井にはバニラ色の魔法陣がネオンライトのようにかがやき、そこから天使の羽のような魔法エフェクトが雪のように降っている。
(羽は地上に落ちると、フッと はかなげに消える)
 
 
 
部屋というか、パーティ会場というか、ココはとても広い。
おそらく横幅よこはば25m、奥行おくゆき15m以上の大きな広間。
 
 
ドアから入って左側は座敷席ざしきせきになっている。
高さ30cmあたりの段差の上には たたみ がしかれ、ちゃぶ台も そなえつけられている。
人形たちはその上で、なかば寝転びながら指笛やホイッスルを吹いたり、カウベルを叩いている。
 
 
真ん中は8つテーブルが置かれていて、さまざまな料理がならぶ。
 
●タマネギがたっぷりのったカツオのたたき
●フワフワしたクリーミーなマッシュポテト
●赤茶色のグレイビーソースがかかったチキンビリヤニ
●さまざまなハーブがのったラムロースト
●タマゴ、アボカド、トマト、マメなどがならぶコブサラダ
●直径40cmはあると思われる大きなTortilla de patatas (スパニッシュオムレツ)
●赤々とした これまた大きなディープディッシュピザ
 
その他にも様々な料理がコレでもか、コレでもかと……
(深夜にコレを書きたくなかった。お、お腹が……ツラい)
 
 
右側は全体的にレンガ色が目立つペルシャ絨毯じゅうたんがしかれ、その上には赤い一人用のレザーソファー、ベッドのような突出とっしゅつ部分があるグレーのソファー、ロココ調のオシャレなアジュア色 (azure)のソファー (カナぺCanape)などがいくつも置かれている。
その前で人形たちが、歓声を上げながら拍手でno nameたちを迎えいれた。
 
 
 
ガヤガヤとさわがしい広間。
no nameたちは片手にシャンパングラス。
(もちろん、そのグラスにはシャンパンがそそがれている)
あいかわらず皆 無表情であったが、no name (3)が まじまじと発泡しているワインを興味深そうにながめていたり、no name (5)が天井にあるバニラ色の魔法陣をじーっと見ていたりと、少しずつまわりの変化に「おもしろさ (あるいは、タネのようなキッカケ)」を感じようとしているみたいだ。
 
 
アカリが人形たちをかきわけて、スゥーッとno nameたちの前にあらわれると、シャンパングラスを片手に
 
 
<かしら> アカリ[明莉]
「はーい、静かに〜。新しい仲間もやってきたから、か
 
 
<春雷しゅんらい> ハルカ[春香]
「アカリアカリ、まだ捕虜ほりょだから」
 
 
すかさず横槍よこやり
食らわす頃合ころあい
 
 
<かしら> アカリ[明莉]
「え、捕虜なの?」
 
 
うかがう 予想外よそうがい
 
 
<春雷しゅんらい> ハルカ[春香]
「そうそう」
 
 
うむ言わせぬ 幼友達おさなともだち
 
 
<かしら> アカリ[明莉]
「あぁ……では、捕虜たちの前途ぜんとを祝して?……ん?」
 
 
しまらぬ 乾杯かんぱい
あー、もう‼ 知ったこっちゃない‼
(早く おわらせたい)
 
 
<かしら> アカリ[明莉]
「めんどくさい‼ いいから早く飲ませろ‼ カンパイッッッ‼」
 
 
【KANPAI !!】
 
 
そう言って、人形たちは笑いながら祝杯しゅくはいをあげる。
 
 
 
no nameたちは?を顔にうかべ、手にもった飲料を飲んでもいいのか判断に迷っていた。
 
 

 
 
no name (3)がグビッとひと口で飲みほすと、つられたのかno name (4)も、そのまま飲みだす。
 
そこにサッと
 
 
<店主てんしゅ> モーガン[Morgan]
「お、気にいった? 将来は酒豪しゅごうかな?」
 
 
と、言いながらno name (3)のカラになったグラスにシャンパンをトクトクとそそぐ……褐色かっしょくの肌をした少年。
(少年に見えるが、アオイみたいにちょっと女の子っぽい……)
 
 
注意
この物語に出てくる人形は、姿形すがたかたちは似ていますが、我々ニンゲンとは全く違う生命体です。
全ての人形は、20歳以上のニンゲンの身体に該当がいとうする身体を「保有ほゆう」しています。
("見た目が子供"の人形がいますが、彼らの"中身"はアルコールを飲むことができる大人です。つまり、子供はこの広間には一人もいません。よって、法的な意味において合法的ごうほうてきに飲酒をすることができます)
 
この物語を読んでいる方は、法で定められた飲酒行為が解禁される年齢になってから、飲酒をお楽しみください。
 
 
モーガンにそそがれたシャンパンをno name (3)は、またイッキに飲みほした。
 
 
<店主てんしゅ> モーガン[Morgan]
「おうおうおうおう……早いね、ずいぶんと。もうちょい、ゆっくり味わったら? コレ、けっこう高いんだよ?」
 
 
no name (3)
「よくわかりませんが、どうしても……すぐに飲みたくなりました」
 
 
no name (3)は無表情のまま、そんなことを言った。
 
その後ろではno name (1)(2)(5)(全員男)がおたがいを見合いながら、(3)と(4)をチョロっと見てから(2)がクイっとひと口 飲みこんだ。
(1)と(5)は(2)をジーッと見つめた後、少し口に酒をふくんで……ひと口ふた口と飲んでいく。
どうやら、安全だと判断したようである。
 
no name (4)のグラスもカラになる。
 
 
<人誑ひとたらし> イッシン[一心]
「ロゼだけど、飲む?」
 
 
no name (4)
「飲みたいです」
 
 
とくとくと……サーモンピンクのシャンパンがそそがれる。
 
no name (4)はゆっくりと、なにかを確かめるように無表情のまま、少しずつ飲んでいく。
イッシンが近くのテーブルから、いくつかおつまみをもってきた。
 
 
ぼんやりとしたライトグリーンの焼き物の皿に以下のおつまみがキレイにならんでいる。
 
●クリームチーズの上に辛子明太子からしめんたいこ切子きりこをのせて、きざみ海苔のりとゴマ油をかけたバゲットのカナッペ
●生ハムのバター巻き
→ひと口サイズのバターの切り身を生ハムで巻いたもの
●フムスと半熟ゆで卵、サーモンのサンドイッチ
→コレもひと口サイズに切られている。
→フムスは中東などで食べられているひよこ豆のペースト
 
 
no name (4)は生ハムのバター巻きをひと口で食べると、少し硬直こうちょくしてから……もう一個食べる。
目をぱちくりさせ、目がおよいでいる。
 
戸惑とまどい?
違う
うまい。
 
 
<人誑ひとたらし> イッシン[一心]
「ロゼもいっしょに飲むと、もっとおいしいよ」
 
 
そう言って、優しげな顔でバターのカタマリをすすめる。
言われるがままバター巻きをもう一個食べ、ロゼを飲む。
 
no name (4)は不思議そうにロゼをながめた。
 
 
no name (4)
味覚みかくに変化があったと思います。コレはどういうことでしょうか?」
 
 
<人誑ひとたらし> イッシン[一心]
「それが、おつまみの魔法だよ」
 
 
no name (4)
「どのようなプログラムなのですか?」
 
 
<人誑ひとたらし> イッシン[一心]
「プログラムで再現するよりも、近所のスーパーかネットスーパーで生ハムと切れてるバターを買ってくるといいよ。ただ、無塩のバターの方がよりおいしくなると思う。ついでにオリーブオイルとピクルスもあると、さらにいいかもしれないね」
 
 
考えているのか、間があく。
数秒後にイッシンを見すえて
 
 
no name (4)
「あとでスーパーの位置情報を教えてください」
 
 
<人誑ひとたらし> イッシン[一心]
「OK。ただ、少し心配だから、いっしょについて行きたいのだけれど……かまわないかな?」
 
 
no name (4)
「わかりました。よろしくお願いします」
 
 
カメラが後ろにいる男の人形たちを映す。
 
するとno name (1)だけがいない。
少しカメラが動くと、右側のソファー席の方にいた。
 
一人用の赤いソファーに座るアオイの姿が見え、アオイと話しているno name (1)は、さらに二人の人形に はさまれるようにして3人がけのソファーに座っていた。
左右の隣にいる人形は……二人とも、おそらく〈モデル・アルファ〉の人形だろう。
no name (1)とデザインが似ている。
 
 
カメラが元の位置に戻……あれ、いない。
 
え、ちょっ……どこ、あ、いた。
 
 
no name (2)と (5)は、いつの間にか左側の座敷席ざしきせきの方に移動していた。
 
 
そこには大きいヒノキのちゃぶ台をかこむようにしてno nameの二人と4人の人形たちがいる。
(図1参照)
 
一人はシーン8.5に出てきたマドレーヌ。
(アフリカ系の人形だ)
 
その右隣にいるスパイキーヘアの黒髪の男性、日ノ本人にちのもとじんのように見える人形はシュウヤ。
 
マドレーヌの左隣にいる、ツインテールを耳より高めの位置でむすんでいる金髪の女性の人形はアヤノ。
 
二人ともシーン5に登場していた。
〈ライトカタナ〉で、化け物をぶった斬っていた人形だ。
 
 
アヤノの左隣には、ゆるーくパーマがかかったふんわりした髪型の東アジア系っぽい男性の人形がいる。
この人形はフィリップ。
(この人は初登場)
 
フィリップの左隣がno name (2)
その左にno name (5)がいる
 
図1

   

ちゃぶ台には以下の料理が大きな皿、大鉢《おおばち》に盛られ置かれている。
 
●牛肉じゃが
●スープカンジャとインディカ米
→スープカンジャとは、セネガルの定番的な家庭料理。トマトベースのスープに羊肉や魚介類ぎょかいるい、タマネギ、ピーマン、大量のオクラをいっしょに煮たスープ。
→セネガルでは、コレをインディカ米にかけて食べる。
●半熟の巾着きんちゃくたまご
●ピータンとザーサイと小ネギがのったひややっこ
●皮がモチモチした特製大焼ぎょうざ
●鳥のからあげ
●冷やしたラタトゥイユ
 
 
人形たちが、料理を食べながらno nameたちと話をしている。
 
 
<おおかみ> シュウヤ[修也]
「どうよ? うまいだろう?」
 
 
そう言ってる横で横幅15cmはあるかもしれない、巨大な焼ぎょうざをno name (2)はひと口でペロリと食べた。
no name (5)は、ひと口食べて中身を確認してからふた口目にうつる。
 
 
<下手へた> フィリップ[Philip]
「しょうゆと酢、あとラー油をあわせたものにつけてから食べると、さらにおいしいよ」
 
 
と、no nameたちの前にタレをそそいだ しょうゆ皿を置くフィリップ。
それを見ていたno name (5)がフィリップにたずねる。
 
 
no name (5)
「このもよおしはどのようなことを企図きとして開かれているのですか?」
 
 
フィリップはなんでもないことのように
 
 
<下手へた> フィリップ[Philip]
「仲間、じゃないや、仲間になるかもしれない人が入ったから、歓迎の意味をこめてだよ。昔から、こういう時はコレをやるって決まってんの」
 
 
会場にはDJブースも設置されており、ハルカがターンテーブルをまわして音楽をかけている。
(もちろんかかっている曲はP-Funkのコレ)
 
 
<不諦ふてい> マドレーヌ[Madeleine]
「ある意味、洗礼式なの。ファンクという人形の魂を新人にさずけるための。で、ファンクにやられちまえよ、お前をとじこめてる屋根をぶっ壊して、お前の中にあるリズムを解きはなて‼ ……ってことを食って飲んで踊ってしゃべって楽しんで、感じろってわけ」
 
 
マドレーヌの隣にいる3人は指パッチンして、ソレソレと言わんばかりに人差し指をマドレーヌにむける。
 
 
<不諦ふてい> マドレーヌ[Madeleine]
\(^~^)/
(両手を上げてドヤ顔しながら、まさにこんなカンジのポーズをとっている)
 
 
no name (2)
「ファンクとはなんですか?」
 
 
フィリップとシュウヤ、アヤノがビックリしたような顔になり、マドレーヌにいたっては顔が硬直こうちょくしたまま……かたまっている。
 
 
 
 
シーン9 短めキャラクター紹介
 
●<春雷しゅんらい> ハルカ[春香]
 
ネバーエンディングギャル。
ファッションと生きることが同意義化どういぎかした女。
オリジナルな人形でありつつ、レプリカのマネキンにもなれる稀有けう才能さいのうの持ち主。
 
 
●<かしら> アカリ[明莉]
 
腐京人形ふきょうにんぎょうコミュニティのトップ。
非常時はすぐれたリーダー。
でも、平時へいじはただの昼行灯ひるあんどん……
 
 
●<おおかみ> シュウヤ[修也]
 
コミュニティで働く農家の人形。
古株ふるかぶの一人。
放浪ほうろう登山とざんを愛する変わり者。
だけど、帰るべき場所をちゃんと知っている人。
 
 
●<トリコ> アヤノ[綾乃]
 
古株の一人。
見た目はキレイな女性。
でも、中身は天真爛漫てんしんらんまんな女の子。
キャラクターコンテンツに熱中する重度じゅうどとりこ
 
 
●<不諦ふてい> マドレーヌ[Madeleine]
 
豪快ごうかいではあるが、根は繊細せんさいな人。
努力をおこたらないこころざしと、決してあきらめない不締ふていの想いを持つ科学者。
山あり谷ありの人生をのりこえてきたサバイバー。
 
 
●no name (1)
 
K-POPのアイドルのような中性的な見た目をした青年。
(アジア系とヨーロッパ系が合わさった「マルティレイシャルMultiracialまたはミックスド・レイスmixed race」な青年)
髪型は銀髪のショートボブ。
アオイを元に作られたドールの人気モデル〈モデル・アルファ〉の最新機体。
 
 
●no name (2)
 
アフリカ系の見た目をした青年。
見た目の年齢はno name (1)と同じで10代後半から20代前半あたり。
髪型は黒髪のlow fade (blowout hair)。
(こめかみ がられていて、髪そのものはカールしている)
 
 
●no name (3)
 
アフリカ系の見た目をした女性。
見た目の年齢は20代前半くらい。
髪型は真っ赤まっかなツインお団子だんご
(髪質かみしつもあって、すごいふわふわしたツインお団子)
 
 
●no name (4)
 
ヒスパニック系の見た目をした女性。
見た目の年齢は20代前半。
髪型は黒いショートボブ。
(ふぁさふぁさしている)
 
 
●no name (5)
 
アジア系の見た目をした男性。
見た目の年齢は20代後半あたり。
髪型は黒いストレートロングヘア。
(女性なみに長いロングヘアで、スラっとしておりキレイ)
 
 
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●<店主てんしゅ> モーガン[Morgan]
 
いっけんすると子供にしか見えない……アオイとならぶ見た目サギの人形。
優しそうな毒舌家どくぜつか
ゾンビたちの街で「ロメロのショッピングモール」という名のバーをいとなむ皮肉屋ひにくや
 
 
●<人誑ひとたらし> イッシン[一心]
 
とても優しい〈マトモわく〉の人形。
優しいがゆえの天然 人たらし (人誑ひとたらし)。
彼の優しさによって"身を滅ぼした"人形は数知れない。
 
 
●<下手へた> フィリップ[Philip]
 
ドジっ子な青年。
とにかくぼんミスが多い。
が、そのぶん料理の腕でみなの胃袋をつかんでいる。
実は戦闘能力がトップクラスの実力者。
(アカリは「ドジじゃなければな……」と常々つねづね思っている)

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