天空の落としもの シーン2
推奨楽曲
DJ Krush
《What's Behind Darkness》
収録アルバム
《Meiso》
「なーんか、たんねぇな」
中年男がつぶやく。
一人用のソファにもたれながら、マッシュポテトがのったローストポークを一口でパクリと食う。
テーブルの上に乗った皿のほとんどが空で、わずかに赤と黄色のパプリカが散乱しているサラダが残っているばかり……
部屋は壁一面が薄緑色で、少ない照明でも明るく感じる。
ソファは茶色で、一人用が二つ、三人まで座れそうなものが二つ……テーブルを囲むように設置されている。
部屋の隅の天井部分には少し大きめのスピーカーが設置され、壁には四本のマイクがそなえつけられている。
"喰い残し"があること以外は普通のパーティルームだ。
「追加で頼むか?」
仲間の男、ガラシャツを着ている男が聞いてくる。
「オレ、ブラートヴルストとジャーマンフライズっての食いたい」
深い紺色の半袖のボタンダウンシャツを着た細マッチョが、手元に浮かんだ空中ディスプレイでメニューを見ながら、ポイっと言った。
「ブラ……ブラジャー?(笑)」
「ちげぇよ(笑)。ソーセージだよ、ドイツの」
ガラシャツ男の軽口を笑う。
中年男が手持ちぶさたに、テーブルの上に置かれた肉片がついた腕の骨を拾い上げる。
もう肉と呼べるものは指しかなく……手の甲や手の平は骨に赤い肉片がまとわりついているだけで、肉と呼べる部分は無い。
男はポイっと、"誰もいない汚れたソファ"の上に"喰べカス"を放り投げる。
コチャッと、他の骨に当たった音がした。
ソファの上は……うん、書くのはよそう。
「ちょっとトイレ行ってくる」
中年男はそう言って席を立った。
カメラが夜の腐京、怪しげなコンクリートの森を一瞬だけ映してから、周囲よりも少し小さいビル、その屋上に立つ複数の人影……見るからに怪しい集団に向かって近づいていく。
人間のような見た目をした怪しげな3人(体?)の集団は、全身が真っ黒(※)だ。
見える範囲では、この怪しげな集団の髪や皮膚、胸といった身体的な特徴がわからない。
黒いヒトガタのナニカ……そう言うしかない連中である。
3体の集団は……
一体が自分の周囲に浮かんでいる 三つの空中ディスプレイを見ながら(?) 待機。
もう一体は足元にある小型アンテナを起動して、台座にある4つのつまみを動かしている。
最後の一体が手元にある空中ディスプレイを使って、ルーン文字とフェニキア文字が混ざったような文字によって構成された〈魔法プログラム〉を起動させ、画面に現れたSTARTと表示された赤いボタンをタッチする。
カットが変わり、カメラはレストランのトイレの中へ。
トイレは床に大理石のタイルがしきつめられ、素材がわからないグレーの壁には横線を入れるように木材がはめこまれている。
天井近くの壁にはシャレたカンジのカットガラスの照明があり、それがぼんやりと室内を照らしている。
中年男は洗面台の上に設置されたガラスの鏡を見ていた。
口の中が気になっているらしく、しきりに口を開け口内を見て、ほほの部分に手をあてて けげんそうな顔をしている。
数秒後、男の動きが止まる。
鏡を凝視したまま硬直して、頭部がかすかに震え始め、やがて動きが大きく速くなる。
次の瞬間
男の頭部の骨格がボコリと膨らんで、反対側もボコリと膨らむ。
それにともない服が破れるほど、体全体の筋肉が膨張し……男が変形していく。
男は……男だったモノは、巨体の化け物に変わった。
身長は180cmから2.5mに伸び
頭部の毛は全て抜け落ちハゲチャビンに
全身の筋肉は大げさなほど盛り上がって、服を内側から破壊
皮膚の色はベージュからぶどうのような紫色になった。
まるで直立する 毛のないヒグマか、ゴリラ……それよりも大きな、毒々しい見た目。
化け物が鏡を、拳で叩き割る。
※黒一色の連中の服装や装備は以下のとおり
◯服(全身)
●黒いジャンプスーツ(つなぎ)のようにみえる戦闘服
→ 無地
◯ 服上
●黒いボディーアーマー
◯両手
●黒いグローブ
→革製みたいに表面がてかっている
◯両足
●黒いジャンプスーツと一体化した靴
→靴もグローブと同じように、表面がてかっている
◯頭部
●フルフェイスヘルメットのように頭部全体を覆い、金属のような光沢を放っている黒い装着物
→ 顔面の部分には、逆三角形状に配置された三つの赤黒い点が光っている。
→髪どころか皮膚そのものが見えないので、機械のようにも見えてくる。
◯持ち物
●パルス・アサルトライフル
→黒いライフル。
→XM7を少し大きくして、ゴツくしたようなカンジのライフルで、ライフルの先端である銃身部分に かなり太くて やや長めのサプレッサーがついている