天空の落としもの シーン7
推奨楽曲
The Prodigy
《Omen (Live at Milton Keynes Bowl)》
収録アルバム
The Prodigy
《World's on Fire (Live Album)》
ポツポツとオレンジ色の街灯が、黒い道路と歩道を ぼんやりとした鈍い色に染める。
すぎゆく街並みは、さながらギラギラした明るいクラヤミ。腐京タワーだけが、目の前にはっきりと見えている。
どうするわけでもなく……もがくだけしかできない。
そのために腐京タワーに向かって、シシャの群れが疾走する。
しかし、ソレは失踪の兆候だ。
彼らをさえぎるホバーカーは、道路上に駐車しているもの以外、なに一つとしてない。
歩道には誰もいない。
キミが悪いほど沈黙している道は、コンクリートビルの樹海と一体化し、表情も変えずにシシャたちをあざける。
後ろから白い狩人たちがせまっていた。
シシャのうち二体が浮走(※)しながら、器用に後ろをふり返り人形たちに向けてライフルを連射。
が、サッとさけられ……逆に人形の一人が右手にシアン色の魔法陣を出現させると、そこから銀色の光の矢が数本はなたれ、シシャたちに襲いかかる。
シシャたちがさけると、さけた先で白い閃光を発し爆発。
シシャたちの視界をさえぎる。
光の矢は後ろから、しつように いくつも飛んできて、ロケット花火のような光の残像を残しながら爆発し消えていく。
必死にかわし、必死に逃げる。
前方に腐京タワーに通じる ねじれた十字路が見えてきた。
腐京タワーに向かう道は3台のホバー装甲車が封鎖しており、その前には赤茶色のパルス・アサルトライフルをかまえて 立ちふさがる人形たちがいた。
(ダークグリーンのボディースーツと赤いボディースーツを着た人形が、映像にうつる範囲に6人いる)
人形たちがあいさつがわりに ライフルを発射。
かん高い銃声に、シシャたちが すばやく反応。北と南、二手にわかれ銃撃をさけた。
北にはシシャが二体
南にはシシャが三体
逃げていく。
白い[エコー]の人形たちも二手にわかれ、追いかけていく。
道を封鎖していた人形たちが、ソレを見送るとすばやく空中ディスプレイを出現させて、目の前に三つのゲートを起動させる。
そのそばにはシシャを追いかけていた(白いボディースーツを着た)人形のチーム[エコー]のメンバー3名が残っており、一人一人べつのゲートの中に入っていく。
それと同時にダークグリーン、赤いボディースーツを着た人形3名が、やはり同じように個別にわかれてゲートの中に入っていく。
北 『間町』方面
街灯が少なく、その代わりに通りにはイチョウの街路樹が並んでいる。
もはや腐京タワー並みに目立つランドマークはなく、ただ終わりの見えないマラソンをやるしかない。
シシャたちは片手に出した紫色の魔法陣から、追いすがる二人の白い人形に向けて、火の玉や紫色の電撃を放つものの、ちっとも当たらない。
十字路を通りすぎる。
(『萎本木』と同じように、待ちかまえていたギャラリーたちが歓声を上げる)
目の前に緩やかなカーブが現れた……
その瞬間、シシャがナニかに捕まった。
道路の両端、さらに その上 高さ20mまで広がる金色の大きなマクが、道路にいきなり現れた。
シシャのスピードがグワん、と……失われていき、ゆっ……くり、止まる。
マクはゴムのように伸縮し、シシャの身体にまとわりつき離れないままのびる。
やがて大きなマクが消えて、シシャを包むマクとの間がスゥっと泡のように消えた。
だが、シシャを包むマクは消えない。
マクに包まれたまま道路に倒れるしかなかった。
金色のマクの中で もがく。
光に包まれたヤミを
闇雲にはがそうと……
倒れると同時に数名の人形が、シシャの元にかけより取り押さえる。
(ダークグリーン、赤、白のボディースーツが見えることから、様々なチームが混在しているもよう)
取り押さえている人形の一人がピンク色の魔法陣を片手に出現させ、シシャにむけて手をかざすとシシャは途端に抵抗をやめて動かなくなる。
ヒトガタがナキガラに……
もう片方のシシャも同様に動かなくなっていた。
ダークグリーンのボディースーツを着た人形の一人(ヘルメットをかぶっているのでわかりにくいが、シーン3に出ていた浅黒い男の人形)が空中ディスプレイを出して、アカリに報告する。
<中佐> べンニャーミン[Benijamin or Bennijamin]
「シシャD、E 確保」
<頭> アカリ[明莉]
「よーし、あと3人」
シシャ 残り3体
南 『青鷺橋』方面
画一的なオレンジ色の街灯、それに照らされた画一的な壁、もといビル。
シシャたちの頭部をおおう、黒い金属のような装着物にオレンジ色の光がチカチカと反射する。
似たような風景の連続は、迷路や森林におおわれた山のように、見る者の方向感覚を狂わせる。
どこに向かっているのか、その問いかけも無いまま……3体のシシャたちが南につき進む。
ビルたちが微笑む
侮蔑を含む
失笑
ここは迷宮
かけ抜けるしかなく
これは悪夢
いまだ目覚めぬ
焦燥ともなう
疾走
シシャたちがあらがう。
シシャの一体が左手にベージュ色の小さな魔法陣を出して、後ろをチラッとむくと、魔法陣から大きな水のカタマリ(直径2m)を人形たちにむけて放つ。
3人の人形たちの前で水のカタマリが破裂する。
強烈な水しぶきで一瞬、視界がさえぎられる。
その一瞬をついて真ん中を浮走していた人形に回転する風(ヘビのようにうねる竜巻のような気流)が直撃。
一気に後ろにふき飛ばされ、ビルの3階くらいの高さまでうち上げられる。
が、前方を走る二人の人形(右側はアオイ)の背中にブロンズ色のゴムのようなキラキラしたヒモが、空気の中から浮かび上がるように唐突に現れた。
ヒモは後方の、今まさに上空に高くふき飛ばされた人形につながっており、人形は空中で体勢をクルッと回転して前をむくと……
ブロンズ色のヒモがスリングショットのような役割をはたし、弾丸のような ものすごいスピードで、前方にむかってすっ飛んでいく。
そのまま地上を走るシシャの一体につっこむ。
シシャは体勢を崩しながらも、かろうじて人形をさけた。
が、追いかけてくる人形……アオイと接触する距離まで近づかれる。
(逆に、飛んできた人形は勢いそのままに浮走し、先頭にいるシシャに近づく)
アオイが、ケモノがエモノに襲いかかるようなドウモウな表情をしながら、スゥっと近づく。
シシャはアオイに対して、ライフルを連射する。が、アオイの前に出現したSeashell色の縦長のバリアにはばまれてしまう。
アオイはニヤッと笑いながら、右手に盾ぐらいの大きさの灰色の魔法陣を出すと、シシャにむかって殴りつけるようにソレをぶつける。
一瞬の攻防、シシャは両手から紅色の魔法陣を出現させて受け止める。
(パルス・アサルトライフルが一瞬で消えた! どこ行った⁉︎)
バァンとマグネシウムが着火したような銀色の火花が飛びちり、シシャが横に流れる。
横にはもう一人の人形(わかりづらいが茶色の肌をした女性の人形)がいた。
人形は転送魔法を使って、即座に90cmくらいの コハク色の光る棒を出す。
シシャにむかって棒を振りかぶろうとかまえる。
殴る
その前に
ぶち当たる
前を走っていたシシャの一体が、殴りかかろうとしていた人形にむかって加速をつけながら接近。
直前。
女性の人形の前面にSeashell色の縦長のバリアが出るも、バリィィィンとガラスのように砕けちり、シシャが思いっきり体当たりをかます。
人形とシシャは よろけて体勢を崩すものの、浮走のまま走り続ける。
人形は持っていた棒を二つにわける。
双棒を持つと、体当たりしてきたシシャと叩き合い殴り合い。
シシャはカンフーの使い手みたいに両手の手のひらを使って、棒による暴力を受け流す。
それと同時に、右手に小さな灰色の魔法陣を出して棒に対してビンタ。
棒が弾かれ、銀色の火花が飛び散る。
そのままシシャは左手にも同じ魔法陣を出して、人形に手刀をくらわせるも、人形が棒を相手の手首に当てて、かろうじてガード。
一進一退の攻防
コレぞ浮走武道
それとも拳法?
(知らぬっ‼︎)
隣ではアオイとシシャが再びまじわり合う。
シシャはすばやく転送魔法で近接武器を出す。
かご状の柄(ナックルガード)が目につく、透明な板じゃなくて……刃渡り70cmぐらいの片手剣。
〈ライトバックソード〉
今回はいいチョイスの武器。
アオイが紅色の魔法陣を左手に出す。
ちょうどラウンドシールドのようなカタチになって、ライトバックソードの青白い斬撃をふせいでいく。
火花と青白い光、紅色の魔法陣がまざり合う。
それはまるで……陰陽を表す丸い太極図のような交差。
気がつくと前方には高速道路が見える。
そこには腐京タワー前と同じように、ホバー装甲車とライトブルーのボディースーツを着た人形たちが待ちかまえていた。
先行するシシャがソレを見て、高速道路に並走する道路(東側)に向かって流れていく。
その後ろにはスリングショットのようなもので飛んできた人形の姿が見える。
目的地の『シダ公園』はすぐそこ
終わりにむかうデッドヒート
オニが手招きする追いかけっこ
シシャは前方右側の車線に侵入。
テニスコートの前を通り過ぎると、ホバー装甲車とライトブルーが目につく二人の人形が左側の車道を封鎖していた……が、攻撃しない。
そのまま見送る。なぜ?
そこをすぎると右隣は野球場。
少し先に野球場に入れる入り口が、扉を開けて待っている。
シシャはなぜか、スゥっとそこに吸いよせられていくように……
入ってしまった。
金色の大きなマクが
ここにもあった
シシャのスピードが喰われ、野球場のグラウンド中程で止まり、その場に倒れる。
まとわりつくマクを振りほどこうと もが
<占者> ブルック[Brooke]
「はい、おつかれさまでした〜♪」
シーン3に出てきた女性のようにも見える日ノ本人に似た黒髪の男性の人形が、おだやかな口調でそう言いながら、ピンク色の魔法陣を左手に出してシシャを停止させる。
<占者> ブルック[Brooke]
「シシャC 確保〜」
<純暴> マリロール[Marie-Laure]
「ヘェイっ‼︎」
報告と同時に、さっきスリングショットで飛んでいた人形……ヘルメットごしなので、よく見えないが小麦色のハダをしたアジア系の女性の人形が、ブルックと勢いよくハイ・ファイブ(ハイタッチ)する。
<純暴> マリロール[Marie-Laure]
「なんかない? ハラヘッタ」
シシャ 残り2体
続き 『シダ公園』方面
シシャと人形の攻防はいまだ続いていた。
アオイとシシャは後方。
女性の人形とカンフーなシシャは前方。
カンフーなシシャが、スピードを上げて女性の人形の前方に出ると、浮走しながら後ろに振りむき両手にレンガ色の魔法陣を出して、マシンガンのように火の玉(直径30cm)を女性の人形にむけて連射。
女性の人形は、棒を持ったまま左手から桜色の魔法陣(直径1.8〜2mの魔法陣)を出して、火の玉を防ぐ。
同時に持っている棒を縦にくっつける。
すると、真ん中からコハク色に光るヒモのようなモノが出てきて、双棒はヌンチャクへと早変わり。
そのままシシャにむかって一気に接近。
ヌンチャク
喰らわす
頭に振り落とし一発目
ホホに振り返し二発目
さらに頭に振り落とす三発目
カンフーなシシャはたまらず、スピードを上げて人形を引きはなし逃走。
そのまま野球場を通りすぎて、十字路にさしかかる。
右と前方の道は人形とホバー装甲車がふさいでおり、左の道のみあいている。
迷うことなく左へ。
左右には公園。
だが……不思議なことにシシャは公園に逃げこむといったことはせずに、まっすぐ道を突っ走る。
腐京タワーが再び姿をあらわし、『清浄寺』も目の
前にオレンジ色の人形たちが、当然あらわれた。
カメラにうつるのは3人。
シシャに接近。
左に『シダ公園』に入る入り口があった。
そこへ逃げる。
クラヤミが目の前に広がる。
スピードがあるのに、止まったような一瞬。
ヤミの中から、アミが降ってきた。
金色のアミ……クモの巣みたいで、ネバネバした物質がシシャにからみつく。
スピードが殺され、気がつけばブランっと宙を舞い……前方にふられて、後ろにふり戻される。
2回ほどふり回されると、もはやミノムシのような格好になってしまった。
すかさずオレンジ色のボディースーツを着た人形が、ピンク色の魔法陣をかざすと……シシャは完全に動きを止めた。
人形は、シーン3に出ていた薄茶色の肌をした東あるいは東南アジア系の見た目の女性の人形だった。
その人形が空中ディスプレイを出して報告。
<月華> ニグラ[尼古拉Niggura]
「シシャB 確保」
<頭> アカリ[明莉]
「あと1人。あとはアオイとハルカにまかせるから、撤収 始めちゃって」
<月華> ニグラ[尼古拉Niggura]
「りょうかーい」
報告が終わると、ニグラが緊張した表情をゆるませて、背伸びしながら両手でガッツポーズ。
<月華> ニグラ[尼古拉Niggura]
「意外と早く終わってよかった〜」
シシャ 残り1体
最後 『シダ公園』のとなり
アオイとシシャがやり合う。
公園はすぐそこ。
シシャはソードを放り捨てるように転送すると、両手に紫色の魔法陣を出す。
魔法陣から紫色の電撃がアオイに
ポイっと、アオイがボールのようなモノを横に飛ばす。
電撃がそこにむかって流れていき、吸収されてしまう。
アオイが右手にもボールをだして、シシャにむける。
半透明のオレンジ色のボールから、紫色の電撃が飛び出た。
ガラ空きのシシャの身体に電撃が飛びこむ。
シシャが ふらつき、スピードが急減速。
体勢が完全に崩れ、前のめりに倒れそうな姿勢で浮走するも、身体からは白いケムリが上がっている。
ヒュッとなにかがシシャにツっこむ。
シシャの身体がブランとふられて、ナニかに抱えこまれるようにして地面に倒される。
あのヌンチャクをふり回していた女性の人形がシシャを倒して……
右手にピンク色の魔法陣をかざして、シシャの動きを完全に止める。
シシャ 全員確保
女性の人形が、どかっと地面にすわる。
ふぅぅ……と、一息つく。
よく見ると、アオイと同じく子供だ。
アオイよりは少し年上のようにも見える。
高校3年生くらい?
<悪> アオイ[蒼]
「おつかれ〜」
<春雷> ハルカ[春香]
「カツカレ〜」
アオイがゆっくり浮走してハイ・ファイブ。
お互い ねぎらい合う。
ハルカがヘルメットを脱いで、転送魔法で送る。
頭をふるふるして、髪を手ぐしで乱暴にとかす。
黒髪。
短く整えられていて、ウルフっぽいボブ。
<悪> アオイ[蒼]
「カツカレー聞くと、『五・七・五カレー』食いたいわ」
アオイもヘルメットを脱いで、放りなげながら転送魔法で送る。
いや……ホント、見た目 子供だな……
赤毛の髪が印象的。
女の人みたいなクラウドマッシュの髪型。
(少なくともメンズ的なボサボサ感が、まるで無い。レディースの服きせたら、完全に男の娘になるレベル)
<春雷> ハルカ[春香]
「終わったし、行く? つーか、まだ開いてる?」
<悪> アオイ[蒼]
「まだ9時だから、ギリまにあうかも」
<春雷> ハルカ[春香]
「え、マっ‼︎」
サッと、ハルカが空中ディスプレイで時間をチェックする。
<春雷> ハルカ[春香]
「9時ちょうどじゃん‼︎ うわ、はやっ‼︎」
そう言った途端にフワン、とディスプレイがもう一つ出てきて
<頭> アカリ[明莉]
「ほぉこぉくぅぅぅ」
アカリが不満そうな顔で出てきた。
<春雷> ハルカ[春香]
「いっちょう上がりぃ」
<悪> アオイ[蒼]
「もう休みたいぃ」
<頭> アカリ[明莉]
「ほうこくが先ぃ」
※ 浮走
高速魔法中の走りと姿勢のこと。
上半身を倒し斜めに傾く姿勢で、地上から30cmほど浮きながら高速で飛ぶ(浮かびながら滑る)。
マイケル・ジャクソン「Smooth Criminal」の身体を傾けるダンス(45度傾くダンス)を参考に。
シーン7 短めキャラクター紹介
●<中佐> べンニャーミン[Benijamin or Bennijamin]
みんなが頼りにする中佐。
コミュニティでは珍しい既婚者。
周りの人形たちは「身持ちが固い……」と、密かに思っている。
●<月華> ニグラ[尼古拉 Niggura]
〈マトモ枠〉の人形。
戦闘、折衝、両方こなす優れた人。
美術愛好家。
ケーキはカフェで食べたい派。
●<占者> ブルック[Brooke]
怪しい占い師。
本当は占いなんて知らない。
知っているのは、運命と安寧の……ほろ苦い味わいだけ。
●<頭> アカリ[明莉]
腐京人形コミュニティのトップ。
非常時は優れたリーダー。
でも、平時はただの昼行灯……
●<悪> アオイ[蒼]
見た目は男の娘。
中身はヤクザもの……
子供と侮る大人から金を巻き上げる悪党。
でも、意外と後輩の面倒を見る優しい人。
new
●<純暴> マリロール[Marie-Laure]
元気いっぱいな女の人。
でも、倫理観が崩壊しているヤバい人。
必要とあらばゾンビだろうと、他の生命体であろうと、容赦なくぶっ殺す。
●<春雷> ハルカ[春香]
ネバーエンディングギャル。
ファッションと生きることが同意義化した女。
オリジナルな人形でありつつ、レプリカのマネキンにもなれる稀有な才能の持ち主。