出所祝いシャンパン
社員旅行から帰ってくると、ある一つのニュースがテレビに流れていた。
歌舞伎町二丁目のホストクラブ社長、風俗あっせん法違反の疑いで逮捕。
容疑は台東区浅草のソープランドにあっせんした疑い。だった。
テレビで流れている映像を見る限り、どう見てもエラーの社長。
ホスラブをみると歌舞伎町ホストクラブ『エラー』社長逮捕のスレッドが乱立。
やっぱり、ウチの店だ。
ジゴ朗は思った。
ラッキー☆これで今日は休みだ。
と思ったのもつかの間。
内勤から電話がかかってきて, 本日緊急ミーティングがあるので、通常より二時間早めの出勤で。
他の予想通り30分ほど遅めに出勤し、
とりあえず
「おいっ、こんな一大事に遅れやがって」 ととりあえず怒られておくと
すでに討論はとりあえず本日は休みにするか営業するかの話になっていた。
若干営業するという方向に傾いていたが、休みだと確信していてプライベートの女の子と約束しているジゴ朗はたまったもんじゃない。
すぐに挙手し、
「社長が今大変で、辛い思いしている最中なのにその日も営業し、のほほんと酒を飲み何事もなかったかのように振舞っているのはお客様の心境としてはいかがなものですしょうか。」
「しかも全国ネットで放送が流れていることも考え、客からの印象も悪いことも考え最低でも三日は空けたほうがいいんじゃないでしょうか。」
と言うと
周りの人間も一理あると少し考え、
その流れを感じ取った代表から一言
「とりあえず、事件は今日の今日起こったことだから今日のところは解散。明日は通常より一時間前出勤で。」
次の日出勤すると、社長逮捕の件はタブーとなっていた。
常連のお客さんは各担当からそのことを伝えられ、しっかりと守っていたが、 初回のお客さんには関係のないこと。
席に着くと心ない言葉が突きつけられる。
「ニュース見て来たんだけどフツーに営業してるんだね。」 ジゴ朗はこの店になんの愛着もなかったから、内心もっと言え という感じだったが、便乗してしまうと古株がどう言うか分からなかった。
だから押さえて、笑顔で交わす。
それがどんだけストレス溜まることか。
そんなストレスを一気に発散できる最高の場面が出来上がった。
社長が出所して初出勤した時だ。
その日いつも通りシャンパンコールをしていると、当たり前のように社長の出所祝い(公然と発表していないが)名目のシャンパンが入った。
もちろんシャンパンコールはジゴ朗だ。
シャンパンコールをする前に色々と禁止ワードが指定されたが、この絶好の期に及んでそんなこと関係ない。
ジゴ朗には考えがあった。
タイミングは社長をマイクでその席に呼ぶタイミングだと。
みんなが元気よく
『社長!!社長!!』
と呼ぶ中 マイクのジゴ朗は
『犯罪者!!犯罪者!!』
とシャウトした。
周りの『社長!!社長!!』
と意気揚々と騒いでいた連中が一気に静まり返る。
客席からは失笑が聞こえる。
ジゴ朗にマイクを持たせた瞬間から数名は気付いていただろう。
そしてとうとう本日の主役。
アゴ社長が登場した。
登場するや否や、ジゴ朗にボディーブロー。
マイクを通し、全体に聞こえただろう
『うっ!』
という声。
すかさずジゴ朗の反撃
『また一つ犯罪を増やしましたね。』 というインテリジェンスな口撃
さすがの社長もこれには参った様子で笑っている。
その表情をみた従業員たちも表情が豊かになり、結果いいおかえりシャンパン
になってしまうこととなる。
この結果はジゴ朗にとっては不服なものだった。